Friday, June 8, 2012

ワラントの転換価格

先日の野村HDの株主総会で出ていた株主提案がぶっ飛んでいたのは各所で話題になっていたが、自分はそのうちのひとつの提案について、思わずうーんと唸らされてしまった:

(第8号議案)ストックオプション廃止について

快楽とはなんであろうか?
辛うじて100円以上の交換価値を持つ債権を1円で受け取ることではないか。
貴社は役員報酬の一部として新株を1円で買い取る権利を付与する制度を実施し続けているが、
この制度は貴社の株価を1円に近づける効果しかないので即刻廃止すべきである。役員は自分が
勝った新株が売却できるまで株価上昇を望まない。「株主とリスクを共有する」のであれば「一株を
5000円で買い取る義務を付与する」べきであろう。


正直なところ、自分は、「これ、この人の日本語がおかしいから却下されちゃってるけど、実際問題真剣に論じる価値のあるわりと重要な問題じゃないかしら?」と感じている。


■ 論点1 ストックオプションと生株支給のペイオフ
・ペイオフ上の違いは、ストックオプションなら転換価格以下のときのペイオフはゼロだけど生株のときはマイナスになりうるという点。
→しかし、この点においては、経営者は株主とよりリンクしたモチベーションを持つことが望ましいので、生株の「マイナスもありうる」ペイオフの方が望ましいようにも自分には思われる。

■ 論点2 ストックオプションと生株の一株当たり単価
・仮に現在の株価が100円であったとする。で、社長に100万円相当の株式を支給したいとする。このとき社長が受け取るのは100万円÷100円=1万株。
・ここで、生株の代わりにストックオプションを付与するとする。ストックオプションの価格は、転換価格の設定次第で大きく変化する。例えば、リスクフリーレート2%(単利、連続複利化前)、ボラ30%、満期10年というスペックを想定すると、自分の手持ちの「ブラックショールズ試算君.xlsx」によれば、
(1) 転換価格が1円のとき(ITM)、オプション価格が99.09円なので、100万円で10,091個のオプションが付与される
(2) 転換価格が100円のとき(ATM)、オプションは39.66円で、100万円で25,215個のオプションが付与される
(3) 転換価格が500円のとき(OTM)、オプションは4.41円で、100万円で227,004個のオプションが付与される

つまり、現状のような1円ストックオプションであれば、生株1万株に対してストックオプションも10,091個と、経営者に支給される株数は殆ど変わらない。他方、アウトオブザマネーになるようなストックオプションを支給すれば、生株1万株に対してストックオプションは227,004個も支給されることになる。

→経営者により株主とリンクした動機を持たせたいのであれば、1万株あげるよりも、アウトオブザマネーのオプションをあげることで22万株相当のオプションを支給した方が、株価を上げるモチベーションは高まるように思われる(1万株より22万株の方が多いという意味において)。他方、インザマネーであれば生株支給数とオプション支給個数は殆ど変わらないので、わざわざ生株ではなくオプションにする意味があまりないのではないかと

→もちろん、インザマネーにすることで、起こりうる希薄化の度合いは低下するっちゃするけど。

■ 論点3 OTMのオプションとITMのオプションのペイオフ

・現状の株価が100円で転換価格が1円というITMのとき、経営者の現状周辺のペイオフは45度線となる。株価が90になっても110に増えても、ペイオフはその分だけ増減する。
・現状の株価が100円で転換価格が500円というOTMのとき、経営者のペイオフは直線(いずれにせよゼロ)で、無茶苦茶頑張って株価を500円以上にしたときだけプラスとなる。逆に、株価が下がっても経営者のペイオフは減少しいない。

→OTMのストックオプションを支給すると、経営者は「ミスっても失うものがないが、成功したら儲かる」という非対称的なインセンティブを持つことになり、過度のリスクテイキングを誘発する懸念がある、とも言える。

→仮にOTMストックオプションが持つ過度のリスクテイキングは嫌だということであれば、代替案はITMオプションに限らず生株でも良い気がするのだが。。というかITMオプションって殆ど生株と変わらないような。


■ 論点4 プロスペクト理論

・プロスペクト理論によれば、人は勝ち分については保守的に考えがちで、損失については積極的に考える傾向がある

→得しかないストックオプションを付与しても(特にITMのオプションを付与しても)経営者は利益確定行動というか、利益追求の手綱を緩めてしまいはしないだろうか
→生株であれば損の状態が生じえて、その際は経営者はきっちりリスクテイクしてくれるのではないか

※ただし、個人の行動に関するこのプロスペクト理論が、Fiduciary Dutyのもと合理的に活動すると思われる経営者の行動にも影響するかどうかは不明。まあ影響しそうな気はするけど


■ 論点5 設計・管理上の論点

→オプションは計算が難しいし、恣意性が排除できない(シグマの置き方とか)一方で、生株は時価を見るだけなので客観性についても計算難易度についても完璧


◎結論

・現状のようなITMのストックオプションを付与することは、自分は最良のプラントは思えない。生株と殆どペイオフが変わらないくせにダウンサイドがなかったり計算がややこしかったりするばかりなので。

・なので、生株を支給するかOTMのオプションを支給するかの2択で、そこからは株主の好みで決めればいいのではないかと思う。OTMオプションにすれば生株よりたくさんの株を(潜在的に)経営者に付与することになり、かつペイオフダイヤグラム上経営者はガンガンリスクテイクしてくれる。生株であればその辺経営者はストレートにやってくれるように思われる。どっちがいいかは株主の好み次第

・上記提案については、「5,000円の生株」というのを「500円のストックオプション」にすれば、経営者も真剣に回答を検討せざるを得ず、わりと有益な議論が得られたかもしれないと思う



■ 番外 ストックオプションとワラントの比較
・ストックオプション:発行体が当該企業とは限らない。投資家同士が相対で取引できる、いわゆる普通のオプション。多くの場合市場性確保のためにスペックが標準化されている

・ワラント:オプションという点においてはストックオプションと同じ。企業が発行して投資家あるいは経営者などに売ったり授与したりするもの。市場性が求められていないのでスペックは任意に設定される

・あるいは、オプション単品の場合はストックオプション、社債にビルトインされたりする場合はワラントと言われたりするようにも思われる


■ 番外2 経営者ではなく従業員に生株あるいはストックオプションを付与することについて

→従業員一人一人の貢献度と企業価値の連動度が比較的高いスタートアップなら合理性はあるが、大企業においては従業員一人が株価に与えられるインパクトなど高が知れており、従業員にとって不必要なリスクを取らされているようにしか思えない。従業員が欲しければもらった給料の中から勝手に自社株買いをすればいいだけで、株式で支給することは企業にとってはメリットがあっても従業員にとってはあまりメリットがないと思う

■Further Reading
・起業のファイナンス(リンク)

Academic Awards Dinner

※以下単なる「俺が、俺が」という自慢なので、場合によっては読み飛ばすことをお勧めします

■ Academic Awards Dinner(学長主催の晩餐会)に参加。表彰されて帰ってきた。

・表彰されること自体もちろん嬉しいんだけど、個人的には、こういうハレの場(その辺の飲み会ではなく)に妻子を連れて行くことができたのが結構嬉しい。この辺の、仕事と家庭の距離感の近さというか二重人格にならずに済むところは、アメリカで自分が好きなところの一つ。

・ところで自分がもらったこの賞(受賞者は数名)、ファイナンスに関するGPAと「学習意欲」で決めたとのこと(自分は多くの授業で質問攻めしまくっていたので思い当たる節はある-ファイナンスクラスだけ饒舌、それ以外はほぼマグロの2年間でしたorz)。自分のファイナンスのGPAは別にオールAではなかったので、それで多少納得。
普段さんざん米国式「総合的評価」に批判的で、日本のテスト一本勝負を応援する自分であるが、ここにきて最後に、総合評価のおかげで美味しい思いをしてしまった。。皆さん総合評価も悪いものではありませんぞ...(ぇ

※追記
「オールAではない」とか書くとなんだかとても良いみたいで自慢みたいなのだが、全然A以外もあるし、B+もあるので、おそらく表彰された人の中ではGPAは最低に近いのではないかと思われる。なので、「狙い通り獲った」というよりは、「何だか知らんが棚ボタ」というイメージが正確なところ...威張れるものでは全くありませんorz


・今日のこれでMBAに関して本格的に「終わった」という満腹感を得てしまい、卒業式のテンションが上がっていない。。妻も卒業式はそこそこに娘のバレエ教室の発表会に行くそうで...


・正直なところ、この手の賞は是非欲しいと結構真剣に思っていたので念願かなった格好。
(途中色々あって、諦めてはいたが...)
で、万一賞をもらえたら書こうと思っていたことを図々しくもここに書く。

「MBAは勉強するところじゃない」と自校他校含め多くのMBA日本人学生が言っているが、賞を取るかものすごく良いところに就職が決まるか、何かそういったものがないと、単なる痛い発言になってしまうと思う。自分の中途半端さを正当化するために環境や他人を貶める発想は、少なくともMBA的、アメリカ的ではないと思う。かねがね自分はMBAに勉強するため来ていたと思っていたので、そういう「勉強じゃないよね」と言いながら悪い成績取ったりあまり良い就職先見つけずにドヤ顔している奴らに強烈な違和感というか「お前にそんなこと言う資格あるのか」と思っていたので、僭越ながら言わせてもらった。勉強するところじゃないとして、じゃあ何するんですか、まさか外国人と酒飲んでる写真をFBにアップすることがあなたのやりたかったことですか?と言うのが自分の問題意識。別に賞を取るべきだとかアメリカで就職先探すべきだということではなくて、勉強も就職活動もそこそこ頑張っている多くの同級生の努力を、帰る場所があり金を自分で出しているわけでもない人間が偉そうに「大したことない」というのは非常に失礼ではないか、と思っている。

俺も人間小さいなぁ。。。場合によっては削除するかもしれないけど、これは2年間ずっと思っていたので一旦書かせてもらった。

Thursday, June 7, 2012

副業と希望

■副業の話

帰国とか新しい仕事や住居が決まって間もないこのタイミングで、ちょっとした弾みで、とある課外活動をすることに決めた。というか、こっちで地味に続けていた自由研究のようなものを、とあるところで発表することにした。

で、一応会社員なので関係各所に問い合わせをしてみたところ、どうやらこれは副業にあたるみたい。ということで、一円も貰わないけれど、副業デビューすることになりそう。。但し掲載されればだけど。

といいつつ、実はこの自由研究、取材は終わっているが執筆がまだ終わっていない(爆
関係各所からOK貰っちゃったので、おかげで尻に火がついて卒業を控えた暇なはずの今必死に作文している。。orz


■今日運転中にふと思いついた他愛無い話

アメリカで気に入った曲。色々あるが、特に気に入ったのはアッシャーアッシャーアッシャーアッシャー...ではなくて、野球の曲(Take me to the ball game)と国家。とりわけ、両者に共通するスケールの部分。
野球であれば"If they don't win it's a shame"のところのドーレミファソラーのところ、国家であれば”O'er the land of the free ”のところのソードーレーミファソーというところ。但し音はハ長調のときのもの)。

100%自分の勝手な思い込みで、作曲者の意図とかは全然知らないのだけど)この二つの米国を代表する曲のクライマックス(あるいはその直前)に出てくるこのストレートなスケールから、自分は、アメリカが持つピュアな希望のようなものを感じ取る。勿論みんな色々あるんだと思うんだけど、在米期間が短くものごとの良い面だけ見ることができた自分にとって、このスケールはアメリカの希望のひとつの象徴となっている。素直に真っ直ぐ斜め上目指して頑張っていいんだよ、真っ直ぐ行こうぜ...自分がここで出会った多くのアメリカ人友人たちも、色々問題あったり悩み抱えてたりしてそうではあるけれど、コアのところにはやっぱりこの素朴な希望感のようなものがあると自分は感じている。

日本はどうか。人口が減少基調にあるからかもしれない。デフレだからかもしれない。日本人がもともと成熟した国民性だからなのかもしれない。あるいは単に自分がアメリカを理解できていないだけかもしれない。でも、少なくとも、自分の目から見たアメリカには、自分の目から見た日本にはやや摩耗してしまっているように思われる「素朴な希望」のようなものがまだまだ健在であるように思うのだ。素直な上昇スケールがしっくりきてしまう風土。

別にアメリカの全てを真似すべきなんて思わないけれど、この素直さ、希望、素朴さと言った点について日本人(あるいは俺)はもっともっと学んでもいいかもしれない。自分がこのスケールを聞くたびに感じる希望感のようなものを、日本人の皆、最低限自分の娘には感じさせてあげることができる程度の努力は惜しまずにやっていきたいと車中でふと思った。

Wednesday, June 6, 2012

旅の終わり

MBAもいよいよ終わる。授業らしい授業はもうなく、あとは各種会合に顔を出したりプロジェクトを仕上げたりするだけで、知的作業というよりロジスティックスの領域だけが残っている。クラスメイト達が続々とFBに「終わったー!」というポストをアップし始めて、今日も自分自身クラスの最後の飲み会に顔を出してきた。


そんなわけで、多少、感傷的な気分になっている。ここで出会った友人たちにももうなかなか会うことがあるまい。ここで得たもの-知識のみならず、必死にブログに書き残した些細な感情も-も早晩忘れてしまうのだろう。そして、2年間仕事をさぼったツケや、親や友人と離れた距離は消えないかもしれない。こういったコストに見合うだけの収穫を、果たして自分は本当に獲得することができたのだろうか。。


いずれにせよ、この2年間ももうすぐ終わる。次はすぐそこまで来ている。

Tuesday, June 5, 2012

【随時更新】 帰国準備

帰国あれこれ。自分のアクションが合っている保証はないが...

◎ 住居:
・1か月前以上に退去届を出さないと違約金を取られたりするので、卒業一か月以上前に退去届を提出。
・日本の住居は、幸いなことに社宅を手配してもらったのでそこに住むだけ。


◎ 電話(iPhone4, AT&T)
・解約について電話で問い合わせたところ、どうも店舗でやるのが一番手っ取り早そうなので帰国前日に店舗に行くことを検討中。
・電話+別途カード精算も可能みたいではあるが、なんかモゴモゴされたのでパスした
・SIMは、解約以後であれば好きにしてよいとのことなので、SIMを抜いて日本に端末だけ持ち帰っても問題はない模様
・2年契約なので、解約すると$110/端末の違約金を取られるというのが結構ショック...


◎ 家財道具
・アパート内掲示板、びびなびで適宜放出。


◎ 車
・ディーラー数社に相見積もりを取り、ちょっとだけ値段を上げてもらった上で売却予定。
・売る際に気付いたが、Title・Registrationのシールは持っていた(貼っていた)がRegistrationの紙を紛失していたことに気付く。やむなくDMVで再発行
・ディーラーと調整の上、当日早朝にディーラーに向かい、車を渡し、ディーラーに空港まで送ってもらうことにした。受け取ったチェックは道中でATMにしっかり入れないと


◎ インターネット(Time Warner Cable)
・電話で解約手続き完了。
・物理的な作業としては、器具一式を解除した上で最寄りのショップに持参するよう指示された


◎ 銀行
・住所を日本の実家にしつつ、アメリカから日本に旅行中といった感じにされた。これ正直あってるのかよくわからん
・然るべき対応を続けている限り、口座を維持することができるとのこと。
・念のため、今のうち、米国口座から日本の口座への海外送金を試しに一度やっておいた。これでこのラインが登録されたので、いつでも米国に滞留させてある資金を日本に送金することができるはず。
・こちらに残る友人にDeposit Cardなるものを渡し、チェックを自分の口座に入金してもらうよう手配。


◎ 飛行機
・近所の旅行代理店で手配。