Sunday, February 12, 2012

上級会計メモ(7) ヘッジ会計、転換社債

■デリバティブの取扱(USGAAP)

・ヘッジ会計基準制定前:有価証券に準ずる。満期目的であると宣言するだけで含み損益を隠せた。

・ヘッジ会計基準制定後:原則として時価評価。含み損益は、損益としてP/Lに計上。ただしヘッジ対象としてデリバティブを使っている場合は

(1) Fair Value Hedge(公正価値ヘッジ:ヘッジ対象の時価が一定となるようなヘッジ。例えば、固定利払いの負債をスワップで流動化すると、トータルでその負債の時価は常にパーとなる)のときはデリバティブの含み損益は損益としてP/Lに計上する。

←負債は簿価評価なのに、対応するスワップだけ時価評価してしまうと、負債とスワップの合計の金額は固定しない気がするのだが、、、

(2) Cash Flow Hedge(キャッシュフローヘッジ:ヘッジ対象のキャッシュフローが一定となるようなヘッジ。例えば、変動利払いの負債をスワップで固定化すると、トータルでその負債のキャッシュフローは一定金額に確定する)の場合は、デリバティブの含み損益は純資産額にスルーパスし、P/Lに損益を認識しない(在外子会社をカレント法で評価するのと同じノリ)


■ 転換社債の取扱

・経済的には、CB=(得てしてクーポンの低い)固定利付債+株式オプション。

・しかし、従前のUSGAAPでは、CBも転換が実際に起こるまではSB同様に扱うようなルールで、オプションの価値は無視されていた。この場合、たとえばゼロクーポンCBとかだと、転換が起こるまでは帳簿上ゼロ金利の負債がでーんと記帳されるだけになっていた。

・今では見直されて、ちゃんとオプション部分も別途Paid-in-capitalとして認識しないといけないことになっている。ただし、このルールが適用されるのは、Instrument Cと呼ばれる「転換時、債券部分はキャッシュで決済し、株価がストライクをうわまった部分は別途株式を交付することで決済する」という形態のもののみ。

※Instrument AあるいはBは、元本部分も株価がストライクを超過した部分もまとめてキャッシュあるいは株式交付により決済する。この場合、(たぶん分離できないっしょみたいな理屈で)下記のような分離会計は行われない(※※USGAAP. IFRSではどんな転換社債であっても問答無用で分離会計が適用される)

(例)$1,000、ストライク$20の3年CBをクーポン0%で発行したとき
なお、このときの、同程度のクレジットのパーSBのクーポンが6%だったとする。

⇒このCBの負債部分の価値は、クーポン0%でのキャッシュフローを「もしこいつがSBだったときのたられば利回り6%」で割ることで求められて、
NPV(6%、($0, $0, $1000)) = $840.

⇒このCBのオプション部分の価値は、パー価額との差(Plug)、すなわち
$1000-$840 =$160となる。

⇒1年目、クーポン払いはないが、$840を$1000にするためのアモチ部分を利払いとして認識しないとならず、
$840 x 6% = $50.38が利息として計上される。




■ 偶発転換社債:Cocos(Contingent Convertible)

・普通のCBは、債権者が転換する権利を持っているが、COCOSの場合債権者は転換権利をもっていない

・予め定めておいてイベントが発生したときに、強制的に債券が株式に転換されるような仕組み。

・デススパイラルの懸念:株価下落→強制的に株式に転換される→希薄化→ますます株価下落…というリスクがあり、「絶対トリガーひかないぞ」という気合(?)が必要

・現在の欧州金融危機の文脈上、COCOSをバーゼルルール上の資本性資金とみなすことが認められた。そのため、クレディスイス等がCOCOSを発行することでルールをクリアしようとしているとのこと(未確認)。