Friday, March 16, 2012

濃かった冬学期

成績が出てしまうと色々コメントしづらくなることもあるので、成績発表前のこのタイミングで今学期の授業について回顧しておきたい。一言で言うと、関心分野のFin/会計のハイレベルクラスに絞った結果、大変ではあったが非常にエキサイティングな学期を過ごすことができた。

■ PE/VC

その名の通りPE、VCについて、ファンドからの目線・投資先企業からの目線等様々な目線でケースを取り扱った。ざっと列挙すると

・イエール大学の資金運用オフィス。PE投資を増やすべきか否か?
・とあるスタートアップの資金調達プランについて、VCとして是非を判断する
・成長過程にあるテック企業。上場するか、あるいは大手への身売りを選ぶか?
・複数ラウンドを経た今もなお、可能性は大きいが結果が出ていないベンチャー。VCとして、追加のラウンドをどうする?
・中国のスタートアップ。どうIPOを成功させるか?
・新設PE。LPとして、創設者のトラックレコードをどう評価するか?どのような報酬契約を結ぶか?
・欧州のLBO企業。ExitとしてIPOを考えているが、どこに上場しようか?
・テックPEという異色のファンド。LPとしてどう評価するか?
・投資家間で条件交渉が難航している。表面価格を揃える代わりにワラントを発行したいが、ワラントは何枚発行する?転換価額はどうする?
・とあるテック系スタートアップ。ファブレスモデルで行くか、ライセンスビジネスで行くか?また、VCの提案する転換優先株はどう評価すればよいだろうか?
・とあるテック系スタートアップに買収打診と追加ラウンドVC投資オファーが同時に来た。身売りかVC投資受入か?また、彼らの呈示する優先株はどう解釈すればいいだろうか?
・南アフリカの警備会社。順調に成長したが、国内がアレなので国際展開したい。どこに上場するのがいいだろうか?
・インドの自動車会社。PIPE投資を受け入れるべきか否か?インドのPE市場はどうか?
・不採算部門や株式の換金を求める一部家族という問題を抱えるファミリービジネスに対し、LBOと部分的PE投資の打診が同時に来た。どうしよう?
・政府系ファンドという新たなビジネスモデルを確立した中国のPEファンド。拡大に伴い、権限の集中と委譲等戦略の再構築を検討しているがどうしよう?


と、ファイナンスという観点のみならず、戦略論的な観点からも色々なテーマに触れることができ満腹感がある。技術的には、バリュエーションの更なる練習ができたほか、いわゆるハイブリッド証券の構造・よくある形態・バリュエーションなどについてじっくり学ぶことができたのが特に大きい。でも総合的には、新しい学びに感動したというよりは、既存知識を使う練習ができ、知識の定着化を図ることができた点により大きな満足をしている。

あとは、これまでマーケティング等のクラスでマグロとなってしまった苦い過去を克服したいという目標に支えられ、毎授業何かしら発言するように努めたので、「授業に積極的に関与してやったぜ」という自己満足感もわりと強い。先日の記事にも書いた通りチームメイトにも恵まれたので、この授業は心底楽しかった。100点。


■ 数理ファイナンス

「伝統的理論はすべてオワコンだ!」という衝撃的なレクチャー(Cochraneというシカゴの大物教授のペーパー)から始まり度肝を抜かれるが、2回目の講義からは「伝統的理論→それが最近どのようにチャレンジされているか」という風に丁寧に説明してくれたので、大変理解しやすい授業であった。序盤の平均分散アプローチのあたりは退屈だったが、その後はすぐ自分の不案内な分野へと移り、しかも割と新しい論文の内容などをフルに反映してくれていたので、「わりと最先端に近いところにタッチできている」という満足感が強かった。

自分は数理ファイナンスに因縁がある。社会人一年目に財務部配属となり、同期が担保契約がどうこうとか、コーポレートファイナンス的なことをやっているのを傍目に、ひたすら金利の期間構造とかスワップのバリュエーションとか数理ファイナンス的なことばかり触れることになった。その結果、支点でのC-Fin経験もあったものの、自分は数理ファイナンスに強くかぶれることになり、留学の主要な動機も「思いっきり数理ファイナンスを勉強したい」というものであった。しかし、色々(多くの妥協と、ちょっとの”方向転換”)あった結果MBAを選ぶこととなり、1年目に戦略論やらマーケやらC-finやらに楽しさを見出した結果、2年目になる頃には「数理Finはあくまで趣味、本業はC-finを中心としつつ戦略論を絡める感じだよな」と、文転に近い感じの方向”再”転換を行った。

そんな最中での数理ファイナンス履修であり、正直テンションは低めだったのだが、いざ履修してみると、文転した身としても非常に感銘を受ける授業であった。数理ファイナンスそれ自体の論理的エレガンスのようなものも大変萌えるもだが、それ以上に、「C-finをやっていると日々出てくる、『使えるけど説明できない各種理論』について、根っこのようなところをじっくり考えることができる」という点が気にいった。例えばCAPM。C-fin系の授業では「そういうものです」というノリでCAPMそれ自体については殆ど立ち入らずただ単純に使うのだが、この数理ファイナンスの授業ではその理論成立経緯、どういう批判があるか、その上でどう使うか、実証的にどうか...と色々な観点でCAPMそれ自体についてじっくり考える機会を得ることができた。自分はどうも不器用なところがあり、「よくわからないけど、とりあえず使う」という発想に100%馴染めず、つい各種実務上の知識についてその理論的背景を理解したくなってしまうところがあるので、このような自己満足心を充足させる点において、この授業はばっちりフィットしていた。

嗚呼、できることなら、もう一年くらい、こういう授業を受けていたいものだ。。。

※ただし進度が異常に早く、偉そうに言ってるけど理解度は正直怪しい。。


■ 上級会計

当校ビッグ3と言われる教授の一人による会計クラス。M&A,ハイブりっど証券、公正価値会計、倒産、スピンオフ等について実際のケースを見ながらガンガンやっていくクラス。

実に内容が濃く、また宿題として課されるレポートが大変ではあるがちゃんとやり終えると内容をきちんと理解できるようないい設計になっているので、食らいつくこと自体を楽しめたし、知的興奮もかなりのものだった。MBAに来る前にわずか一年ではあったが銀行業務に携わったことがあり、会計の意味するところや会社の思惑のようなものが財務諸表ににじみ出ているというところまでは理解していたので、「この数字から会社のどのような意図を読むか」的な問題群を楽しむことができた気がする。おそらく、会計の授業をこれ以上面白くすることはできないと思う。

序盤は要領がつかめず、本当に作業に苦労した。授業が火・木なのだが、最初の頃は水曜日は文字通り一日中宿題やっても深夜まで終わらず、真剣にこの科目のドロップを検討したこともある。会計知識も(特にUSGAAPの)十分ではないので、教科書を買ったりブログにメモを残すことで必死にくらいつこうとした結果、なんとか中盤でレポートに良い評価をいくつかもらうことができ、後半はちょっと楽になった。

しかし一番大変だったのは最終課題だった。お題は自由、分量はたくさん。ネタを探すのに大変苦労した挙句Facebookという美味しそうな題材を見つけたが、これがまた手ごたえあり過ぎた。結果として、学部時代の卒論より時間をかけたと思うし、後半は妙にノッてきたので論文の森にちょっとだけ首を突っ込んでみたりしたらますます時間がかかってしまった。でもそんなレポートも無事に終わり、MBA史上最大級の自己満足()を抱くことができた。まさかアメリカのベンチャー企業の上場申請書を隅から隅まで読み、関連する会計基準や論点について英語で議論できるようになるとは...みたいな自己満。

※正直、クラスの参加者が濃すぎて(いわゆるファイナンス畑の学生の中でも上澄み集団で、かなりハイレベル)、相対評価の中では正直平均より上に位置できたとは思えないのだが、この科目はそんなことどうでもよくなるくらいチャレンジする機会を与えてくれたので、成績が出る前である今のうちに教授に感謝しておくこととしたい。

■ プロジェクト(AMR)

Sucks. 詳細は他の記事参照。頼むから選択科目にしてくれ、、、

■ 個人プロジェクト

先学期取材を15件くらい行ったプロジェクト、今学期は上記が忙しすぎて何もできず。でも今学期にレポート執筆のイロハを多少学ぶことができたので、これを活かしつつ来学期に書きあげたい。でも成績はもう今学期に出てしまうので、ぶっちゃけ帰国までにやらなくてはいけない理由はそこまでないのだが。。