Wednesday, January 4, 2012

冬休みの読書(1)

この冬休みは、学校関連でいくつか教科書/リーディング/論文の類を斜め読みしたほか、日本語の本を2冊ほど読んだ。
日本語の本は当地で買うと高いので、日本のAmazonで購入して実家に配送し、年末に来訪した親に持ってきてもらった。わざわざ選んだから当たり前といえば当たり前なのだが、2冊ともとても面白かったのでメモ。
(英語の文献は、、、だいぶ中途半端のままorz)
なお、アフィリエイトを目的とした書評ブログではないので、あらすじや評論はパスして、自分がいかに本書を消化したかという点に絞って書く。

1. 『小澤征爾さんと、音楽について話をする』(小澤征爾、村上春樹)

大のクラシックマニアである村上春樹が、小澤征爾と音楽について色々語り合う本。
とあるブログで好意的に評価されていたのを見て購入。

自分は昔は村上春樹がわりと好きだったが、正直なところ最近少し満腹感があり、たとえば『1Q84』は手を出していない。今回は、「村上春樹の最新本」というだけでは買わなかったと思うが、「小澤征爾」「クラシック」といったあたりに惹きつけられて購入を決意した。
総じて内容が充実していた上、村上春樹の読みやすい文体のおかげで、最初から最後まで楽しく読むことができた。
(英語漬けの生活のなか日本語の書籍を読むと、文章のリズム感というか「この本は『読ませる』」とか「読ませない」というのがより鮮明に感じられる。英語書籍でももうちょっと感じられればいいのだけれど。。)

正直なところ村上春樹のマニアぶりはややスノビッシュな気がするのだけど、小澤征爾の「音楽を純然たる音楽として消化する」といった姿勢は非常に好感が持てた。細かい技法や「誰がタクトを振って誰がソロを張ったか」云々といった点に拘泥するというよりは「その結果、音楽がより素晴らしいものになっているのか否か、心を打つか否か」といった素直な目線を保持しているように見える氏の姿勢は、「ど素人クラシック愛好家」たる自分にとっては大きく首肯するところがあった。クラシックに関心があるけど、どう入っていけばよいのやら...という人にこそ、この本はフィットしているのではないかと思う。

村上春樹の音楽マニアぶりは上記のとおりやや鼻につくのだが、音楽を純粋に楽しもうという目線は保持されている感じで、腹が立つレベルではない。また、ちょっと読むだけで、「小澤征爾の世界を言葉に落とし込むことができたのは結局のところ村上春樹しかいなかったのではないか」という思いが強くなり、この本の存在意義を強く感じた。音楽に対する強い愛情を持ちながらもあくまで素人という村上春樹の立場、ひとつひとつの言語に対して鋭敏にその含意するところを捕捉せんとする文章家たる彼のプロフェッショナリズム。なんというか、非常に「痒いところに手が届いている」印象。

自分はこれまでは、自身の指揮者や楽団に対する知識不足もあり、極力指揮者や楽団にこだわることなく、演奏というよりは楽曲そのものを楽しもうというスタンスで音楽を聞いてきていた。ざっくり言うと、誰が指揮しようとそんなに変わらんだろというスタンスであった。しかし、本書を読むことで、「自分もそろそろ、同じ楽曲について、Aさん指揮の曲とBさん指揮の曲を比べてみたりしようかな」と思うことができるようになった。スノッブ化なのかもしれないが、個人的にはこの本が自身の好奇心を深めてくれたと思うようにしたい。

また、2人の一流プロフェッショナルの「仕事の流儀」のようなものも端々に出てくるのだが、これも大変示唆に富んでおり面白い。ぱっと自分が思い出せる限りでも、2つほど「これは」と思わされるものがあった。
・仕事をすることそれ自体が人生の主要な喜びとなっている。仕事に熱中できているということそれ自体が何者に代えがたい報酬となっている(村上の考えるところによる、自身と小澤の共通点)
・斎藤先生に学生時代に基礎をみっちりたたき込まれたおかげで、自分には基礎技術があった。おかげで、レニー(バーンスタイン)やカラヤンの演奏を見ても、参考にすることはあっても、まるまる真似することはなかった。
後者などは、なぜわざわざMBAで学ぶのか?という問いに対する答えとしてもそのまま使うことができてしまいそうなコメントだと思う。

長くなったので、2冊目は別稿に回す。