○Taxable Transactionとは?
・キャッシュディールだと、被買収企業(売り手)の株主は利益額が確定し、それについて課税される。これをTaxableと呼んでいる
・株式交換の場合(いくつか税務上要件あり)、売り手の損益は確定しないので、課税も発生しない。これをNon-taxableと呼んでいる。
○繰越損失の利用制限
・ヤヤコシイ要件があり、繰越損失がある会社を買収してもその繰越損失を買収企業がすべて任意に使うことができるとは限らない。場合によっては買収時に繰越損失は消滅する(のでそういう場合は買収価額が下がる)。
○M&Aにおける、会計上と税務の相違について
・会計的には、USGAAPでは原則パーチェス法が適用される→資産負債が時価評価される。結果として、GWが発生する。
・税務的には、ステップアップベースの取引(SUB)とキャリーオーバーベースの取引(COB)がある。
○SUBでは資産負債が再評価(Step-up)され、買収者にとっての税務上の取得原価は取得時時価となる。
・基本的に、SUBは例外と心得よ。原則はCOB。ざっくり言うとS-Corpあるいは子会社譲渡あるいはLLPで、資産取得ではなく株式取得であればSUBが使える。
・結果として、会計上のみならず税務上においてものれんが発生する。
・この「税務上のGW」は、会計上のGWが償却できないことと対照的に、15年定額償却がルールとなっている。
・その他無形固定資産も、時価でステップアップされた上で15年定額償却となる。
・バリュエーション上では、資産がステップアップされる結果タックスシールドの規模も増えることから、資産およびその償却額も洗い替えしてよい。償却10年・簿価1,000・時価5,000の工場があったら、バリュエーション上償却費は100ではなく500にしてよい
○COBでは税務上の取得原価はもともとの原価、すなわち被買収企業が資産負債を取得したときの原価がそのまま引き継がれる(Carry over)。
・結果として、GWは発生しない・・・これが自分にピンと来ないのだが、ステップアップだろうがキャリーオーバーだろうが買収価額と純資産額には差額が出てしまうだろうに、その差額はGWじゃないのか?
(追記)前提としてキャリーオーバーのためには株式交換なので、現金を介さないので差額を気にしないで済む
・会計上時価に洗い替えされるとはいえ、税務上はそのままなので、バリュエーション上、固定資産およびそこから生ずる減価償却費を時価で再評価する必要はない、というかしちゃ駄目。・・・「このB/Sに載ってる工場(10年償却)は、簿価1,000だけど時価が5,000だから、バリュエーション上償却費は年間500に増額しちゃっていいんじゃないの?」という素朴な疑問を抱いたことがあったが、「税務上は時価はどうでもいいので、そういった増額は駄目」ということが今になってちょっとすっきりした。