雑感をいくつか:
○ここ最近見聞きした話をベースとして感じていること:
・「問題なのはWhat to doではなくHow to do it」というのがこれまでの自分の認識だった。禁煙した方がいいというWhat to doは大抵の場合当事者にとって言われなくてもわかっていることであり、どうすれば禁煙できるか、すなわちHow to doが主要な論点なのだと思っていた。
・しかし、How to do itも大事かもしれないがHow to attain something without doing itも同じくらい重要なのではないかと思うようになっている。
健康という大目標があって、そのソリューション(What to do)の一つに禁煙があったとする。で、どうやったら禁煙できるか考えることももちろん大事ではある。だがむしろ、禁煙できないという立場からスタートして禁煙なしで健康を達成するにはどうすればいいかと考える発想こそが大事なんじゃないかという発想。
・現状追認的という誹りを受けうる考え方なのかもしれないが、少なくとも問題意識からスタートすることで導出される「理想のソリューション」を実行することだけが最適唯一の方法であると考える必要はまったくないのじゃないかしらというあたりで思考が滞留しているところ。「タバコは吸ってもいいけど、野菜をたくさん食べることで体のコンディションを整えると良い」みたいな感じで、現状を無理にブレイクせず現状をベースとした解決策を提案することも検討せんといかんのではないかという思いがもやもやしている。まあそれこそが今の日本の財政なのかもしれないが。
○ジャパントリップ思考実験
・多くのMBAで、ジャパントリップ(JT)の準備が始まる季節。JTが日本人学生にとって概して素晴らしい経験となりうることはおおいに賛同する。だが、その素晴らしさがJTに行かないことで得られる素晴らしさと比較してどうなのかも検討した方がいいんじゃないかという思考実験。やり方としては、一般的に言われているメリットが果たして本当にメリットなのか検討し、その後あまりスポットライトが当たらないJTの機会費用について整理してみる。趣旨は一方的にDiscourageすることではなく、下記のような各種論点を包括的に考慮した上で参加・開催の有無を決めた方がいいだろうと思い。
・JTは色々なメリットをもたらしてくれる。だが、そのメリットには若干ながら再検討の余地がある:
日本人学生のプレゼンスの向上→JTはかなりの可能性で日本人学生あるいは自分自身のプレゼンス向上に寄与する。とはいえ、「日本人学生のプレゼンス向上」は自分個人にとって本当に価値あることか?自己満足を言い換えただけではないか?また、プレゼンス向上のために自分達がその辺でパフォーマンスを披露するというのはわかるが、プレゼンス向上のために外国人に旅行というサービスを売るというのは、主客逆転のように感じられるのは自分だけだろうか。
リーダーシップ経験→もちろん、やれば相応のリーダーシップ経験は得られる。少なくともレジュメに何か書けるだろう。とはいえ、旅行のアレンジ程度のリーダーシップ経験なら学部あるいは高校生のときに既にやったことがあるはず。ビザやら飛行機やら特殊なロジが加わるが大したものではない。他にもリーダーシップの機会はいっぱいある。他を頑張らず、やりやすそうなJTで急に張り切るのはどうなのか。
何か面白いことやりたいという素朴な欲求→個人的には、これが強いのであればおおいにやるべきだと思う。ただし、日本人学生が外国人学生をアテンドするという性格を踏まえると、何か面白いことをやりたいという思いはお客様目線では全くなく、自己満足的なものであることには自覚的であるべきだと思う。また、この欲求が自分だけのものか日本人チームで共有されているかも重要。自分が面白いことやりたいからお前らもやりたいはずだ、という発想は避けるべき。他の人はそれぞれ別の思いにより参加を決めている可能性が高い。
・JTの機会費用も考慮した方がいいのでは:
膨大な準備時間→日本人同級生と話し合ったり作業したりする時間。やっている最中はなんとなく有益な時間を過ごしているような感覚を得るが、留学中という状況を踏まえるとおそらく外国人同級生と触れ合ったりしている時間の方が有益である可能性が。しかも仕事内容自体は高校生レベルだし(かといってちゃんとできるとは限らないのだが)。かなりの時間を日本人同級生と費やすことって、実は立ち止まってよく考えていい論点だと思う。
貴重な休みが潰れる→春休みだか夏休みだか、3000ドルくらい。これだけの金と時間があれば、インドでも中国でも南米でも行けちゃう。金持ちの人は「別途南米いきゃよくね?」ということになろうが、いずれにせよジャパントリップを挙行することで相応の金と時間が吹っ飛ぶことは確か。
以上のような負の側面を考慮してもなおやりたいというパッションがあるなら、大いにやるべきだと思う。負の側面を考慮してもなおやりたいというくらいだから、きっとその熱意は長続きするだろうし企画の成功確率も高まるだろう。ただ、その辺の論点について考慮もせず軽いノリで参加を決めてしまうと、途中で「思ったより大変」「外国人同級生との飲み会断って日本人と話し合いしてるっていいのかな」といった揺らぎが出てきてしまう。そういう意味でも、投資信託の販売ではないが、リスクをちゃんと考慮してその上で参加有無を決めた方がいいと思う。少なくとも自分はこういった論点について思いを馳せることなくノリで参加して、途中でこういったリスクがあることを認識しテンションを落としてしまったので、同じ轍を踏んでほしくないと思っている。アントレプレナーとはリスクを無視して突き進むものではなく、誰よりも正確にリスクを認識リスクを最大限コントロールした上でチャレンジするものであると思う。
*あくまで一般的な話であり、UCLAのMBAに限った話ではないしUCLAの1年生を対象とした話でもないのであしからず。。