・成績も出そろい、気持ちの上でもいよいよ秋学期が終わった。
最初のサマースクールを除外すると、9月の頭から12月の頭まで約3か月強。光陰矢のごとし、あっという間に過ぎ去ったような印象もあるが、今になって振り返ると実に色々あった充実した3か月だった。
・自分はこの「新しい環境での最初の数カ月」が大好き。
社会人1年目・新人研修で財務分析に没頭したのち、財務分析とは殆ど関係ないデリバティブ管理の世界に身を置くこととなった最初の数カ月。
2年目・慣れない初めての一人暮らしに戸惑いつつ、仕事の内容もカウンターパーティも前年とはガラっと変わった広島の支店1年目最初の数カ月。
3年目・結婚をして家計管理やら時間管理やらにアップアップしつつ、企画・調査から融資へと仕事内容がガラっと変わり新人同然だった3年目の数カ月。
4年目・所属先とはまったく社風の違う役所に出向して同世代の同僚と回帰分析やら経済分析やらに打ち込んだ最初の数カ月。
一年飛んで6年目・出向終了後、裏でこっそりカンペを読みつつも偉そうな顔をして新人に財務分析を教えた6年目最初の数カ月。
そしてMBA最初のこの数カ月。
慣れ親しんだ場所を離れたことによるストレスも多少はあったが、新しい環境でこれまで触れたことのない人々・仕事・スキル・考え方等をスポンジのように吸収することができるこの時期は自分にとって非常に有難い経験だと思っている。経験曲線の最初の「ぐいっ」というところ(二階微分が正のところ)だけを要領よく飛び移れている印象。
ひとつの会社にとどまりながらこのように疑似転職のようにいくつもの新しい環境に飛び込むことができた点において、自分の社会人最初の10年は「当たり」なんじゃないかと思っている(まだ6年目だけど)。
もちろん、金融業界では人材のスペシャリスト化が顕著に進展しており、自分のようなキャリアパスは業界で流行らないものであることやひとつの部署に5年くらいとどまって完全にその道のプロになっている同期がいることは承知しているが、飽きっぽい自分は、このような疑似Job hoppingがなければ(悪い意味での)リアルジョブホッパーになっていた気がしてならない。
・学業面で良かったのは、授業が必修であったこと、およびグループワーク。
自分は元来金融工学を主に勉強したいと思っていたことから、出願時にはあまり必修授業がガチガチでない学校を特に希望していた。なので、進学先によっては、この一学期は「ファイナンス・ファイナンス・ファイナンス・経済・経済」といったカリキュラムを組みマーケティング等は完全無視を決め込んでいたと思う。
しかし、いざこのように授業を受けてみると、必修で色々な科目を受講することの有難さに気付かずにはいられない。おかげで図らずも知的視野が広がり、かつ穴だらけであった基礎がかなりしっかりした。
自分にとってなじみがなかったマーケティングは、まだ理解が足りないところが多いが、明らかに所属先に戻ってからとても「使える」。既に取っ掛かりはあった統計・会計・経済・ファイナンスも、新しい気づきやよりスマートな考え方など日々学ぶべき点が多く、これまでいい加減にしてきたところをあまねく補完できたような感覚を持っている。
あとはこれで、当初掲げていた金融工学をいつ勉強するか、そこもちょっと考えないとな。
グループワークも思いがけない収穫。入学前は「そんな子供だまし、何の意味があるんだ」と完全に小馬鹿にしていたが、今となってはこのグループワークこそがこの数カ月自分を一番成長させてくれたように思っている。特に「今となっては良かった」ことは班内で頻繁にケンカしたこと。やっている最中は結構しんどくてブログに悪口を書き連ねたりして適宜ストレス発散をしていたが、すべてが終わった今となっては本当にいい経験だった。「喧嘩するほど仲が良い」という諺、今なら心から賛同・理解できる。放課後の飲み会でイエーイとかやっているだけでは到達しえない深い心の交流のようなものを、J君以外の3人とも、そしてJ君ともできたような気がする。
日本人の自分からすると面白かったのは、彼らは「空気」とか「グループ内政治」でなく「内容」で自分の立場を決める傾向が強かったこと。自分はお調子者なので、J君がJ君であるというだけで彼の意見に反発を覚えたり、J君対E君といった状況では「どっちもどっちだが、E君の方が好きなのでE君をサポート」といった判断をやっていた。しかし、他のM君E君Eさんは、どれだけJ君が基地外だとしても、いいことを言ったらきっちり「この点についてはJが正しい」とあっさり認めることができていた。最初は「こいつら風見鶏なのか」と思っていたが、そうではなく、単純に正しいことを言うやつを認めてそうじゃないことを言うやつを認めないという原理原則に従っているということなんだろうと今では思っている。自分はお調子者でかつやや頑固なところがあると自認しているが、この「I'm always on the right side」というスタンスはつとめて見習っていきたい。
・学業以外の面に関しては、LAという留学ビギナー向けの土地柄のおかげでかなり楽をさせてもらった感があるが、いずれにせよ多くの友人を作ることができ、多くのこれまで見聞きしたことない話や価値観に触れる機会を得ることができた点で感謝している。
他方、学業面と比べるとより鮮明に「もっとやれたかな」という思いがある。これまでの「新環境」と比べると「前のめり度」「失敗・恥をかいた回数」がやや不足しており、つるっと小さくまとめてしまった印象が否めない。年を取ったということなのかとも思うが、自分より2つも3つも年上の同級生がその辺しっかりできていることを見るとそれは言い訳でしかないのだろう。オリエンテーションの電柱のぼりで体得した「out of the comfort zoneに行く勇気」をより明確に意識して次の学期は、いやむしろ明日からはやっていきたい。