Monday, February 27, 2012
Misc
数回書いたFBのスタディだが、前回記事でシリーズ打ち切り。
(1) 忙しい
(2) 数回やったおかげで頭の整理がつき、本番(=提出するレポート)の構成が絞られた
(3) まじめにやると、たぶんあと50回くらいシリーズを続けなくてはならず、卒業する方が早い
2.
ゴルフの調子が悪い。。すると色々ゴルフのことが気になってしまい勉強も進まないという。。
3.
ウェイトリスト入りしていた第4希望の不動産の教授から、ウェイトリストだがやる気があるなら入れてやるとメールが来るなど。これは初体験。正直やる気があるのかどうか自分でもわからないのだが(なにせ1科目取れば卒業できるのに、これは4科目目)、取ってからやめることはできても逆はなさそうなのでとりあえず履修してしまった。自分の「とりあえず一歩踏み出すが、その後やり切る気力腕力に欠ける」という欠点がいかにも再発しそうで怖い。。
Friday, February 24, 2012
上級会計メモ(9) 証券化と公正価値
・キャッシュフローが出るものを適当に束ねる:不動産でも、消費者ローンでも、CDの売り上げでも、ときメモの売り上げでも、売れるのであれば何でもOK。
・束ねた資産を、シニア→サブ→エクイティといった感じで優先劣後関係を付けて再分類する。価値が100未満のときはシニアが総取り、150以下ならメザニンも取り分がある、それ以上のときはエクイティにも取り分が、といった感じ。シニアはAAAが取れるように設計されるので、元は消費者ローンなのにAAA格という魔法の証券が出来上がる。
・SPCを挟んで投資家に売る:SPCを挟むのは、投資家にとっては倒産隔離の効果がある一方、発行体にとってはオフバランスできるという効果がある。
・舞台裏:シニアは投資家に簡単に売れるが、得てして劣後部分は売れ残り、発行体が保持することが多い。すなわち、証券化は実質的には、上澄みだけ切り離しているものの、一番ヤバい部分は濃縮されて発行体のB/Sに残っていることが多い。。
■ 証券化の会計処理:Gain on sales
・束ねられた資産は(1)シニア部分、(2)発行体が保持する劣後部分、(3)発行体が回収業務を行う場合はサービスフィーの価値部分、と3つに分類することができる。
・それぞれについて、まず、公正価値を算出する。(1)については実際の取引価格を、(2)(3)については金利等各種前提をもとにした計算値を用いる。そうすると、シニア部分が全体の何%の価値であるかわかる。
・仮に束ねられた資産の簿価(コスト)が100で、上記計算によって求められたシニア部分のシェアが80%であったとき、シニア部分の原価は80と推定される。シニア部分が90で売れたとすると、証券化から得られた収益は90-80=10と計算されることになる。これがGain on sales。
・別途、発行体が保有し続ける部分については、公正価値の増減が損益として認識される。
・この仕組みのミソは、証券化による収益等が、「シニア部分の公正価値がいくらか」という経営者の計算に大きく依存しているということ。公正価値会計の根源的問題がここで絡んでくる。経営者が鉛筆をちょっとなめるだけで、証券化関連利益が簡単に嵩上げされてしまう。
・なので、投資家は、(1)公正価値計算に関するディスクロが十分かどうか(2)開示されている前提は合理的な範囲に収まっているかどうか(3)前提が変わったときの感応度はどの程度か、などを結構真剣に見ないといけない。
■ 公正価値会計の問題点
・市場性のあるレベル1資産ならあまり問題ないが、市場性が低いレベル3資産になると、経営者がどう公正価値を計算したかがかなり数字に影響を与える。財務諸表に恣意性が入り込んでしまい、根源的に排除できない。恣意性を嫌うなら全て簿価で記録することになるが、趨勢上、そういう方向に進むことは考えづらい。
・証券化以外の一般的な資産/負債については、公正価値会計を適用するか否かは経営者のオプションとなっており、しかも資産/負債ごとに選択することができる。含み損が出ている資産は簿価のままにして、含み益が出ているものだけ公正価値処理するとか、色々「いたずら」ができてしまう。当局から警鐘はならされているようだが、これを悪用する企業がいる可能性は排除できない。
・それに呼応して出てきた基準がFAS157で、レベル1,2,3と資産を流動性・市場性に応じて区分して開示することが定められている。
※おまけ 授業で触れられた「うさんくさい会計行為」集
・財務諸表で、やたら「A and B」と複数の項目をまとめていて、AとBの内訳が不透明→グレー
・「A net B」と、例えば引当金などを勝手にネッティングして、詳細が不透明→グレー
・資産/負債が拡大(縮小)しているとき、一部項目だけ不自然に増加幅が小さい(例:貸付金が30%増なのに引当金が1%増とか)→かなりグレー
・引当金が増加していない、減少している→とてもグレー
Myths and Realities in MBA
1. MBAに来ると英語ペラペラになる
ダウト。上達あるいは場馴れはするが、少なくともカタカナ英語が滑らかになることは殆どなさそう。カタカナをカタカナなりに速く喋れるようになる程度か。ただし、しゃべりの機会は他の留学先(エンジニアリング、パブリック、ロー等)と比べると多いようで、留学生コミュニティ内では内弁慶することはできるのかな、という印象。
他方、読み書きについては手前味噌ながらかなり成長している感じ。これは素直に宿題等が馬鹿みたいに多かったおかげであろう。
2. MBAに来るとロケットサイエンティストになれる
ダウト。知識それ自体だけでビジネスエリアで差別化を図りたいのであれば、どこぞのPhDにいくか、金融工学とかマーケティングのピンポイントの修士が適切であろう。MBAはいわば「喋りやスケジュール管理も含めた総力戦」といった感じで、全体的に実力の底上げ感は得られるが、「ファイナンスの鬼」とかには多分なれないような。
3. MBAに来ることで自分の欠点が抜本的に改善される
怪しい。自分自身いろいろと問題を抱えていて、MBAをきっかけに改善されるよう努力を試みたりもしているが、お釈迦様の掌を飛び回る孫悟空気分こそ味わえるが、欠点を克服して生まれ変われるかというとちょっとそこまでではなさそう。人によっては、この短所改善を最優先して2年間ひたすらに取りくめば改善するのかもしれない。
他方、短所を客観的に見つめ、その短所とどう折り合いをつけていくか・・・という態度を身に着けることであれば、わりとできる気がする。日々バタバタするので自分の短所が何かけっこう露呈して、否が応でもそれと向き合っていく必要に迫られるので。
4. MBAの学生は皆すごい
見る角度にもよるが、結構みな等身大な気がする。中にはウンか国語喋れて起業経験があって。。みたいなすごいやつもいるが、殆どの人は似たり寄ったりの悩める若者といった感じ。また、ある側面においては普通の社会人より劣る部分もあり、例えば約束を守るとか、遅刻しないとか、色々なところがオロソカになっている学生は多い(忙殺されるあまり、また上司がおらず首にならないから、というあたりが原因か)。なので、2年間、「あ、意外と皆似たようなものだ」という安堵もできる(もちろん、結構な回数、日本では味わわないような劣等感を感じたりもするのだが)
5. MBAは忙しくて死ねる
解釈次第だと思う。たとえば「毎週金曜日も休みであり、授業は学期で4つ」とだけ聞けば、仕事と比べて楽勝じゃないかと言うこともできると思う。仕事のようなプレッシャーも少ないし。
ただ、いくつか多忙な雰囲気を出してくれる要素があって、グループ課題とそのためのミーティング(と揉め事)、無尽蔵にある各種イベント、英語なので日本語の1.3倍くらいかかる所要時間・・・など。なので、結局のところ週末も空き時間は基本的に何か読んだり書いたりすることになり、心の余裕はそれほどない。
なので、たとえばMBA留学していない人に対して、自分から「俺はマジ忙しかった」と威張るのはためらわれるのだが、他のMBA学生を「あいつら結局のところ暇なんだよ」と馬鹿にすることはちょっとできない。
あと、物事に優先順位を付け、劣後的なものをバッサバッサと切る癖がつく(ついてしまう)人が多く、うっかり優先順位を低く見られてしまうと返事も貰えなくなったりとか。
また何か思いつけば書くが、とりあえず5つほど。。
Thursday, February 23, 2012
キムタクとマクロと金ドル
今日は疲れていたのか、日本人学生とすれ違った時にいつもは「こんちは」とか「ういっす」とか挨拶するのに何故か満面の作り笑顔で「Hi!」とやってしまい軽く照れた。また、台湾人の友人に「What's up?」ポンと肩をたたかれたときについうっかり「おう」と挨拶してしまい、「What's O?」みたいなことを言われてしまいまたまた照れ。ただ、その友人は、日本のドラマでキムタクが「おう」と挨拶しているのを見たことがあるらしく、自分が挨拶したということは理解してくれたみたいであるが。。
2.
ミーティングでExcelを実演していた際に感心してもらったマクロ関係の小技を披露:
※たぶん、みんな知ってる話だろうけど..
○マクロは「マクロの記録」→実際に操作→記録停止とやればできる。
○次に、マクロ→オプションで、作ったマクロにショートカットを割り当てる。Ctrl+○とCtrl+Shift+○という2つのパターンがあるが、Ctrl+○は殆どのキーが既にデフォルトで他のコマンドに割り当てられているため(例:Ctrl+C=コピー)、Ctrl+Shift+○が良い。ちなみにQであればCtrl+Qはデフォルトコマンドがないので大丈夫。
○マクロをあてがうのは、(1)使用頻度(2)ショートカットの難易度で選ぶと良い。たとえばセルを塗りつぶすというコマンドは、使用頻度は高い一方で、ショートカットはAlt→H→H→十字キーで好きな色という4ステップもあり大変。
自分のおすすめ「myマクロ」は以下。
・値だけ貼り付け、罫線以外全部貼り付け
→Ctrl+V→書式崩壊→orzというミスが嫌いな全ての人にお勧め。ただし、これはショートカットがそれほど難しくない(Alt→E→S→値ならV、罫線以外全部ならX)ので、わざわざマクロを作る必要はないかもしれない。また、記録したマクロには「C14を選択」「選択箇所をコピー」「D15を選択」「選択箇所に値貼り付け」という4つのコマンドが含まれるが、最初の3つはVBA編集画面で削除が必要。
・塗りつぶし
→貼り付け同様、「C14を選択」というコマンドを削除する必要がある。
→黄色と水色とか、2色くらい用意しておくと「超強調」「そこそこ強調」等使い分けができる。
・太枠で囲む
・罫線を消す、塗りつぶしをやめる
→自分は二つまとめて一つのコマンドにしている。上記塗りつぶしとこの塗りつぶし解除コマンドがあれば、エクセルの表の最終プロセスとしての体裁調整の時間が結構節約できる。
・今日の日付を表示する
→Today()と入れてもいいのだが、ちょっとだけ楽。
3.
Amazonでとある教科書のKindleバージョンを買ったら、嬉しいことに、教科書の体裁をそのまま再現したバージョンであった件。これまでKindleデータはAmazonが勝手に彼ら独自の拡大縮小可能な様式に変更した上で配布されたいたのだが、少なくとも教科書についてはそのままの体裁の方がありがたいことが多い。ということで、買ってから気付いたが、ちょっと得した気分。
ビッディング終了
初日・・・Rumeltという有名らしいおっちゃんの戦略論の授業に300ptsほどビッドしたが、このラウンドでは満席にならなかったので1ptでも勝てた。。何やらサプライチェーンマネジメントという授業が最低落札価格1,250ptsとかなりヒートアップしている。。
2日目・・・ネゴシエーションのクラスに425ptビッド。この科目はこのラウンドで満席になり、最低落札価格が402ptsであった。もし400ptsにしていたら落としていたので、なんとなく25pts足してビッドした自分すごい。ちなみに初日にビッドした戦略論はこの第2ラウンドで満席になった。この日にビッドしていたら300ptsでは獲れなかったので、敢えてネゴ→戦略論という順番ではなく戦略論→ネゴという順番にした自分に自己満足。
3日目・・・アントレ初級(?)みたいな名物授業に対して、持ちポイントから1ptだけ残した全て、599ptsでビッド。しかし、このラウンドでは満席にならなかったので、すなわち1ptでも勝てた試合に大量のptsを突っ込んでしまった。
4日目・・・もう1ptしか残っていないが、一応興味のある不動産の授業にその1ptをビッド。最低落札価格100ptとあっけなく敗北しウェイトリスト入り。
なので、最終学期は、不動産がどうなるか様子を見つつ、とりあえず戦略論/ネゴシエーション/アントレ初級に顔を出す予定。単位的には1科目で卒業できてしまうという状況が自分の気を緩くしてしまっているのがイマイチ。どうせなら「3科目取らないと卒業できないぞ」みたいな緊張感を保っておくのも良かったかもしれない。
それにしても、あと数クオーターあれば取りたかったという授業があまりに多く後ろ髪をひかれまくり。
・不動産関連、興味はあるのに、このままだと取れずじまいで終わりそう。。
・オプションやリスク管理といった数理Fin系授業も取りたかった。
・マーケティング系の選択科目は結局全てスルーしてしまったが、後悔しないといいのだが
・テック系の何かも、ちょっと顔を出しておきたかったが、優先順位の都合上できなかったし、
・アントレ系もたくさんあるのに、このままだと初級を受けてアントレ的雰囲気を感じて終わってしまう。
・来る前には関心分野の一丁目一番地だった経済系の授業は結局殆ど取らないうち、興味すらなくなってしまった。。
逆に、後から振り返って、これは取らなくても良かったなぁという科目もいくつかある。人生、何でも思うようにはいかないというか、そもそも思う通りできたとしても実際には正着打を打つことすらできないということか。。あるいは、正着打を打てるときにはきっちり正着打を打てる人のことを勝ち組というのかもしれない。
などなど。あらためて、何かを選ぶということは何かをあきらめるということであるという人生の真理(?)のようなものを感じるなど。DQ5のビアンカとフローラ以来のアレ。
Wednesday, February 22, 2012
顔本プロスペクタス(6)
今回は「Management Discussion」. 各種論点について定性的な記述がなされている。
構成は
・Overview
・沿革
・ユーザー計数に関するトレンド
・業績に関連する要素
・業績分析(財務諸表について丁寧に説明がある・・・別稿へ)
・株式のバリュエーション
・マーケットリスク
となっている。
■Overview、沿革、ユーザー計数、業績に関するファクター
ミッションとか、右肩上がりの2004以来の歴史とか。ファクターについてはリスク要因のところで概ねカバーされているのと同じ。
■業績
売上高
・主要構成要素は広告収入。
・直接取引、及び代理店を通じた取引が混在。
・インプレッションベースの収入と、クリックベースの収入が契約により混在。
・課金プラットフォームも整備されており、目下Zyngaのゲーム
(ウェブ広告業界プチ勉強)
・インプレッション数:webページに当該広告が表示された回数。決定要因は(1)検索ワードとの関連付け、(2)予算あたり。たとえばGoogleで「ドライバー 飛ばない」と検索して、右側にナイキのドライバーの広告が出てきたとすると、ナイキはインプレッション数が1追加となり、もし契約がインプレッション数ベースであればナイキにとって追加的な費用が発生する。
・クリック数:表示された広告のうち、実際に閲覧者によりクリックがなされた数。クリック「率」はクリック数をインプレッション数で割ることで得られる。
費用
・売上関連費用:設備関連の費用(含む償却費)及び関連人件費
・マーケティング関連費用:プロモーション費用および関連人件費。(FBのプロモーションって何だ?)
・R&D費用:R&Dは全て費用処理。及び関連人件費
・一般管理費:幹部やスタッフの人件費、コンサルや法律事務所へのフィー等。
→殆ど人件費じゃないか...?
Share-based compensation
・これまでに従業員や幹部などに対して制限株(RSU)での支払いをしたことがある。
←壁画を書いた画家の人が話題になったような
・RSUは、「支給後4年」というService Conditionか、「流動化イベントが生じたとき」というLiquidation Conditionで普通株(B株)に転換することができるようになる。
・これまで実際の株式支給実績はなかったが、今回のIPOで株式支給(受給者にとっては、待ちに待っての所得ゲット)が発生する予定。
・ついては、2011/12からRSUの費用計上を始めた(???→ついてはというか、原則、RSU支給時点で費用計上しないといけないのじゃないか...?途中で「今から計上始めます」というrationaleはなんだろ。。
・2011以降に支給するRSUは、IPOで強制的に転換できるような条項がついておらず別枠になるとのこと。
※ストックオプション(SO)とRSU
・転換価格・・・SOは特定の価格で株式を「購入する」権利であり、転換価格は例えば「支給時点での理論価値」とか、少なくともゼロではない。RSUは「株式を支給する」という概念なので、転換価格はゼロということになり、受給者の払いは一切ない。SOは転換価格を超えるように従業員に頑張るインセンティブが強まるが、RSUは、会社が倒産でもしない限り、受給者はなにがしかの価値は獲得することができる。
・vesting・・・SOはオプションであり、行使してナンボ。他方、RSUは株式の支給なので、好むと好まざるにかわらず所定の期日になったら株式が支給される。
・得てしてSOの方が支給株数が多くなる。これは、SOが「RSUよりストライクが高いオプション」と考えるとわかる。SOの方がオプションとして条件が悪いので、仮に$10Kだけ報酬を与えたいとしたら、RSUなら100個上げればいいところをSOなら200個与えないと帳尻が合わなくなる。それゆえ、RSUの方が希薄化効果が薄くなる。
・会計処理・・・vesting前においては、RSUも「K=0のコール」とみなしSOと同様に計算する。すなわち(1)BS式等により公正価値を求めて(2)vesting期間で按分する。キャッシュアウトが伴わないので、仕訳は
DR:費用 XXX CR: APIC XXX
となる。ただしFBはこれとは違う「Accelerated Method」を使っているとのことなので、詳細未確認だが、上記のような毎年均一の費用処理ではなく前半にどっかり負担が来るような計上方法をしている模様。
・繰延税金負債・・・会計上では、SOもRSUも、給付したその年から費用計上が始まる(re: 給付時点での公正価値/権利確定までの年数)。他方、税務上は、権利行使により実際に株式が支給される時点において初めて課税がなされる。それゆえ、SOやRSUの支給を行うと、会計上の費用は計上するが損金計上はできないという一時差異の状況が発生するので、繰延税金負債の計上をすることになるし、繰延前の実効税率が高くなる。FBはRSUを支給しているので、これは実効税率を上げる効果がある。
Share based compensationについて勉強しているうちに疲れてしまったので、別稿で整理する。
Tuesday, February 21, 2012
上級会計メモ(8) 転換社債
前回記事(→リンク)では「CBとは何か」「CBの一般的な会計処理」「Cocosとは何か」について触れたが、今回は「LYONsとは何か」「Anti-Dilutive」「CBのバリュエーション」について触れる。
■ LYONs (Liquid Yield Option Notes)
メリルリンチにより開発された、プレーンバニラではないヤヤコシ系CBの一種。どのくらいややこしいかと言うと
・発行体から見てコーラブル(定められた時点で返済・消却できちゃう)
・投資家から見てプッタブル(決められた日時に、決められた価格で発行体に買い戻し請求できちゃう)
・ゼロクーポン(その引き換えに大幅な割引債となるが、そのおかげで定期的な利息のキャッシュアウトがない)
・投資家にとってコンバーティブル(CB同様、株式に転換できる)
と、およそ想像のつく条項が全てついている「全部乗せ」の様相。ぱっとググって見た論文がLYONsをどのように評価しているか見たら、「一つ一つは目新しいわけではない。目新しくない条項を組み合わせたことがイノベーションなのだ」とのことで、なんだかアントレプレナーシップ系の授業で使えそうなイノベーションであるようだ。単にゼロクーポンCBであるだけならまだバリュエーションできそうだが、ちょっと今の自分には「LYONsのバリュエーション方法」をぱっと説明できるだけの金融力()はなさそう。。
利点は色々挙げられて
・発行体にとっては、クーポン払いがいらない点(そのくせ費用化=節税はできる)、コーラブルである点、転換条項のおかげで(当面の)YTMを低く抑えられる点などメリットがある
・投資家にとっては、プットや転換等選択肢が多く与えられているので、利益を得られる見込みが高い
※発行を手伝い投資銀行にとっては、ヤヤコシ証券なので、手数料をボれる
等挙げられる。まあ希薄化とか高い手数料とか「てか理解できるのあなた?」とか流動性とか色々懸念はあるが、理屈の上では悪くない。
しかも会計上はあくまでCBというか社債として取り扱うことができるので、転換が起こるまではごく普通の割引債として記帳がなされる。もし分離型(Instrument C)であれば前回記事で書いた通りオプション部分の評価もしないといけないのだが、そうでなければ「社債です」と単純に調達額を記帳してその後毎年金利法でアキュムすればいいだけ。簡単この上なし。
(まあでも、「そんなものがあります」レベルでは理解したが、これを顧客に提案するにはあと3ステップくらい実務レベルでの修行が必要だな...)
■ Anti-dilution
まず、自分が誤解していたのでメモしておくと、Anti-dilutionとは「希薄化に対する対立」みたいなノリではなく、「希薄化ではない」=希薄化しない≒一株当たり価値が増加する、くらいの意味合い。Accretiveくらいに考えておけばよい。
CBの文脈で出てくる「Anti-dilution」は2つあって、ひとつは投資家が将来の事後的投資家による追加出資による自分の持ち分の希薄化を防ぐための各種条項。これはまさに「アンチ」という雰囲気。今回整理するのは、「転換の結果、株数も増えるが、利払いがもっと減るのでEPSが逆に増加する」という意味でのAnti-dilution.
希薄化するかどうか判定するための指標のことをConversion Ratioというそうで(債券先物のアレと混同するな..)、「減少する利払(税引後)/増加する株数」で定義される。
例
現状のEPSが$10であったとする。で、CBの転換により株式が10株増えて、税引後利払が$50減ったとすると、Conversion Ratioは$5.ちゃんと希薄化前の利益と株数を使って計算すれば検証できるが、Conversion Ratioが元のEPSより小さいということは、EPSが希薄化するということに同義である。なので、会計上、この場合はEPSの他にDiluted EPSというものを計算・開示しなくてはならない。
次の例として、EPSが$10で、転換によって増える株式が10株、減る税引き後利払いが$150であったときを考える。このときConversion Ratioは$15で元々のEPSより大きい。このとき、転換によりEPSは改善する(Accrettion, あるいはAnti-dilution)。すなわち、転換社債を発行している会社は、Conversion Ratio>EPSという状態を実現できれば、Anti-dilutiveであると言うことができ、会計ルール上Diluted EPSを計算しなくてよい
(増加したEPSを計上するのではなく、もともとのEPS、すなわち$10を計上する)
ボトムラインとしては、(1)アンチと言うが「増価」くらいに理解しておく方がしっくりくる (2)CBを転換したからといってEPSが希薄化するとは限らないというあたりだろうか。
■ バリュエーション(やや自信ないので未定稿)
会計的には「元本とオプション部分が分離設計されていない限り債券として扱ってOK」というCBであるが、理屈の上では2つくらいのアプローチが考えられる。
(1) Compを使う
これはCBを評価するというより、CBに含まれているオプションの価値を抽出する作業。パーで流通しているCBがあった場合、同程度のクレジットのSBのYTMでパー価格を割り引いてやることでおそらく93とか94.5といった数字が出てくる。これがこのCBの「債券部分のImplied Value」と考えることができて、従って100とこの93の差である7が「CBのImplied Call Value」と言うことができる。
このアプローチでは、我々は現在の株価、残存価値、リスクフリーレートを知っているので、BS式で逆算してやることによりImplied Volがわかる(だから何だ...?)
(2) ペイオフを作り、ガチンコ勝負
CBのペイオフは2回ほど屈折するポキポキ直線で表現できる。そして、これは、原資産とコールで再現できる。すなわち、
(i) 企業価値がCBの額面以下のときは、ペイオフ=企業価値 (※先同順位債権がないという前提)
(ii) 企業価値がCB額面を超えてしばらくは、ペイオフ=額面価値
(iii) 企業価値がY=額面 とY=転換後のCB投資家の株式シェア×企業価値 の交点より大きくなったとき、ペイオフ=CB投資家の転換後の持分×企業価値
となる。
このペイオフは、通常原資産-額面価格をストライクとするコール+(転換後CBシェア)×(交点の価値をストライクとするコール)で再現することができる。なので、各パラメータを入力してやれば、このSynthetic Portfolioの価値が計算できる、、、はず。試してないから実際のところわからんけど。。
また、逆に、CBやConvertible Preferred Stockの額面および転換の諸条件がわかっていれば、逆算で投資家が織り込んでいる企業のPre-money(あるいはPost-money)価値も計算できる。
※まあしかしあれだな、この手のお勉強メモは、後で振り返る限り、MBA版中二病の発露なのかもしれんな、なんて思ったり。。
Monday, February 20, 2012
顔本プロスペクタス(5)
今回は「Capitalization」「Dilution」だけさらっと。
※
・まず、いくつかの未確定情報が空欄となっており、全体的にスカスカで読みづらい。
・ここでは、具体的な数字はすっとばし、抽象的なレベルで、FBがどんな資本調達をしてきたのかだけ整理する。
1. Class A common(A株)
今回IPOで売りにでる株式。1株1議決権しかないので、議決権という意味ではB株の10分の1の価値。
バリュエーション的にも単純にB株の10分の1でいいのかな?と思うが、B株の株主が株式を手放したいときは、まずB株をA株に転換してそのA株を売るという手順になるのだが、その時の転換比率は1:1とのこと。うーん、なんだか頭の中で計算が合わないぞ...
2. Class B common(B株)
基本的にこれまで出回っていた株式はこれということになりそう。また、後述するConvertible PreferredはIPOというLiquidation Eventにより強制的にこのB株に転換されるとのこと。
3. Convertible Preferred(転換条項付優先株、でいいのかな)
これはベンチャーファイナンスにおいて典型的な調達手法のひとつであるとのこと。「アップサイドは頂くが、ダウンサイドも担保させてもらうぜ」というVCの要請を満たすためのハイブリッド。
(以下、Preferredについての整理)
まず、Convertibleでない普通のPreferred Stockだが、
・企業の価値が投資元本未満のときは、このPFは殆ど負債と同義になる。流動化イベントの際には株式に優先して資金回収することができるし、往々にしてRedemption Right(返金請求権)がついているので流動化イベントを待たずして回収することもできないことはない。
・企業の価値が投資元本を超えたときには、契約内容によってアップサイドがある場合とない場合にわかれる。
もしPFが「Participating」あるいは参加型という仕組みである場合は、普通株主と同じように「負債返済を終えた残りの残余価値を山分けする権利」が得られるので、アップサイドが存在すると言うことになる。ただし、そのアップサイドは、希薄化後出資比率に基づく。
・なので、Non-convertible Preferredのペイオフ・ダイヤグラムは、もしパリパス優先株投資家がいなければ
Y = X [X < 元本F]
Y-F = a (X-F) [X > F; aは希薄化後出資比率]
という感じになる。
次に、これがConvertibleになるとき。この場合、参加型PFのようにただちに残余価値を山分けできるわけではなく、転換して初めて株主として残余価値を山分けできることになる。
この場合のペイオフは、
Y = min {F, X} [転換前]
Y = aX [転換後]
となる。投資家は、この2つの交点を計算して、より儲かる方を選ぶので、交点より企業価値が高い場合は転換して、そうでない場合は優先株のまま元本(あるいはそれ以下)を回収することになる。
※プロラタ=パリパスの他のPFがある場合は、ペイオフの傾きが1から「あなたの投資額のシェア」、例えば70%とかに変わる。
※オプションプライシングモデルを使えば、implied pre-money valuationが計算できる。この辺は自信がないというか、まさに来週のVC/PEで取り扱うネタなので、その授業でアハ体験できればなにかここに追記するかも...
で、FBはIPOまでにこのConv. Pfdを使って資金調達しているのだが、IPOという流動化イベントによりこの証券は強制的に普通株(B株)に転換されることになる。IPO後のバランスシートには優先株がなくなり、A株、B株、そして転換に伴うAPID(資本剰余金)だけが計上されることになる。
4. その他
調達というか、資本性支払として、ザック氏に対してストックオプションを支給、従業員に対して制限株(RSUs)を支給しており、それらはそれぞれのルールに基づきIPOに伴い株式に化け、さらには彼らの利益に化ける。
5. 希薄化
ここで言われている希薄化とは、初期投資家とIPO投資家の投資時株価が異なることからBPSが希薄化しまっせということ。
このほかにも、Conv. Pfdが強制的にB株になることによる希薄化や、ストックオプション・RSUの転換も希薄化要素となり、S-1ではプロフォーマとして「もしこういった証券が株式に化けたら」という想定を示してくれている。
○その他
・もちろん他に負債もあるが、ここでは純資産の構成要素だけ拾った。
・あと内部留保ももちろんある。
・自社株買いはやったことがないことから、金庫株は計上されていない。グルーポンは上場前に経営陣の株式を自社株買いするというかなりグレーなことをしたそうで、結構な金庫株が計上されているとのこと。つまり、金庫株が計上されていないのは、今回のIPOがクリーンなものであるひとつの指標となりうる。
・細かい株数や、支配構造は別途。章も別だし、何より眠いので...
The start of the last bidding
今日から、最終学期となる2年目の春学期の選択科目のビッディングが始まった。今日はRumeltという大物らしい人物による戦略論の授業を無事に競り落とし。サプライチェーンマネジメントという科目がなぜか大人気でビッディングポイントがインフレしていたが、皆そんなにSCMやりたいものなのかしら。明日はNegotiationにビッドして、基本的にはこの2つで履修は終わりにしたいのだが、念のため3日目にはアントレか不動産あたりにビッドする予定。
いつもこのビッディングの時期になると、「自分は何を学びたいのか」「自分は何を学ぶべきなのか、足りないスキルは何か」といった観点で自分を見つめ直しつつシラバスとニラメッコするのだが、そんなことをしている中、ふと気が付いたことについてメモ。
最近、自分のメンタリティが「勉強すれば対応できるが、勉強してないことには対応できない」みたいなヘナチョコ方面にちょっと偏ってしまっていたかもしれない。アントレを履修しておかないと将来ベンチャー関連の仕事うまくできないんじゃないか...不動産勉強しておかないと将来不動産関連の仕事うまくできないんじゃないか...云々。やれアントレ、不動産、数理ファイナンス、マーケティング、オペレーション、テック、ソフトスキル...
でも、これってなんというか、2つの意味で間違っているような気がしてきた。
第一に、学校で履修したなら対処できるという発想はいくらなんでも学校を過大評価しすぎというものであろう。助けになることはあろうが、学校を出たら即プロになれるということは全くもってないはず。つい抱きがちな「この分野は学校で学んだから大丈夫」という発想は、仕事に戻ってからトラップのように自分を苦しめることになるかもしれない。あくまで学校は学校。実務における無数の「practical issues」を謙虚に理解しようと努めたり、理論と現実をうまく突き合わせたりするにあたり、「学校でやったから大丈夫」という発想を過剰にもってはまずいだろうなぁとふと感じた。
第二に、学校で履修しなかったことには対処できないという発想はしょぼすぎる。人間、知らないことやできないことにどう立ち向かうかが勝負であり、学校の授業はその「真の勝負」以外のところでモタモタすることを減らしてくれる潤滑油程度の存在ではないか。学校でやってないことは無理というスタンスでは、自分の世界の広がりがあまりに小さくなってしまうではないか。つい昨日、MBA受験時代のとある「基礎重視」というスタンスの学校に対するエッセイをふと読み返したのだが、その準備メモに「小手先のテクニックではなく、どのようなことにも挑戦していけるようなファンダメンタルな基礎力こそ自分の求めるもの」みたいなことが書いてあった。この感覚、MBAに来て1年が経ち、もしかすると忘れていたかもしれない。確かに応用的な知識は面白い。だが、おそらくMBAから実務に戻ってもっと本質的に役立つのは、そういう応用的な話をスムーズに咀嚼できるだけの各分野に対する基礎知識なのではないだろうか。
そういう意味で、果たして自分は(少なくとも経営の観点で)基礎体力をつけることができたのだろうか?
あるいは、仮にその基礎体力が不十分でも、今後、わからないことにもぶつかっていけるだけの「やればできるだろ」という感覚くらいは身に着けることができたのだろうか?
あるいは、「MBAは取ったけれど...」と複雑な思いを抱えたまま今後の人生に折り合いをつけていくのだろうか?
戻ってからの数年で、自分の2年間がどうであったのか、否が応でも明らかになっていくことだろう。でも、現時点で思うこととしては、「やったことはできる、やってないことはできない」だけの発想はやめないとな、「やってないことにも飛び込めるだけの『取っ掛かり』『基礎体力』こそが大事なんじゃないか」ということ。
と、すと思い出したので書き記しておく。
Sunday, February 19, 2012
最近のお買い上げ・家族近況
○お買い上げ
Timbuk2のメッセンジャー。
入学以来ずっと欲しいもののショートリストに居続けたこのかばんを、ついに買ってしまった。これまで会社HPでオーダーメイドのシミュレーションをした回数は100回を下るまい。フランス国旗みたいな3色トーンにしてみたり、真っ黄色にしてみたり、裏地をピンクだか赤にしてみたり...サイズもSとMでずいぶん迷ったし、ラップトップ仕様(ダメージに強そうなインナーが中に入る、とかだったっけかな)にするかどうかでも随分と迷った...
でもついに買ってしまった。ThinkpadのXシリーズが入る(Tシリーズは入らない)Sサイズ。色は、「クールビズ時期なら会社にも使えるかもな」って感じのダークグリーン一色。土壇場までカーキとか3色とかで悩んでいたが、他社メッセンジャーでもカーキあるいはダークグリーンのメッセンジャーに格好良いのが多い印象があったのでこの色にした。
オーダーの割に届くのが早い。一週間足らずでやってきた。クオリティにも今のところとても満足している。長さを2段階に調整できるバックル・これでもか!というくらいたくさんあるポケット類・ウェブシュミレーション画面の色と実際の色の一致性・等々。オプションで買った肩パッドはなくてもよかったなぁという気もするがorz、とても満足している。小さい割にキャパシティも優れていて、Thinkpad、iPad、両方の充電器、書類ちょいちょい、水筒、防寒用ウインドブレーカーくらいは余裕で収納できる。
ってことで非常に大満足。満足すぎて、「街歩き用にSSサイズも買っちゃおうかな...」などと画策している。
TUMIのブリーフケース。
もともとTUMIはひとつ持っていたのだが、当初「コンパクトなやつを」と思って買ったやつがコンパクト過ぎて荷物が全然入らなかったので(涙)、ちょっとだけ大きいやつを探していたところ。
で、今回、ちょっとアウトレットに行ったらいいのが「ここからさらに25%引き」とあったので、店を出たところでせっせとZapposとかeBayとかで「この価格ってナンボのもん?」というのを調べた上で、殆ど衝動買いのような感じでお買い上げ。
計画通り、ちょっとだけ幅(前のだとiPadくらいしか入らなかったが、新しいのならラップトップも入りそう:5cm→10cmといったサイズアップ?)が広がり、ポケットの数もちょっとだけ増えて。
これで帰国後のビジネスマンライフ()も順風満帆だ・・・しかし、今も日本ってTUMIはちゃんと「アリ」のままで居続けてくれているのかな。日本では「爆発的に流行ったものは、その同じ勢いでオワコン化する」という傾向があるので(例:エアマックス、ポールスミス、ポーター)、TUMI社様におかれましては引き続き「ほどほど」を目指して頂きたく。
○家族
2年目も後半に入り、最近は自分より妻の方が充実しているっぽい日々になっている。色々なところで友達が増えて、プレイデート(子供同士を公園とかで遊ばせつつ、みたいなアレ)とか遊びに行ったりお招きしたり。日本人が多いLAならではのメリットということなのかもしれないが、はたから見ていて楽しそうで何より。
自分も、ちょいちょい妻の人脈のご相伴というか、妻の友人の旦那とゴルフみたいなことをさせてもらっており、その恩恵にあずかっているところ。自分もここLAで色々な友人知人ができたが、不思議なことに(?)、この「妻の友人のダンナ」というカテゴリーに入る友人が一番気軽に話すことができている気がする。たまたまいい人に巡り合っているのか、妻の友人選びセンスがいいのか、そこまで密着しないから気安くできるのか、さてはて。
いずれにせよ、「もし自分が独身で留学していたらできていたネットワーク」や、「もし自分達夫婦に子供がいなかったらできていたであろうネットワーク」とは違う感じのネットワークが出来つつあり、いくら自分の留学・自分の転勤であっても、そこで営まれる人脈-ひいては生活全般-はとても深く家族に依存しているのだなぁということを最近感じている。東京で勤め人をしていると「イエ」と「シゴト」はかなり純然と分離される気がしているのだが、それとはまた一味違うライフスタイル。
※以前にも書いたが、NYC/ベイエリア/ボストン/LA/LDNあたりに留学するメリットは、学外のネットワークを比較的容易に作ることができることだと思う。逆に言えば、それ以外の学校に行けば、おそらく学内のネットワークをより濃いものにできるのではないだろうか。自分のような「誰とでもうまくできるわけではない」めんどくさいタイプの人間は、その点、都会の学校にちょっとしたメリット(あるいはデメリットとも言えるが)がある。
Wednesday, February 15, 2012
上級会計メモ(8) ~加速自社株買い~
・自社株買い。余った資金で、配当する代わりにマーケットに出回っている自社の株式を会社が買ってしまうという技。
・1億円の配当も、1億円の自社株買いも、現金が1億円減って株主資本も1億円減る。この意味で、株主全体で見れば、配当と自社株買いの経済的意味は同じ。個別の株主レベルでは、全員があまねく1円くらいずつもらうことになる配当と、自社株買いに応じた株主だけがキャッシュバックできる自社株買いで意味合いは変わってくるが。
・一歩踏み込むと、配当にかかる税率と株式売却益(売買差益)にかかる税率は多くの国で異なる。税前ベースでは「株主が総額1億円キャッシュバックを得る」という意味で同じ両者だが、税引後レベルでは得てして自社株買いの方が得なことが多い。
・配当は予め決められた回数(年一回とか、二回とか)しかできず、しかも配当額もなかなか柔軟には変更できない。他方、自社株買いは、その時々に応じて(もちろん各種必要手続はあるけど)タイミングや金額を調整できる。
・会計的には、流通株数が減る一方で利益は減らないので(余っているキャッシュを還元するだけなので、理屈上、利益は影響を受けない)、EPSが改善する。
・手続的には、まず取締役会が「1億株を上限に、向こう半年以内であれば自社株買いしてよし」みたいな決議を出す。それに基づきマーケットで取得を進めるのだが、結局何株買い戻せるのか、いくらになるのかといったことは終わってみるまで分からない。逆に言うと、自社株買いしようと思った瞬間に株価が急騰した日には、「やっぱやめた」と自社株買いをやめてしまってもあんまり問題はない(信任毀損という問題はありうるが)
■ 加速自社株買い(Accelerated Share Repurchase:ASR)
※強そうな名前...
・通常の自社株買いは、宣言しても、終わってみるまで買い戻せる株数がわからない。この不確実性は実に気持ち悪い。
・その気持ち悪さを無理矢理解消してくれるのがこのASR。
・ASRは間に投資銀行が挟まり、2ステップに分けて取引を行う。
・ステップ1:買い戻すと決めた株数すべてについて、仲介者たる投資銀行がマーケットから借りてそれを全て企業に売る。この時点の決済額は、株数×その日の時価となる。この時点で、企業は、買い戻したいと思っていた株式すべてをただちに入手できたことになる。
・ステップ2:帳尻合わせ。いまのところ投資銀行は株式を借りているので、別途マーケットから買い集めては返すという作業をしなければならない。ステップ1は一日でバシっと行われるが、ステップ2は9か月くらいでちびちびと進められるらしい。このとき、当たり前だが、買い集めるときの株価はステップ1のときの株価とズレる。もしステップ2における平均的な株価がステップ1での株価を上回るとき、生じる追加的なコストは発行体(企業)が投資銀行に支払う。
・例。ヨセミテ興業(?)が、どうしても即座に1億株の自社株買いをしたくなったとする。そこで投資銀行に1億株をかきあつめてもらい、その日の株価\100で1億株を買い付けた。支払総額は100億円。
その後、投資銀行は、借りた株を返すために、9か月かけてゆっくりと株式を買い集めた。平均株価は\130であったので、かかったコストは130億円。30億円余分にコストがかかったので、ヨセミテ興業は9か月後に追加で30億円を投資銀行に支払った。
※もちろんその要所要所で投資銀行は手数料を取っている。上記は手数料込み。
■ASRの論点
・ステップ1の時点で結構なリスクを取ることになる。ざっくり言うと、取得した株数×(今後9カ月の平均株価-今日の株価)だけの追加費用がステップ2で発生してしまう。普通の自社株買いであれば「株価が高くなっちゃってるから、やっぱやめようか」と立ち止まることができるが、ASRでやってしまうともう立ち止まれない。完全に「走り出したら止まらないぜ」状態。適当に先物とか使えばヘッジできるのかもわからんけど。
・その代わり、ステップ1の段階でほしかった株式は全株買戻しできるので、EPS圧縮は完全に達成される。
・しかし、少なくともUSGAAPでは、ステップ2で生じた差額支払を、EPS計算から控除しなければならないそうな。この差額はあくまで資本取引に関するもので損失ではないのだが、ステップ1の段階でEPSを過大申告したことに対する辻褄合わせみたいな意味合いなのだろうか...(??)
・あわせて株価連動債(Equity-linked Note)などを発行しておくと、自社株買いで調達した株式を安価に株価連動債の支給株式として使うことができたりするとのことだが、ちょっと理解が浅井...
顔本プロスペクタス(4)
主要なものはサマリーに出ていたので、目についたところだけ適当に。
・広告依存:直近3年の売上高に占める広告売上のシェアは98%→95%→85%とのこと
・競合:Mixiが入っててよかったですね(棒読み
・Zynga依存:直近において、売上の12%はZynga由来とのこと。そんなに皆FB上でゲームやってるのかしら?
・制限株転換時の税金:従業員が保有する制限株(RSU)、制限なしの普通株に転換する段階で、含み益が課税されてしまうそう。その税負担(税率45%)は、FB社が源泉徴収の形で支払う予定とのことで、FB社にとっては結構なキャッシュアウトが見込まれている。それまでに株式売出で資金を確保するとのことだが、実際のところどうやって調達することになるか等は不確実であるとのこと。
・自前でデータセンターを持つリスク:自前にしたのは直近2011年からとのこと。意外と最近の話だ...
・組織拡大でしくじるリスク:割とベンチャー周りで聞く論点だが、ちゃんとカバーされている。
・買収でしくじるリスク:買収の目的がいろいろ列挙されているが、最初に挙がっているのが人材獲得であるのがちょっとだけ面白い。買収については、曰く、ちっこい買収はこれまで経験しているが、同規模あるいはそれ以上の会社を買収するという経験はないので云々とのこと。
・ロックアップ期間後に株式が一気に流通して値崩れするかもしれませんよとのこと。リスクではあるが、殆どストリー通りなので一応言っておくというレベルの話だろうか。従業員はともかく、経営者はシグナリング的に売りづらそうだが何か抑止策のようなものはあるのだろうか。
・IPOでの調達資金、使い道は不確実ですよとのこと...
・配当は当分しませんよ、ってこれはリスク要因なのか...?
・投資直後の希薄化:これもリスクっちゅうか確定した事実だと思うのだが、
例えば、既存株主が$1で株式を1株入手していたとして、仮にあなたが$100で株式を1株購入したとき、一株当たり株式の簿価は($1+$100)/2=$50.5と、$100が一瞬でそれ未満の金額になるけど驚かないでくださいねという話。あくまで簿価レベルでの話なので実質的にはたいした話ではない。
■ Special note regarding Forward-looking Statements
(うまい訳が出てこなかった...)目論見書なので色々と将来について予想のようなことを書いているけど、盲信しないでねという断り。
■ ユーザー計数について
月間アクティブユーザー数(MAU)と日次アクティブユーザー数(DAU)が主要な指標だが、ちょっとだけ留意が必要とのこと。具体的には
・複数アカウントを持っている奴がいるかもしれない
・携帯電話の技術的仕様により、使ってないのにアクティブであるとカウントされてしまっている奴がいるかも
・IPアドレスで位置情報等を集計しているが、信憑性は完ぺきではない
とのこと。まあ何よりかにより、自社発表値ってところで激しく眉唾しないといかんように思うが。
■ IPO調達資金の使い道
・主目的はClass A株に流通性をもたせることであり、それにより
(1) 将来の買収等のための機動的なエクイティファイナンスの道筋を立てること
(2) 既存株主の秩序だった保有株売却
あたりとのこと。
・運転資金やら一般事業資金として使おうと思っているが、とりたてて明確な使途があるわけではないとのこと...
・一応、(1)制限株転換時の源泉徴収 (2)将来ありうべし買収 は言及されている。
・とりあえずは金融商品でも勝っておく予定とのこと...俗にいう「投資家が自分でやるからいいよ」ってやつだな...
・なんだかなぁと思い他社(LinkedIn、Zynga)のS-1を併せて見てみたが、使い道の頁の記述は殆ど同じであった。事業資金、買収するかも、特段まだ決まってません云々。てことは、S-1には概ねそんな感じで書いておくと言うことなのだろう、実際のところ金の使い道が固まっているかいないかはさておき。
■ 配当
当分しません。以上(キリッ
まあそうですねって感じ。前例たるLNKDあたりのをコピペしてても驚かないレベルで文言がそっくり。
○ 今日眺めたあたりは、機械的に公的文書用のプロトコルに則っただけといった感じで、行間の裏からにじみ出るようなジューシーな情報のようなものはとりたてて見つけることができなかったような。
Tuesday, February 14, 2012
人のストーリーに乗る
数学やファイナンスでも、なにかの打ち合わせでもいい。わざわざ教科書の作者やら打ち合わせでの説明者やらが、当方によかれと思いロジックを構築し、少なくともその人にとってはわかりやすいロジックで説明してくれる。だが、自分は得てして、その人のロジックに素直に乗ることを本能的に良しとせず、自分なりに咀嚼しようとする傾向があることを感じている。
具体的には、頻繁に「これはこういう理解でいいですか」と自分の言葉に置換した上で念押しの質問をしたり、ノートやブログなどに頭の整理と称して得た情報を自分なりに再配置したりしているやつ。
いつこのような思考回路が自分にしみついたのかはよくわからない。おそらく過去の教育のたまものなのだろう。これは時には役に立つ。自分の頭で再構築することでようやくすっきりすることは少なくない。
しかし、世の中の現象の全てがそこまでややこしいわけではない。簡単な話であれば、おとなしく相手のロジック通りに理解しようとしても理解できてしまうだろう。そんなときは、一々自分の頭で再構築しようとせず、するっと相手の言ったことを相手の言った通りに理解すべきなのではないか。
自分なりに再構築するのは時間もかかるし、相手にしてみれば「自分の説明を、微妙に曲解している」みたいに感じられるかもしれない。自分の言葉に換言するとどうしてもニュアンスレベルで元の発言とは差異が出てしまう。発言主にしてみれば、わざわざ自分が考え抜いた上で使った言葉を勝手に換言とか言いつつゆがめられたらたまったものではないと思っても仕方がないのかもしれない。自分の経験に照らすと、「それってこういうことですよね」と聞かれて、ニュアンスレベルまで含めて「そうそう」と思えることって案外少ない。実際のところは「うーん、ちょっと違うけど、まあ大体合ってる」という妥協の結果「そうそう」と言っていることが多い。この「再構築→換言→念押し」みたいな一連のやり取り、ヤヤコシイことをきっちり理解するには有益だが、なくてもいいならないにこしたことはないのではないか...というのが問題意識。そして自分は必要以上に再構築しようとする傾向があるなぁというのが問題。
なんというか、マニュアルに自分で再構築しながら理解しようとする態度も全否定されるべきでもないが、状況によってはもっとオートマチックに相手の話を相手が話す通りにすっと理解しようとする態度のようなものが自分にはもう少しあってもいいのかな、とふと感じている。それとも、相手の話を相手が話した通りに理解するのも、それはそれでハイレベルなスキルで、自分はその能力が十分でないという話なのかもしれないが。
Monday, February 13, 2012
顔本プロスペクタス(3)
構成としては、会社情報→今回のIPOに関する情報→財務情報と言う順番でごくごく基本的な情報が列挙されている。自分のように「斜め読みだけして知った顔で語りたい人」にはうってつけの章である。
■冒頭
・ミッションから始まっているのがいい。「世界をよりオープンでつながった場所にしたい」とのことで、これどこのDocomo、ってちょっとだけ妄想。
・その後、主要素ごとにキーセンテンスが並ぶ。ユーザー、App開発者、広告主に対する考え方。
・で、主要な数字(アクティブユーザー数や”Like”の数)など。はいはいすごいすごい。。
■ユーザーにとっての価値をさらに高めるために
・Connetct, Discover and learn, Express, Control what you share, Across the web, Movileといったキーワード。
■web世界をよりソーシャルなもの、パーソナライズされたものにするために
・実名主義、洗練されたソーシャルグラフのマッピング技術、ソーシャル情報の海で効率的に情報収集するための情報配分といったコンセプトが掲げられている。
・個人的には、情報の配列(Distribution)というのは、ちょっと”余計なお世話だ”と思ってしまうのだが。。
■開発者にとってのFB
・無数のFBユーザーと瞬時に繋がることができるようなプラットフォーム(API)を用意していることや、課金システムの準備など。
■広告主・マーケターにとってのFB
・800Mという巨大なリーチ、よりピンポイントに広告を打てる有効性、「口コミ」の有効性など。
■FBのビジネスマーケット
・広告マーケットと、課金ビジネスマーケットという区分。
・広告マーケットについては、挙げられている数字が「世界の広告総市場」であるあたりにFBらしさというかポテンシャルがあるような雰囲気を匂わせる。
(世界トータル$588B。$1Tくらいあるかと思ったがそんなもんか)
(結局のところ、古い広告市場がどの程度FBにパイを譲るのだろうか?ここが今一つ確信を得るには至っていないのだが。だって少なくとも自分はGmailやFBの広告など全然見ないもの。アート性もないし)
・課金ビジネスについては、市場は$7とのこと。
(広告の$588と比べると、規模では全然これからといったところだが、FBのビジネスに絞ればおそらくこちらのマーケットに対する重要度は同程度に大きいのではないだろうか)
■戦略
・ユーザーベースの拡大
(いわゆるプラットフォームビジネスなので、ファミコンの本体やプリンタとインクカートリッジと同じ理屈)
・よりのめりこんでもらうようなプロダクト開発
(概念は理解できるが、各論がTickerとかTimelineとか、今一つしょぼい。もう革新的な改善余地は残されておらず、タイムライン化のような「余計なお世話的マイナーチェンジ」が続くのだろうか...)
・ユーザーに「ぐっと来る」経験を与える(そりゃそうだ)
・ハマるモバイル環境(そりゃそうだ)
・開発者が素晴らしいプロダクトを作ってくれるような環境整備(そりゃそうだ)
・広告プロダクトの改善(そりゃそうだ)
→全体的に、教科書通り、王道そのまんまという記述。まあ公的書類なのでそうなるのだろうが、なんというか、海原雄山がトマトをそのまま出して「これが至高のサラダです」と言い切ったときのような「澄み切った無駄の無さ」のようなものを感じる。
■リスク要因
・ユーザー増加鈍化(日本でのややラグを持っての普及を見ると、これは心配なさそう)
・ユーザー離れ、飽き(米国にいると、これはかなり深刻に感じる。)
・モバイルでは、今のところ広告を表示していないことから、モバイルビジネスの拡大はある意味リスク(!!)
・モバイルビジネスにおける通信事業者等への依存。たとえば「AT&T Sucks!」はFBには制御できない。
・APIのマネタイゼーションが果たして構想通りいくかどうか。
・きわめて競争的な市場
・情報の取扱のやり方次第で、自社のれぴゅテーションに傷がついてしまうかも。
・リーガルリスク。
・キーパーソンリスク。
・RSU(制限株)の源泉徴収:IPO後半年後に普通株に転換される際に、RSUを保有する従業員に課税所得が生じるが、その課税額はFBが源泉徴収でIRSに支払わないといけない。すなわち、RSUはFBにとって結構な額のキャッシュアウトの種。
→多くはどの会社にも使えそうなオハナシだが、携帯ビジネスの未発達とRSU税務については非常に興味深いので本章でじっくり見てみたい。
■残り
・企業情報、上場概要、財務概要があるが、それぞれ本章で見た方がよかったり未確定情報が多かったりするので割愛(眠くなったorz)
顔本プロスペクタス(2)
1. 要旨(ここだけで終わりにしてもいいかもな。。。)
2. リスク要因(戦略の勉強にいいかも)
3. 展望に関する注意(挨拶みたいなものか?)
4. 業界データ、及びユーザー計数(業界って、何業界だろ)
5. 集める金の使い道(てか何に使うの?サーバーなんてそんなに金食わないだろ。M&A?)
6. 配当政策(当分配当しませんってのを予想)
7. 資本政策(理解に苦しむヤヤコシ系ハイブリッドやストックオプションが並んでて頭痛がするんだろうなぁ)
8. 希薄化(いつになったら希薄化について体感レベルで理解できるようになるかなぁ)
9. 連結財務データ抜粋(見たるで~!)
10. 経営者による業況の分析(ここを読めばドヤ顔でFBの経営について語れるようになろうかな...)
11. マーク・ザッカーバーグからの手紙(報道やブログでは、いくつか重要なメッセージがここに入っていたようだ)
12. 事業(ユーザー集め、開発者、広告、モバイル、M&Aといったところ?)
13. 経営者(すげぇんだろうなぁ、ここだけで飯が三杯食えそうだなぁ)
14. 幹部に対する報酬(流行りの、節税のための$1とか?給料の殆どが株式交付とか?)
15. 関係者間取引(ノーイメージ)
16. 株主(まあ創業者だろ、あとはVCがどんな感じで食い込んでいるんだろ?)
17. 資本についての説明(上記の資本政策とは何が違うんだ?)
18. 将来の売り出し対象の株式
19. 非米国株主に関する税務上の注意
20. 引受(GS残念でした)
21. 法務(自分にはちんぷんかんぷんの「おことわり」が列挙されているのかな)
22. 専門家(会計士の意見書みたいなのかな?)
23. 追加的情報の入手方法
24. 財務諸表へのインデックス
よし、これでわかった気分になったぞ(違
顔本プロスペクタス(1)
■表紙
・サッカーのポジション図みたいだ。フォワードに「Securities and Exchange Commission」とか「S-1」とか「Facebook, Inc.」とか題字が並び、MFやDFとしてに登記州・住所・IRSのIDなどが並んでいる。前者のフォントサイズが24ptくらい、後者が10ptくらいなので、さながら「前線がC・ロナウドとメッシ、そこから後ろはJリーグ」みたいなバランス感。
■ページii
・調達金額等の情報がごく簡潔に掲載されている。調達は$5B。5ビリオン。5千億円ですかそうですか...
・今回はクラスA普通株の公開と言う記載。イマドキのベンチャーそのもの(日本での応用可能性如何?)
・1株あたりのパーバリューは$0.0000006と記載されているが、この数字って意味あるんだっけ?
■ページiii
・上場の概要が、Facebookのロゴとあわせてデーンと掲載されている。
・注意すべきは、Class A株とClass B株があること、A株とB株の関係についての記載だろう。今回公開されるのはA株で、公開されないB株は1株あたり10個の議決権がある。そして任意にA株に転換できるオプションもついている。
・面白いのは、いくつかの情報が空欄のままであること。肝心の株価/発行株数に加え、なんとびっくり上場取引所についても空欄のままである。そういうものなのか...日本ではそもそも上場申請書類の提出先が取引所である(気がする)ので、上場先空欄なんてことはなかなか想像が及ばなかった。
・でも希望ティッカーはちゃんと「FB」と書いてある。
■ページiv
アンダーライター一覧。誇るべきトップレフト(同名の小説は面白かったなぁ)はモルスタ、おめでとうございます。GSはせっかく上場前にツバまでつけたのに残念。あるいは、あれでミソがついたのか?個人的には6番目の会社のAllen & CompanyがLAのブティックIBらしいので頑張ってほしい。
■ページv、vi
FBによる「これがポイント」的な画像が2つ。FBだから驚かないが、これが「これから上場しようとしているベンチャー企業」のものであることにはもっと驚いていいのかもしれない。
Sunday, February 12, 2012
上級会計メモ(7) ヘッジ会計、転換社債
・ヘッジ会計基準制定前:有価証券に準ずる。満期目的であると宣言するだけで含み損益を隠せた。
・ヘッジ会計基準制定後:原則として時価評価。含み損益は、損益としてP/Lに計上。ただしヘッジ対象としてデリバティブを使っている場合は
(1) Fair Value Hedge(公正価値ヘッジ:ヘッジ対象の時価が一定となるようなヘッジ。例えば、固定利払いの負債をスワップで流動化すると、トータルでその負債の時価は常にパーとなる)のときはデリバティブの含み損益は損益としてP/Lに計上する。
←負債は簿価評価なのに、対応するスワップだけ時価評価してしまうと、負債とスワップの合計の金額は固定しない気がするのだが、、、
(2) Cash Flow Hedge(キャッシュフローヘッジ:ヘッジ対象のキャッシュフローが一定となるようなヘッジ。例えば、変動利払いの負債をスワップで固定化すると、トータルでその負債のキャッシュフローは一定金額に確定する)の場合は、デリバティブの含み損益は純資産額にスルーパスし、P/Lに損益を認識しない(在外子会社をカレント法で評価するのと同じノリ)
■ 転換社債の取扱
・経済的には、CB=(得てしてクーポンの低い)固定利付債+株式オプション。
・しかし、従前のUSGAAPでは、CBも転換が実際に起こるまではSB同様に扱うようなルールで、オプションの価値は無視されていた。この場合、たとえばゼロクーポンCBとかだと、転換が起こるまでは帳簿上ゼロ金利の負債がでーんと記帳されるだけになっていた。
・今では見直されて、ちゃんとオプション部分も別途Paid-in-capitalとして認識しないといけないことになっている。ただし、このルールが適用されるのは、Instrument Cと呼ばれる「転換時、債券部分はキャッシュで決済し、株価がストライクをうわまった部分は別途株式を交付することで決済する」という形態のもののみ。
※Instrument AあるいはBは、元本部分も株価がストライクを超過した部分もまとめてキャッシュあるいは株式交付により決済する。この場合、(たぶん分離できないっしょみたいな理屈で)下記のような分離会計は行われない(※※USGAAP. IFRSではどんな転換社債であっても問答無用で分離会計が適用される)
(例)$1,000、ストライク$20の3年CBをクーポン0%で発行したとき
なお、このときの、同程度のクレジットのパーSBのクーポンが6%だったとする。
⇒このCBの負債部分の価値は、クーポン0%でのキャッシュフローを「もしこいつがSBだったときのたられば利回り6%」で割ることで求められて、
NPV(6%、($0, $0, $1000)) = $840.
⇒このCBのオプション部分の価値は、パー価額との差(Plug)、すなわち
$1000-$840 =$160となる。
⇒1年目、クーポン払いはないが、$840を$1000にするためのアモチ部分を利払いとして認識しないとならず、
$840 x 6% = $50.38が利息として計上される。
■ 偶発転換社債:Cocos(Contingent Convertible)
・普通のCBは、債権者が転換する権利を持っているが、COCOSの場合債権者は転換権利をもっていない
・予め定めておいてイベントが発生したときに、強制的に債券が株式に転換されるような仕組み。
・デススパイラルの懸念:株価下落→強制的に株式に転換される→希薄化→ますます株価下落…というリスクがあり、「絶対トリガーひかないぞ」という気合(?)が必要
・現在の欧州金融危機の文脈上、COCOSをバーゼルルール上の資本性資金とみなすことが認められた。そのため、クレディスイス等がCOCOSを発行することでルールをクリアしようとしているとのこと(未確認)。
Saturday, February 11, 2012
ペブルビーチ
○ ある地点を超えると、気候が急に南カリフォルニア的な気候から北カリフォルニア的気候になった気がする。具体的には、ひんやり涼しい・断続的に小雨が降る・雲が多い等。LAにいると「のぺーっ」とした雲の無い乾いた晴天が延々と続くので、こういった北カリフォルニア的気候(実際のところは知らないけど)は日本っぽくてなんだか心に馴染む。日本で夏が終わり秋が来るときの、なんだか夜が長くなり皆半袖一丁から少しおしゃれになるあの時期のうきうき感を思い出した。まあでも、LAに戻ってきてからっと晴れているのを見ると、「ああやっぱり、どっちかと言うとこれだよな」と思わずにはいられなかったが。
○ ペブルビーチ近隣のモントレーはさびれた港町といった感じだったが、隣のカーメルがこざっぱりとした避暑地といった趣きで楽しかった。モントレーが下関、カーメルが軽井沢みたいな感じ?(ちなみに妻には、「自分が行ったことある数少ない街に無理矢理旅先の街を重ね合わせるな、カーメルはカーメルだし軽井沢は軽井沢だ」と言われるのだが、悲しい哉、つい例えたくなってしまう。まあオッサン化現象だろな)
○ 初日はカーメルの「Basil」というビストロで、2日目は友人おすすめのモントレーは「Passion Fish」にて夕食。どちらも客層が良い感じで、皆おしゃれ。LAで自分の生活圏ではなかなか見られない雰囲気で、むしろ自分達の服装がカジュアルすぎて場の雰囲気を壊してしまったかもしれない。白身魚やカニ等、とてもおしゃれに料理してもらい大満足。ワインも調子に乗って飲みすぎて、初日も2日目も勉強しようとか思っていたがホテルで速攻バタンキュー。
○ そしてペブルビーチ。近隣の大学に車を停めていざ現場へ。本大会「AT&T Pebble Beach National Pro&Am」は4日間通してプロアマ戦であり、リゾート内にある3つのゴルフ場で分散して予選が行われる。自分達が行った金曜日は、お目当てのタイガーはサブコースでのプレーだったので、迷った挙句タイガーはスルーしてメインコース(ペブルビーチゴルフリンクス)に行き、今田竜二などを観戦。
コースは、、、すごい、すごすぎる。これまで見たどのゴルフ場もペブルビーチと比べると見劣りしてしまう。特に海に面した4番~8番あたりは絶景中の絶景で、「グリーンをちょっとこぼすと即海な4番」とか「海に向かって打ち下ろす7番ホール」とか、見ているだけでしびれた。TV中継でおなじみの18番もTVのまんま(苦笑)。左サイドがずっと海なのだが、2オンしたければきっちり左サイドに球を運ぶ必要がある。以前石川遼がここで戦ったとき、「右に逃げてしまって反省しきり」みたいな記事があったのを覚えているが、自分達がついて回ったプロはきっちり左サイドに運んでいて感心。
しかしコース以上に驚いたのは、敷地内の邸宅群。あのペブルビーチを見下ろす豪邸の数々。一生で一回くらいここでゴルフすることはできるかもしれないが、この豪邸を手に入れるにはどうすればいいのか、全然想像がつかない。ゴルフ場内にあった不動産屋の広告を見たら、売れ残りのしょぼ物件で$3M~$5Mといった感じ。ふーんそうですか、自分には関係ないですね(棒って感じ。。
○今田竜二に勝手に自分を重ね合わせて萌えるなど。前回Northern Trust Openで観戦したときは、同組が池田雄太と石川遼で、なんというかだらだらと日本人3人でゴルフしていたのだが、今回は今田以外は皆アメリカ人。見ていると、高校から米国にいるので当然といえば当然なのだが、普通に英語を操っているようで、同伴競技者やアマチュアなどとごく自然に冗談をやりあったりしつつ、なんというか、「外国から来たお客様」度合いゼロで、日系アメリカ人であるかのごとく場に溶け込んでいた。見る角度によってはごく当たり前の風景なのだろうが、留学生として孤軍奮闘(日本人同級生がいるので全然孤軍でもないのだが、一応学内で日本人とつるまないよう多少配慮している)している自分に勝手ながら投影させて頂く。頑張れ今田、俺も頑張るぞなんて。嗚呼手前味噌。
なんにせよ、このUSツアーで何年も生き残っている彼は化け物だ。この日も何度も衝撃的に上手なパッティングやアプローチを見せてもらい、大変目が肥える思いであった(例:グリーン奥からの下り気味のアプローチ、ふり幅は小さいもののしっかり振り切り、ほんの30cmだけキャリーさせてトロトロと6m死んだ球を転がしてベタピンとか)。
○ で帰宅。帰りは海に近い101を通り、サンタバーバラにちょっと寄り道。天国に一番近い場所と聞いたことがあるが、その日差し、空、山と海のコントラスト、こじんまりとしてしゃれた雰囲気の街並みなどを見るとまあわからんでもないという感じ。サンタバーバラのちょっと北にながいビーチ沿いの道があるのだが、そこは本当に雰囲気が良く、思わず「クラプトンのLaylaの、歌が終わったあとのギターでのエピソード部分」を運転しながら熱唱。さんざん「おおレイラ」とかうめくように歌った後にやってくるあの「ヤクが効いて、心は天国、お花畑~(^^)」みたいなあの不思議なくらい明るいあのギターのメロディがとても合う雰囲気であった。自分も死んだらこんな感じの天国へと旅立ち、「あははっ、待てよ~」と裸足・白いギリシャ人みたいなガウンとかでかわいいあの子と追っかけっこしたり花摘みしたりしたいものだ。。。
Wednesday, February 8, 2012
てか戦略論って何だったっけ
そんな中で、戦略論のノートを読み返したら、度忘れしていたこともありなんだか面白かったので大きなところだけ書き起こしてみる。正直なところ、戦略論を履修し終えた現在においても、結局のところ戦略ってなんじゃらほいというクエスチョンマークが消えていないので、頭の整理のため。
■ 戦略論
1. 現状把握:業界分析、市場分析
2. 競争力のチェック:競争優位の分析、競争優位の維持、競争環境(ゲームのルール)を変える
3. 企業間の関わり合い:強者との戦い方、参入・競争激化の抑止、消耗戦が起きるとき及び対象方法、オークション理論、ゲーム理論、水平統合、垂直統合、多角化
→まず状況を把握して、その後自己を相対的に理解して、最終的に色々な形で競合等と関わっていく(含・関わらないという関わり方)。大まかにいえばこれが戦略論の概要ということになるのだろうか。
→その上で、業界分析の引き出しを増やしたり、水平統合のときのコツのようなものを自分の中に蓄積していったりという感じになるのだろうか。そう考えると、戦略コンサルにならずとも、顧客企業をもつ金融マンやベンチャーの経営者とかでも使いやすい気がしてきた。
1. 現状把握
1a 業界分析
・ポーターの5 Forceのフレームワークが便利。
・各要素が変化することで、顧客のWTP、自分のコスト、自分の販売価格がどう変化するか見る。
1b 市場分析
・需要曲線、供給曲線がどうかという観点で見てみる
2. 競争力
2a. 競争優位
・ベネフィット面:我々の商品はハイクオリティーか?ハイクオリティーである意味は本当にあるのか?顧客は高価格を受け入れてくれるか?いい顧客を押さえることができているか?
・コスト面:平均費用はどうか?投入コスト、生産性それぞれについてどうか?
2b. 競争優位の維持・・・しかもなるたけ長い間
・自分が更なる高みに行くか、ライバルを足止めするか。
・補完性:AもBもやることで、AだけやってるやつやBだけやってる奴よりメリットが出せないか
・学習曲線:ライバルに先んじてラーニングカーブを進んでおくことはできないか
・ブランドや特許も有効
・アウトソーシングは極めて短期的な施策であり、長期的優位にはつながらない。
3. 企業間の関わり合い
3a. 強者との戦い方
・ガチンコ勝負は避けよ。低価格戦略を取るなら絶対的なコスト構造の差を実現できるときだけ
・強者は強者で、彼らの既存の立ち位置から動きづらいところがあるので(どう考えてもウェブに移行した方が良いに決まっているが、販売担当者を大量に抱えてしまっているためスムーズにウェブ販売に移行できないとか)、うまく立ち回れば戦える
3b. 参入、競争の抑止
・マーケットが競争的であれば、参入は減る。レッドオーシャンもそういう意味では悪いばかりではない
・参入障壁の設置:特許、学習曲線、広告、「参入者とは断固戦う」というファイターとしての評判を形成するとか。
3c. 消耗戦
・自然独占が起きるビジネスなら、消耗戦を覚悟せよ
・とにかくシェアを急いで取ってしまう。スイッチングコスト(退会費用等)をつけて顧客流出を抑止。できれば事前に抑止する。相手が撤退しやすいような状況作り。最後までガチンコ勝負するという評判形成。
3d. オークション、ゲーム理論
・メカニズムを理解しておく。基本は「自分がこう動いたら、相手はどう動くか。それでは自分はどう動くか」という対応の仕方。
3e. 水平統合、垂直統合、多角化
・シナジーはある:統合すれば本部機能を統廃合できる・企業間の情報非対称性を統合すれば除去できる・競合を減らすことで業界構造が改善する・関係者のインセンティブを統一することができる、全部自分でやることで品質やコストが改善しうる・マージンの2度取りを回避することで競争力を高めることができる、等々。
・NGな理由は避ける:経営者の自己満足とか、リスク分散とか
Tuesday, February 7, 2012
VC/PE、意外と悪くない
月曜:各種ミーティング(1~4時間)→VC/PEの授業(3時間)
火曜:上級会計(1.5時間)→アセットプライシング(3時間)
残り:木曜日に上級会計の1.5時間
そんな火曜日が終わり、ちょっと息を抜いているところ。
・最近になり、当初つまらなかったVC/PEの授業に面白みを感じることができるようになってきた。なぜだか考えてみた:
①チームメイトと息があってきた。最初はお互い遠慮してしまったり締切に遅れたりして殆ど意見交換や修正をしないままレポートを提出してしまっていたが、最近では結構充実した(細かいレベルまで立ち入った)議論ができており、最悪授業がイマイチだったとしても、ケースとその議論だけでも十分楽しい。色々あって、これまで全く組んだことがなかった人と組んでいるのだが、結果オーライで良い感じ。
②ケースが面白くなってきた。最初は「なんだこれ、単なるバリュエーションじゃないか」という感じだったが、最近は+αがかなり増えてきた。GPとLPの利益配分方法とか、ファンドのIRRの様々な測定方法とか、資本構成を考える際のワラントのプライシングとか。
③自己正当化バイアス(?)。ドロップしようしようと言っているうちに、結局全10回のうち5回出席してしまった。少なからず、そんな自分を正当化しようとする力が働いている可能性は否めない。
④ケースの読み解きという作業自体に楽しみを感じるようになってきた。これまでは、単にケースの情報を「強み・弱み」とかの切り口で整理する作業は時間の無駄くらいに思っていたのだが、「情報整理術・およびそれを簡潔にチームメイトや教授に伝達する訓練」と考え、楽しむことができるようになってきた気がする。
⑤教授が思ったよりは怖くなかった。基本的には良い人であるようで、前学期のアントレファイナンスのおじいちゃんと比較するとリーズナブルだし物腰も柔らかいしまったくいい人であることがわかってきた。
って感じ。いまだもって皆が絶賛するほどの超絶的な素晴らしさまでは感じることができていないが、半分終わった現時点で「まあ悪くないかも」と思えるレベルには考え方が変わってきている。
(追記)
でも、PE部門(LBOとか)は面白いけど、序盤のVCパートはけっこう散々だった気がする。VCの案件をAPVで評価するとかいらないので、VCの生態系とか、なぜ複雑なハイブリッドなどが使われるのかとか、希薄化をどう考えるかとか、そういう業界知識のようなものをカバーしてもらえると良かったなぁと感じている。おそらく教授がPEの専門家で、VCはそれほど見ていないのだろう、PEになって急に面白くなってきたということなのかもしれないと思うようになってきた。
Sunday, February 5, 2012
OMG
まったくわからないなら諦めようがあるのだが、「なんか答えが喉元まで来ている感覚」を夜9時頃得て以来、そのアイディアが喉元から出そうで出ないと言う感じで数時間。夜3時についに悟りを得て、そこから1時間弱、ようやく宿題(の一つ・・・まだ終わってないのがあるぞ...)が終わった。
久々の夜更かし。自分でも頭の回転というかテンションというかがおかしくなっているのがわかる。足もむくんできているし異様に冷たいし。さっきから何か体が左方向に傾いていたり。
久々に慣れないことやってしまいテンションがおかしくなっているので、備忘がてら簡単に書き残してみた。さあ寝て、明日また残りの宿題とかミーティングとかだ。。
Thursday, February 2, 2012
上級会計メモ (6) ~為替関連~
(1) いつの時点の為替レートを使うのか? 決算日レートでいいのか?
(2) ドルが下落した場合、在外子会社の資産のドル建て価値は目減りするが、それはどのように記帳するのか?
といったあたり。
・在外子会社の連結については、在外子会社を
(1) Self-contained Subsidiary(独立性のある子会社)
(2) Non-freestanding Subsidiary(本社の単なる出先で、企業としての独立性をもたない)
の2つで異なるルールが適用される。
※日本では、(1)のルールを適用するのが在外子会社、(2)のルールが適用されるのは在外支店という分け方で、個人的にはよりすっきりした分類方法だと思う。
1. Self-contained Sub. の処理
子会社が企画・販売等多面的な活動を行っている場合、「自国通貨が強くなれば利益、弱くなれば損失」という線形的な関係はあまりなく、むしろ自国通貨安のときの方が売り上げが伸びたりする複雑な状況。そのような現状を鑑みると、前期末と当期末のレート差を単純に損益として表現するのはやや問題がある。
そのような考え方に基づき、独立性の強い子会社については、Current Rate Method (カレント法)という手法を用いる。カレント法とは「決算日レートで換算するけど、評価損評価益は計上しない」というややトリッキーなもので、具体的には
・期中の取引(仕入れ、販売、費用等)は、とりあえず現地通貨で記録しておく。
・期末になったら、現地通貨建てのバランスシートのすべての資産負債を、決算日レートでドルに換算する。
・決算日レートを使うと、たとえばGBP1,000の価値がある金融資産が、ドル高ポンド安の結果、前期末段階では$2,000だったのに当期末では$1,500になるということがありうる。こういった評価損益は、損益に計上するプロセスをすっとばして、ダイレクトに純資産の増減に加算する(純資産が増減する点においては損益と似ているが、損益計算書に表れないようになっている)。
・損益計算書についても単純に換算するだけだが、こちらはフローなので、期中の加重平均レートで換算する。
ポイントは
①すべての資産負債を決算日レートで換算
②為替差益・為替差損にあたる金額は、P/Lをすっとばして純資産を直接増減させる
③損益は、期中加重平均レートで計算
という3点。
換言すると、カレント法適用子会社においては、為替の急激な変動が起きたからといっても損益はまったくぶれることがない(もちろん、単なる見せ掛けで、純資産はきっちり増減するのだけれど)。
(追記)
※純資産については、カレント法においても取引レートを用いる。
※配当は、当期のフローなので期末レートで処理したくなるが、取引レートで換算すべき純資産の一部という整理になるので、純資産同様に取引レートを用いる。
2. 独立性の低い子会社の処理
独立性の低い子会社、たとえば「本国が作ったものを外国で売るための店舗」とかは、会計上
「本国の本社が直接取引を行ったかのように」取り扱う。これをテンポラル法といい、基本原則はすべてを取引時レートで記帳しておくというもの。具体的には
・期中の取引(売った、買った)のそれぞれについて、現地通貨建で記帳するのと同時に、その時々のレート(取引時レート)でドル換算してバランスシートに計上する。
・基本的には、取引時レートで換算されたドル建て価格をそのまま用いるが、市場性のある金融資産(含む売掛金等)については例外的に決算時レートで洗い替えする。
・すなわち、金融資産は決算時レート、非金融資産は取得時レートで決算が作成される。
・為替差損にあたるものについては、テンポラル法においては素直に損益に計上する。純資産が増減する点ではカレント法と共通しているし、損益計算書にも載るので分析者は「為替変動要因コミ」の損益を見ることになる。
ポイントは
①原則取引時レートで評価するが、金融性のあるものだけは期末レートで再評価
②為替差損・為替差益は損益にオン
③結果的に、損益は「取引時レートでの損益+金融資産について為替評価損益」となる。
よく新聞記事などに「円高のおかげで大幅な為替損失が発生」みたいなものがあるが、それはテンポラル法を使っているから損失という話になるということだと思われる。仮にカレント法を使っていれば「ま、変動はしてるんだけど、色々あって損益計算書には顕在化しないんですわ」という説明になるだろうから。
Wednesday, February 1, 2012
背伸び慶応生 vs 猫背東大生
自分もこれまで会った慶応生を見る限り、これはかなり正しいと思う。なんというか、自信にあふれた慶応生って多いと思う。就職活動中とか、そういった「自信にあふれた慶応生」にヤラれてしまいうまく自己アピール等できずまいった苦い記憶など。
ここで自分が言いたいのは慶応生の悪口ではなく、この「根拠なき自信」にちょっと関連しているような気がする彼らのもう一つの特徴について。自分から見て、彼らは、「実力が90しかなくても100の成果をゲットすべく努力することができる」という特徴を持っているように見える。悪く言えば「高望み」とか「見の程知らず」とか言えちゃうのかもしれないが、自分としては、彼らの野心・それを実現するための「頑張れる力」などを素直にすごいと思うのだ。おそらく、この「実力比120%を希求してやまない『背伸び力』」があるから、慶応生=意識高いみたいな印象があるのだろう。
これはアメリカでは少なくともMBA学生ならだれもがやっていることであり、当たり前に過ぎないことである。多くのアメリカ人は、あの手この手を使い、自分を実力比120%に演出するよう一生懸命努力しているように見える。なので、慶応生はこのアメリカ的思考回路にかなり馴染みやすいのではないかと推察している。
その点対極的なのが自分の東大だと思う。自分が見る限り、多くの東大生は「実力が100あれば、余裕しゃくしゃく80の成果を得ることをよしとする」タイプが多く、120%をしゃにむに取りに行く人はそう多くなかったように思う。「ハイスペックで実力が150くらいあるから、余裕こいていても120の成果を出して他人から見たらすごい」という人は少なからずいたが、「100の実力しかないのに120の成果を出した」という人はそうは見かけなかった気がする。慶応生が背伸びできているとするなら、東大生には猫背になってしまっている人が多いとでも言えようか。
※たまに、実力150で努力もきっちりしていて、常人には思いもよらない300くらいの成果を出している東大生とかがいてびっくりするけど
その「フルスロットルが出せない」理由は、スペックが高い人がその辺にうじゃうじゃいることにあろう。スペックが150あって努力せずとも120の成果が達成できるのなら、そりゃフルスロットル出さなくなる。そして、そんな人に囲まれていれば、スペックが90くらいしかない人も、やっぱりフルスロットルを出さなくなる。それが本稿の問題意識。すなわち、現在の自分ってそんな感じなのではないかということだ。「常に余裕しゃくしゃくの150の人」につられて、自分のような「実力は90くらいしかないので、本来はしゃにむに120の成果を目指すべき並の人間」も一緒に余裕ぶっこいてしまい、「東大なのに結果70で、同程度の慶応生が110くらいの成果をあげている...あいつには負けるはずないのに...」となってしまう・なってしまっているのではないかと。。。
とりとめなくなってしまったが、そんなことを感じている。いずれにせよ、東大生にせよ慶応生にせよ、変に余裕かまさず常に全力で実力比120%の成果を追及する姿勢が重要であることは最大公約数的な結論として正しいように思われる。その際、アメリカあたりに留学すると、その「実力比120%を目指す姿勢」を身を以て体感することができるので有用であるように思われる。よく、社費留学でたいした考えもなくMBAに来て、そこで刺激を受けて「背伸びする」ことを覚え、終了後めきめきと頭角を見せているような人がいるように思うが、そういう意味で留学はやっぱりメリットがあると思う(その点においては、国民が謙虚そうな国に行く利点はやや乏しい)。
また、特に自分のような「並の東大生」は、余裕かましている暇がないにもかかわらず余裕をかます癖がついてしまっているので、まずはそれを矯正するところから始めなくてはいけない点において競争に後れを取っている可能性があるので注意が必要だ。猫背が治ったところで自己満足して終了では駄目で、そこからさらに背伸びしていかなければいけない。そんな考え方に対する抵抗感もちょっと内心あるのだが、それがグローバル競争ってことなのかなぁと感じている。この競争に留学することでエントリーしてしまった以上、自分が背伸びするかしないかはさておき(ってか背伸びしろよって感じだが)、背伸びすることが美徳であるというゲームのルールは理解しできることなら尊重すべきなのだろう。