・土曜日。妻はゴルフで自分はキャンパスビジット対応。昼からちょっと中国語の宿題をやってチームメイトとやりとりなんかをちょっとやったが、基本はずっとマスターズ観戦。タイガーsuck. 夜はずっと気になっていたけど行けていなかった「わかさんち」にて夕食。おまかせで一人45ドルで、もう本当に日本の結構おいしいレベルの和食がおなか一杯食べられて大満足。東京でもこの手の店を発掘したいのだが、どうも東京ではラーメン屋とか定食屋とか、お手軽系ばかりレパートリーが増えてしまっていて駄目だ。
ところで、授業で習って印象に残った話を昨日に続いてもう一つ。
Organizational Behaviorにて「Confirmation Bias」という概念を習った。自分がニュートラルではなく特定の意見を持っていると、その意見の裏付けとなるような都合の良い情報がひとたび見つかると、人はその情報に安心してしまい、それ以上の分析をやめてしまう傾向があるとのこと。
なるほど、これは言われてみると胸に刺さるところがある。
留学前、役所で経済分析をしていたときに「デフレはそんなに短期間には解決しない」ということを言いたかったことがある。そのとき、とにかく自分の頭の中には「デフレ長期化」という結論が頭にあったので、情報収集作業では専ら「デフレが続くということを示す情報を探す作業」をしてしまった。エコノミスト業界ではだいたいどんなトピックについても賛否どちら側の意見も簡単に見つけることができる。そのときも実際、デフレ長期化を支持するような意見やらレポートやら、あっという間にいくつか収集することができたが、自分はそこで情報収集をストップしてまっていた。いま思うと、「仮にデフレが長期化しないなら」という方向での批判的考察が全然足りていなかったように反省される。
また、これは自分だけではない。どこかでマッキンゼー流だかBCG流だか仕事術という話を見聞きしたことがあるが、彼らの「効率的仕事術」の肝は
- まず結論がどうであるか仮説を立てて、
- データでそれが正しいか否か検証する
というものであった。仮説が何もない状態で闇雲に情報収集をしても効率が悪いから駄目だ、まず仮説を立ててそれをベースに情報収集をすべきだ、そういう感じであった。
しかし、そこにはConfirmation Biasが入ってしまうリスクが存在するように思われる。上記のごとく仮説ベースの思考回路で仕事を進めていると、ひとたび自分の意見を裏付けるような情報が見つかってしまうと、人はかなりの確率でそこで情報収集をやめてしまうのではないだろうか。わざわざそこから、反論を探すべく更なる情報収集を始める人はそうはいないのではないだろうか。
つまり、自分がふと思った懸念は、
- Confirmation Biasは自分のみならず日本の企業社会にわりと広く存在しているのではないか
- であれば、多くの企業において、本当に適切な形での意思決定がなされていない(=偉い人の思いつきが、Confirmation Biasによって補強されただけのプランが是認されているだけ)という事例が蔓延してしまっているのではないか
- これからの日本のように「やめること」「減らすこと」というネガティブなアクションが重要になってくる経済 - 企業においては、偉い人の思いつき(得てして「増やす」「始める」系が多い)と本当に望ましいことが乖離することが多くなると思うが、Confirmation Biasを放置したままにしていると、偉い人の思いつきを組織として却下することができなくなってしまうのではないか
というもの。
授業で習った解決策は、
- 情報収集をどこまでするかルールを設けておく(=都合の良い情報が見つかったところでおしまいにしない)
- コンサルなど第三者の意見を仰ぐ
というものであった(ただ、第三者のコンサルにも、クライアントに嫌われないようにするインセンティブとか、Confirmation Biasが存在するのだが)。
よく、過去の勤務先で、分析結果を説明した際に上司から
「なるほどわかった。ところで、他の人はどういっている?たとえば○○証券の××さんとか」
といった感じで他の人の意見を確認したいというリクエストを受けることが多かった。あのときは
「なんだよ、俺の言うことに納得してくれないのかよ、、、」とか多少渋い思いを抱いたものであった。しかし、今回の授業を踏まえると、上司は彼・そして自分の中に不可避的に存在するConfirmation Biasを可能な限り除去したという思いで(意識的にか無意識にか)あのようなリクエストを自分に与えていたのかもしれないと思いいま一人納得モード。
なので、帰国後は自分としても「一応反対意見も探す姿勢」を持っている必要があるし、仮に上司が自分の意見を無批判に受け入れたらそれはそれで危険なことだと思うことにしたいと思う。
ところで、個人的にもっと反省しなければならないConfirmation Biasは、人の品定めをしてしまうことかもしれない。よくやってしまうのが、
- 容姿や所作から「こいつなんか微妙」という固定観念のような第一印象を人に対して抱いてしまい
- その人が出会って間もないときに何かミスやしょぼいことをやったときに「ああ、やっぱりこいつは駄目な人なんだな、距離置いて接しよう」とかなり早い段階でその人との接し方を固めてしまう
- でも長期的に見ると、その人は実は思っていたよりもしょぼくなかったりすることがある(思っていたよりもっとしょぼいこともあるが)。そういうとき、第一印象と序盤のポカミスによって駄目な人と決めつけて接してしまっていたゆえに、その後印象が改善してもその人との関係を温めることができずに勿体ない思いをする
というもの。自分に限った話でもないかもしれないが、要は第一印象で相手にに対して必要以上にレッテルを貼ってしまう自分の癖はConfirmation Biasがかかったものであるように思われる。特に身に着けているものが微妙な人とかに対する決めつけ(「こいつダサい→こいつ内面も微妙」とか)。けっこうな人数の人を、このバイアスのおかげで友人にし損ねている気がしないでもないので、見た目で人のクオリティを決めつけないとか、もう少し配慮しないといけないのだろうなと(わかっちゃいたが)再認識。