Friday, April 8, 2011

Economics in the shrinking world

今週の授業で印象に残ったことをメモ。

Strategyの授業にて。
授業が始まって間もない現在、授業は業界分析のフレームワークを取り扱っている。前回はポーターの5 Forcesをケースにあてはめてみましょうといった感じの授業。今回は需要曲線・供給曲線のフレームワークで業界を分析してみましょうということでミクロ経済学の基礎を戦略論に応用してみるといった感じの授業であった。

その授業におけるポイントは、

・供給曲線は、供給量が少ないうち(価格が低いうち)は弾力的。すなわち、需要の増加はその殆どが供給量の増加となり、価格はあまり上昇しない。家電なんて好例かもしれない。景気改善か何かでちょっと需要が高まったとしても、販売価格が上昇することはほとんど考えられない。

・供給量が市場のキャパシティに近づくと、供給曲線は非弾力的になる。たとえば船舶業界であれば、マーケット全体に100台しか船がなければ、需要がちょっと増加したからといって急に船をもう一台作るわけにはいかないので(数年かかる)、既存の100台の奪い合い状態になる。すなわち、需要の増加は、供給量が増えないので、その殆どが価格の上昇となる。石油なんかは好例で、現在我々は腹がたつくらいの価格上昇を満喫する羽目に陥っている。

・という話をもとに教授が説明した結論は
「君たちがビジネスの世界に戻った際には、何とかして自分の供給曲線を「立てる」すなわち非弾力的にするのが「良い戦略」であり、具体的には云々...」というものであった。

と言う話を聞いて、一瞬はたしかに「ふーん、なるほど」と思った。需要増加の果実の殆どをモノにするには供給曲線を立てないとなぁなんて。しかし、ふと日本に思いを馳せると、何が最適なのかわからなくなってしまった。

教授の「供給曲線を立てるべくキャパシティに制限がかかるような策を実行する」という話は、需要が増加する前提では確かにワークする。しかし、日本のように需要が減少傾向にある経済において、この「供給曲線が立つようにする」というものは妥当な戦略なのだろうか?

たとえば日本のテレビ局。24時間という供給量(広告枠提供料)の限界があり、かつ電波法だか何法だかわからないけど高い参入障壁があるので、「立っている」供給曲線をもつ業界の代表例と言える。
そんなテレビ局はいまものすごく苦しんでいる(本来は苦しんでいることを数字で立証すべきなんだけど、個人用ブログなので割愛)。

参入障壁がなくてプレーヤーがたくさんいたなら、仮に需要が縮小しても業界内にて弱いやつから順に死んでいくが、マーケット価格はそんなに下がらなっただろう。もしキー局が100くらいあったら、需要が減少しても広告料はあまり変わらず、弱いテレビ局が倒産しつつも日テレとかフジテレビとか強者は引き続き生き残るという状況になっていたであろう。景気が悪くてPCが売れなくなってもiPadはちゃんと定価でバカ売れしている。需要減少は主にプレーヤー数の減少という形に結実する。

しかしテレビ局業界は、参入障壁等のおかげでプレーヤー数が少なく供給曲線が立っている。そのため、テレビ局業界における需要減は価格低下としてダイレクトに彼らに降りかかっているものと推察される(広告料のデータとかってたしか日銀のCSPIにあったけど、バカみたいに低下していたように記憶している)。
ましてや彼らは装置産業(しかも給料も高いらしい)なので固定費=営業レバレッジがバカ高い。それゆえ、昨今のような縮小局面において彼らがこうむっているダメージはかなりのものになっている。需要減少が、既存プレーヤーの業績大幅悪化という形で調整される状況。

授業における「供給曲線を立てろ」を無批判に受容すれば、一昔前のテレビ局など絶好の買い物件と言えたのであろう。しかし今の日本において供給曲線が立っている業界はむしろ全力ショートなのではないかと思わずにはいられない...

さてそれでは、需要減が価格ダウンに直結するテレビ局のような業界と、需要減が供給量減に直結するような家電のような業界、縮小局面ではどちらがマシなのだろうか。考えるのも辛い目くそ鼻くその世界で気が滅入るが、授業後に考えたのはこんな感じ:「どちらの業界も厳しいので、業界としてはショート。特に先に死んでくれる弱者が少ない点テレビ局はどこも厳しい。他方、供給曲線が寝ている家電業界において、他の諸要因により競争力があるアップルのような会社はロングもありうるが、いかんせん国内にアップルのような企業が見当たらない...」。

つまり、人口が増加基調にあり経済も拡大傾向にある新興国とか(アメリカも?)においては「供給曲線を立てる」のが最適戦略になるのかもしれないが、日本においては「供給曲線を立てない」というのがオススメの戦略になるのではないだろうか。供給曲線を立てるのは自殺行為なので絶対やめた方がいいということになるように思うのだが。

とここまではなんとかたどり着いたが、「供給曲線を寝かせる」ってどうやればいいのよというところで手詰まりして集中力をロスト。人口縮小局面における経営学、自分のまだ見ぬどこかで理論は確立されているのかもしれないが、自分の中でその前途はいまだ暗中模索。。。