Friday, February 11, 2011

暗記しろっ!!

中国語の授業にて。
生徒が、ノートを見ながらだとスムーズに喋ることができるのだがノートを見ないと喋れないという状況を見て、先生がこんなことを言った。

「君たちアメリカ人は暗記を極端に軽視するが、私の国ではもう少し暗記することも重視している。君たちは中国人と会話するときにもカンニングペーパーを見ながら話せると思っているのか?期末テストもClosed Bookでやることにする。お前ら暗記をもっと頑張れ」

これを聞いて、自分も「おっ」と思った。たしかに言われてみると、ここ半年で判断する限り、アメリカ教育(あるいはUCLAのMBAの教育)は、記憶力に対する要求水準が日本の教育と比べて著しく低い。統計やらファイナンスで少しでも公式が登場すると、決まって生徒から「これは覚えないといけないのか?」という質問が出る。そして教授の回答も決まっていて「使えれば良い。式それ自体は試験当日はCheating Sheetに書いてもってくれば十分」といった感じ。

こういった「記憶力軽視」はこれまで自分も感じていたところであったが、自分はこれを割合ポジティブに解釈していた。すなわち「記憶力よりも応用力に重点を置いており、ビジネスでの活用ということを踏まえると理にかなっており悪くない」と、ぼんやりとではあるがこのように考えていた。
正規分布の密度関数がどうしてこのような数式になるのかとか、ブラックショールズ公式がなぜこのような形であるのかとかは、確かに実務上の出番なんぞ皆無である。

一番その違いを感じたのは統計の授業。同じ統計の授業(学部100分、MBA90分、まあ同じくらい)でも、
日本の学部:「なぜ正規分布がこのような式になるか」で90分、例で10分
MBA:「正規分布とは」3分→正規分布の関数の数式1分(覚える必要なしと言及するだけ)→「正規分布を使うとどのようなことが計算できるのか」という応用に86分 といった感じ。

これでいいのかなぁという思いもないではなかったが、まあ実務重視のMBAだし、そんなものかなぁと思っていた。しかし、どうやら中国人の先生は自分以上にこの記憶力軽視の傾向が気になっていたようで、今回の授業で比較的真剣に生徒に対して「もっと暗記せよ」と発破をかけていた。もちろん中国は科挙の国であり暗記教育のメッカなんだろうが、それにしても、やっぱりこの記憶力軽視は気になるよなぁと先生に対して共感を覚えた。

決して日本の教育がいいとは思っていない(「日本の教育」がなんたるかも理解しているか疑問ではあるが)が、果たしてアメリカのこの応用重視のやり方がベターなのかも未だ結論は出ていない。まあ結論を出すべき問題でもないか。とりあえずは、「2つの異なる教育を受けて、方法論が必ずしも1つではないということを肌で感じることができてよかったね」というところで止めておくが、おいおいまた考えを進めてみたい.