・キャッシュフローが出るものを適当に束ねる:不動産でも、消費者ローンでも、CDの売り上げでも、ときメモの売り上げでも、売れるのであれば何でもOK。
・束ねた資産を、シニア→サブ→エクイティといった感じで優先劣後関係を付けて再分類する。価値が100未満のときはシニアが総取り、150以下ならメザニンも取り分がある、それ以上のときはエクイティにも取り分が、といった感じ。シニアはAAAが取れるように設計されるので、元は消費者ローンなのにAAA格という魔法の証券が出来上がる。
・SPCを挟んで投資家に売る:SPCを挟むのは、投資家にとっては倒産隔離の効果がある一方、発行体にとってはオフバランスできるという効果がある。
・舞台裏:シニアは投資家に簡単に売れるが、得てして劣後部分は売れ残り、発行体が保持することが多い。すなわち、証券化は実質的には、上澄みだけ切り離しているものの、一番ヤバい部分は濃縮されて発行体のB/Sに残っていることが多い。。
■ 証券化の会計処理:Gain on sales
・束ねられた資産は(1)シニア部分、(2)発行体が保持する劣後部分、(3)発行体が回収業務を行う場合はサービスフィーの価値部分、と3つに分類することができる。
・それぞれについて、まず、公正価値を算出する。(1)については実際の取引価格を、(2)(3)については金利等各種前提をもとにした計算値を用いる。そうすると、シニア部分が全体の何%の価値であるかわかる。
・仮に束ねられた資産の簿価(コスト)が100で、上記計算によって求められたシニア部分のシェアが80%であったとき、シニア部分の原価は80と推定される。シニア部分が90で売れたとすると、証券化から得られた収益は90-80=10と計算されることになる。これがGain on sales。
・別途、発行体が保有し続ける部分については、公正価値の増減が損益として認識される。
・この仕組みのミソは、証券化による収益等が、「シニア部分の公正価値がいくらか」という経営者の計算に大きく依存しているということ。公正価値会計の根源的問題がここで絡んでくる。経営者が鉛筆をちょっとなめるだけで、証券化関連利益が簡単に嵩上げされてしまう。
・なので、投資家は、(1)公正価値計算に関するディスクロが十分かどうか(2)開示されている前提は合理的な範囲に収まっているかどうか(3)前提が変わったときの感応度はどの程度か、などを結構真剣に見ないといけない。
■ 公正価値会計の問題点
・市場性のあるレベル1資産ならあまり問題ないが、市場性が低いレベル3資産になると、経営者がどう公正価値を計算したかがかなり数字に影響を与える。財務諸表に恣意性が入り込んでしまい、根源的に排除できない。恣意性を嫌うなら全て簿価で記録することになるが、趨勢上、そういう方向に進むことは考えづらい。
・証券化以外の一般的な資産/負債については、公正価値会計を適用するか否かは経営者のオプションとなっており、しかも資産/負債ごとに選択することができる。含み損が出ている資産は簿価のままにして、含み益が出ているものだけ公正価値処理するとか、色々「いたずら」ができてしまう。当局から警鐘はならされているようだが、これを悪用する企業がいる可能性は排除できない。
・それに呼応して出てきた基準がFAS157で、レベル1,2,3と資産を流動性・市場性に応じて区分して開示することが定められている。
※おまけ 授業で触れられた「うさんくさい会計行為」集
・財務諸表で、やたら「A and B」と複数の項目をまとめていて、AとBの内訳が不透明→グレー
・「A net B」と、例えば引当金などを勝手にネッティングして、詳細が不透明→グレー
・資産/負債が拡大(縮小)しているとき、一部項目だけ不自然に増加幅が小さい(例:貸付金が30%増なのに引当金が1%増とか)→かなりグレー
・引当金が増加していない、減少している→とてもグレー