Wednesday, September 14, 2011

M&A tips

今学期履修する授業の予習リーディングを、自分なりに整理する。ブログで読めるレベルにこなれた文章にすること、あるいは日本語にすることでより一層頭の整理ができればと思ってのもの。今後も続けたいが、三日坊主になるような気もしている...

まあでも、こういうM&Aの実証研究とかtips話はとても面白いんだけど、アカデミックかどうかと言われるとちょっと???な感じ。やっぱりデリバティブの計算とかの方が学術的には「きれい」。

*投資なんてやったことのない人間によるメモなので、投資関係者で実務的観点からコメントがあればメールなりコメントなり適宜お待ちしています




○多くのM&Aが、それによって生まれた経済価値の殆どが売り手の株主に流れてしまっている。すなわち、買収者(の株主)は歴史的にはほとんど儲かっていない。

簡単な算数でいえば、それは買収価格が高すぎるから。高値掴みをしてしまっている。

かといって、プレミアムが低ければよいというわけでもない。買いたたいて失敗した事例、高い買い物になったが成功した事例は存在する。

ポイントは「そのターゲットが自分にとってどのくらいの価値があるかしっかりと見極めること」と「その価値を上回ったら1セントたりとも競り上げないこと」。

○自分にとっての価値を見極める・・・自分にとってのターゲットの価値と、ライバルにとってのターゲットの価値は等しくない。自分が期待できるシナジーの価値と、ライバルがターゲットを買うことで見込めるシナジーの価値が異なるからだ。相手が1兆円出したからわが社も1兆円、というのは駄目。

価値の見極めに大事なのは、ちゃんとしたバリュエーションと、シナジーの見積もり。シナジーを見積もる際には過大評価しないこと・負のシナジーもちゃんと考慮すること(例:銀行と銀行が合併して支店を削減したらコストは減るが、往々にして顧客=売上も減る)。シナジーは思ったよりも少ないことが多いし、思ったよりも遅く表れることが多い。従業員の融和や取引先との調整など、出来ると思ったことができないことも視野にいれておくべき。その辺投資銀行もコンサルもそこまで親身になって見積もってくれない。

○一円たりともOverbidしない:入札は得てしてアツいものなので、担当者が感情的にえいやっと高すぎる価格を入札してしまうことはよくある。それゆえ、ついやってしまいがちであることを認識した上で、そういうことがなくなるような仕組みを組織として構築しておくことが望ましい。入札価格を上げるのに上司の決裁を必要な内規を作るとか、3年以内にROIC●%達成という目標を立てることでコスト感覚を植え付けるとか。

○「戦略的投資」には常に疑いの目を保つこと。戦略的投資とは「計算上の価値は低いけど、数字で示せない価値があり、そいつを考慮すると買わんとならん」みたいなもの。世の中に計算できない価値がないとか戦略的投資があり得ないとかまでは言いづらいが、経営者は戦略的投資に懐疑的であるべき。数字で示せない価値の多くは本当に無価値であることが多いし、バリュエーション手法を洗練させれば捕捉できる価値であるかもしれない(リアルオプション等)。繰り返すと、絶対NGとは言わないが、疑う姿勢は必要。


●マルチプルは有益だが、使い方にはとみに注意すること

・EPSはダメダメ指標。USGAAPもIFRSものれんを定期償却しなくなったのでEPSで企業を見ると過大評価になってしまう。

・マルチプルを使うときには、利益の指標ではなくキャッシュの指標、株主価値の指標(E)ではなく企業価値の指標(V、あるいはD+E)を使うこと。これにより会計規則要因やら資本構成要因を除去する。

・ヒストリカルではなく、インプライドの指標を使うべき。実証研究によればインプライドの指標あるいは指標の予測値を使う方が「当たる」可能性が統計的に有意に高い。

・適切な比較相手を見つけることが鍵。これこそがベテランと新入りの差を大きくつける部分
(←超適当に、思いついた会社を比較相手にしていたなぁとか...恥)

・マルチプル計算にあたっては、余剰資金を差っ引くとか、リース負債を負債と利払い部分を調整するとか、そういう微調整をちゃんとやること