Tuesday, October 11, 2011

Diversification, Divestiture

多角化戦略、昔はさておき今はデメリットの方が大きいのではないかというリーディングのメモ:

1. 多角化のメリデメ比較

Pros:
・節税可能性:損金益金のガッチャンコができる
・リスク分散:多角化していれば一事業が赤字になっても全体として持ちこたえる可能性。
・Internal Capital(部門間での資金融通)を利用できる:銀行や投資家にディスクロしないで済むのはメリットだし、手元にある資金は人から出してもらう金より遥かに使いやすい(Pecking Order)。また、Internal Cash Managementの仕組があれば、各事業部門が余ったからと言って資金をしょぼい事業に投資することを回避できる。

Cons:
・各事業部のモラルハザード:他部門がカバーしてくれるからといって過剰なリスクを取ったり、他部門に赤字補填に回るくらいなら自部門で無駄に使ってしまえとか
・経営者が中立的になれない:本来Unsystematic Risksは投資家がヘッジすればよい話だが、赤字になると首になる経営者としては多角化するインセンティブを持ってしまっていて中立的に判断できない
・Internal Capitalにも問題あるよね:そんな洗練された組織では、意思決定に時間がかかるようになってしまう。Overheadも増えるだろう。また、CMSがあると、配当するよりもどこかの事業部門に突っ込んどけという傾向が生じ非効率性が増長する。
・アホ経営者を追放しづらくなる:アホ経営者を追放しようにも、そのために買い占めなくてはならないエクイティが1億円のときと1,000億円のときではその難易度は大きく異なる。また、大企業は概して株主構成がより分散していて、株主のまとmった同意を得るのが困難。
・コングロマリットは得てして経営者があまり自社株を持っておらず、エージェンシーコスト発生リスクが大きい。株主と運命を共にしていない経営者に望む通りに働いてもらうためには、バカみたいな報酬を彼に払わなくてはならなくなる(オーナー社長であれば、そんな馬鹿みたいな報酬など払わずとも株主のため全力を尽くすだろう)

2. 外部環境の変化

・投資家がより賢くなり、株主の発言力も高まり、ディスクロ圧力も増大。これらの結果無駄な多角化が今まで以上に疑義にさらされることが増えた


(感想)
・既にそうなっているが、これからはより一層コア事業への集中とかノンコア事業の売却とかが求められるのだろう。
・多角化が経営者のインセンティブになっている、経営者は多角化度合いについて中立的たりえないというものが個人的には最大の学び。無意識にはわかっていたような気もするが整理したことはなかったと思う。
・多角化バンザイとかシナジーいっぱいという議論は、常に買ったり売ったりが起きていないと儲からないコンサルIB及び多角化してたほうが自己利益につながる経営者がタッグを組んで株主をだまくらかそうとする試みである可能性を疑うべき。その意味で株主は今よりもっと強く賢くなるべき。
・本稿はアメリカの証券市場を念頭に置いており「株主が強くなっている」と論じているが、これは日本ではまだあてはまらないところもあるように思われる。もっとアクティブな機関投資家は出てきていいし、出てくるはず。そうなると空前の非多角化(Divestiture)ブームが起きるかもしれず、そのときはM&Aアドバイザリーもプライベートエクイティもウハウハなんじゃないか...と妄想。