Wednesday, March 21, 2012

IRR (3)

3. 問題点(3) 再投資問題その2・・・IRRとMIRRとIMIRR(とNPV)

プロジェクトの予想CFが

プロジェクト1: (1, 2, 3) = (-100, 150, 100)



みたいなプロジェクトに投資するPEファンドに銀行が投資したとする。
その時、PEと銀行の間で、解約できるのは早くとも5年後という契約が結ばれたとき、銀行にとってのCF(※手数料は便宜的に無視)は

(1, 2, 3, 4, 5)=(-100, 150, 100, 0, 0)



となる。

このプロジェクトの採算性はどのように測定するのがいいのだろうか?

Year CF(Pr.) CF(Fund)
0 -100 -100
1 150 150
2 100 100
3 - 0
4 - 0
5 - 0
NPV(@20%) 94 94
IRR 100% 100%
MIRR 59% 21%
IMIRR 59% 59%


候補1: NPV
→ まず、「適性な割引率」のところでモメる。実務レベルで、関係者全員が100%納得するような割引率を見出すことは簡単ではない。
→仮に適正な割引率が見つかったとしても、3年目以降の(0, 0, ..., 0)のNPVがゼロで、プロジェクトの採算性とファンド投資の採算性を区別することができない(2年度末に解約できないデメリットを測定できない)。
特に最初の問題により、NPVは眉唾ものとされ、ファンドのパフォーマンスでNPVを出しているところは殆ど存在していない(NPVの是非を見るためには、割引率の導出過程も見なくてはならない)。

候補2: IRR
→NPVのようなうさんくささはなくなる。計算に使われる数字はナマのCFだけだからだ。
→しかし、「IRRで再投資」という前提により、数字が大きく出てしまう。換言すると、最後の100のあと、解約まで1年目の150や2年目の100がIRR(100%)で再投資されるという前提となり、怪しい。
→また、2年目で終了となるプロジェクトと5年間解約できないファンドの比較ができない(両方ともIRRは100%)。

候補3: MIRR
→IRRの怪しい前提をクリアでき、出てくる数字も妥当なものとなる。
→プロジェクトのMIRRとファンドのMIRRを区別できる。
→ただし、実際にPEあるいは投資家がその利回りで再投資するか否かは無視しており、再投資という仮定に若干の怪しさが残る。

候補4:IMIRR(Isolated Modified IRR)
→Phalippouさん他が提唱した概念で、「プロジェクトが終わったところで、再投資の前提を置かず、投資が終わったということにして計算してみましょう」というもの。すなわち、解約できる5年度末まで待たず、2年度末に解約がなされたと考えてMIRRを計算するということ。
→これだと、再投資の前提を最小限にして(途中のCFはどうしてもハードルレートでの再投資が仮定されるが、最後のキャッシュフローは再投資されない)怪しさを最小限にできる。

上記Phalippouさん他は、個別のプロジェクトを評価するにはIMIRR(かNPV)、ファンド単位で評価するにはMIRR(かNPV)がいいのではないかと主張している(実務家のそれに対する反対意見と、それに対する更なる反論も展開されている)。

個人的には、ハードルレートについて広く合意形成可能な相場に合ったものが使えるのであればMIRRの方が適切であるような気もするが、やはりそこに恣意性が入るので、数字が大きく出てしまうリスクを我慢してもIRRで行くのが良いのではないかと考える。