Wednesday, March 7, 2012

上級会計メモ(10) 倒産関連

■ 匂う...

業界経験豊富(?)な教授による、「これはヤバいぞ」という危険信号リスト。似たようなことを学術的に分析して、下記のヤバさの「当てはまり具合い」はある程度立証されているみたい:

1. 利益は黒字なのに営業キャッシュフローは赤字...
2. 利益と営業キャッシュフローに顕著なギャップがあったり、それが年々拡大していったり...
3. 運転資本/売上高比がイヤーな感じで上昇している...
4. 売掛金・在庫・買掛金といった運転資本が不自然に推移していて、回収期間が伸びている...
5. 謎の”その他”項目が多額にのぼる... しかも”純(net)”とか書いてあったりすると...

6. 負債が謎の急増...しかもヤヤコシイ(プレーンバニラではない)形態が増えており...
7. 引当金やリザーブ項目の謎の増加
8. 一時的ではない”一時的項目”が毎年存在していたり...
9. マージンが謎の急増限...
10. M&Aはともかく、のれんや無形固定資産増加に関する情報開示が不透明...

11. 笑えない規模の金庫株増価
12. Fair Value Accoutingにおいて開示される計算根拠(Assumptions)がイミフな変動...マクロ環境変わってないのに想定なんちゃら率が急速に悪化していたり...
13. 謎の「関係者間取引」勘定
14. 偶発負債、記録されているべきものがない...
15. なんでそんなに実行税率がコロコロ変わるの?
16. バランスシートの項目での”and”の乱用(無駄に合算することで、詳細がむにゃむにゃ...)




■ ヤバいと生じる会計イシュー

・減損:有形固定資産、無形固定資産。とくに注意が必要なのは、のれんと繰延税金資産
・再建費用
・債権の条件変更:要返済額が減ったとき、貸し手は即座に損失を計上するが、借り手は利益は計上できず、既存負債が減った分新負債を計上しないといけない
・Liabilities subject to compromise: Ch. 11が通ると同時に、殆どの負債はこの「おいおい妥協する運命をたどる負債(仮訳・・・涙)」に振り替えないとならない
・多額のプロフェッショナルフィー(涙)

■ Ch11で、ヤマを越えると生じる会計イシュー

・Liabilities subject to compromise(LSTC)の解消:借方にLSTCが計上されて、貸方には負債減免交渉の結果に応じ、資本金・資本準備金(APIC)・減免後の新しい負債が計上される。さらに、差額調整として、利益あるいは損失が計上される。

・Fresh-start Accounting:以下の条件2つ(1. 再編成後の資産簿価と、倒産処理後の減免後負債総額の差がマイナスである場合、2. 倒産前後で、議決権保有者が別人に入れ替わる場合)を満たした場合に限り、特に買収があったわけでもないのに、バランスシートをパーチェス法のごとく時価で洗い替えすることができる。
※定義上、少なくとも会計上の利益はでるのだが、税務上はどうなるんだっけ。。
※ここの時価評価のところで、経営者にゴニョゴニョする可能性が出てきてしまう。

会社「資産査定に時間かかってます」
→判事「では債権者集会延期で」
→(繰り返し)
→会社「時間かかっているうちにますます価値が減少してしまいました」
→判事「では資産は申し出の通り6割減で。これに伴い負債も6割減ではなく8割減でいきましょう」
→債権者「」


みたいな。

※しかも、新しい経営陣にインセンティブも与えないとならないという考え方もあることから、ますます債権者は泣くことになる。。←って、知らんけど、インセンティブ的発想がさほど普及していると思えない日本の裁判所界隈では、米国と比べて、株主不利・債権者有利な調整がなされたりするのかな...などと思ったり