Monday, February 20, 2012

顔本プロスペクタス(5)

※やっていくうちに、自分が「財務分析」と「会計分析」の区別を全然できていないことがすっきりしてきた。。今回の最終的なアウトプットは会計分析なのだが、さて、どうこのS-1を料理したものか。。

今回は「Capitalization」「Dilution」だけさらっと。


・まず、いくつかの未確定情報が空欄となっており、全体的にスカスカで読みづらい。
・ここでは、具体的な数字はすっとばし、抽象的なレベルで、FBがどんな資本調達をしてきたのかだけ整理する。

1. Class A common(A株)
今回IPOで売りにでる株式。1株1議決権しかないので、議決権という意味ではB株の10分の1の価値。
バリュエーション的にも単純にB株の10分の1でいいのかな?と思うが、B株の株主が株式を手放したいときは、まずB株をA株に転換してそのA株を売るという手順になるのだが、その時の転換比率は1:1とのこと。うーん、なんだか頭の中で計算が合わないぞ...

2. Class B common(B株)
基本的にこれまで出回っていた株式はこれということになりそう。また、後述するConvertible PreferredはIPOというLiquidation Eventにより強制的にこのB株に転換されるとのこと。

3. Convertible Preferred(転換条項付優先株、でいいのかな)
これはベンチャーファイナンスにおいて典型的な調達手法のひとつであるとのこと。「アップサイドは頂くが、ダウンサイドも担保させてもらうぜ」というVCの要請を満たすためのハイブリッド。

(以下、Preferredについての整理)

まず、Convertibleでない普通のPreferred Stockだが、
・企業の価値が投資元本未満のときは、このPFは殆ど負債と同義になる。流動化イベントの際には株式に優先して資金回収することができるし、往々にしてRedemption Right(返金請求権)がついているので流動化イベントを待たずして回収することもできないことはない。
・企業の価値が投資元本を超えたときには、契約内容によってアップサイドがある場合とない場合にわかれる。
もしPFが「Participating」あるいは参加型という仕組みである場合は、普通株主と同じように「負債返済を終えた残りの残余価値を山分けする権利」が得られるので、アップサイドが存在すると言うことになる。ただし、そのアップサイドは、希薄化後出資比率に基づく。
・なので、Non-convertible Preferredのペイオフ・ダイヤグラムは、もしパリパス優先株投資家がいなければ

Y = X [X < 元本F]
Y-F = a (X-F) [X > F; aは希薄化後出資比率]

という感じになる。


次に、これがConvertibleになるとき。この場合、参加型PFのようにただちに残余価値を山分けできるわけではなく、転換して初めて株主として残余価値を山分けできることになる。

この場合のペイオフは、

Y = min {F, X} [転換前]
Y = aX [転換後]

となる。投資家は、この2つの交点を計算して、より儲かる方を選ぶので、交点より企業価値が高い場合は転換して、そうでない場合は優先株のまま元本(あるいはそれ以下)を回収することになる。

※プロラタ=パリパスの他のPFがある場合は、ペイオフの傾きが1から「あなたの投資額のシェア」、例えば70%とかに変わる。
※オプションプライシングモデルを使えば、implied pre-money valuationが計算できる。この辺は自信がないというか、まさに来週のVC/PEで取り扱うネタなので、その授業でアハ体験できればなにかここに追記するかも...



で、FBはIPOまでにこのConv. Pfdを使って資金調達しているのだが、IPOという流動化イベントによりこの証券は強制的に普通株(B株)に転換されることになる。IPO後のバランスシートには優先株がなくなり、A株、B株、そして転換に伴うAPID(資本剰余金)だけが計上されることになる。

4. その他

調達というか、資本性支払として、ザック氏に対してストックオプションを支給、従業員に対して制限株(RSUs)を支給しており、それらはそれぞれのルールに基づきIPOに伴い株式に化け、さらには彼らの利益に化ける。


5. 希薄化

ここで言われている希薄化とは、初期投資家とIPO投資家の投資時株価が異なることからBPSが希薄化しまっせということ。

このほかにも、Conv. Pfdが強制的にB株になることによる希薄化や、ストックオプション・RSUの転換も希薄化要素となり、S-1ではプロフォーマとして「もしこういった証券が株式に化けたら」という想定を示してくれている。


○その他

・もちろん他に負債もあるが、ここでは純資産の構成要素だけ拾った。
・あと内部留保ももちろんある。
・自社株買いはやったことがないことから、金庫株は計上されていない。グルーポンは上場前に経営陣の株式を自社株買いするというかなりグレーなことをしたそうで、結構な金庫株が計上されているとのこと。つまり、金庫株が計上されていないのは、今回のIPOがクリーンなものであるひとつの指標となりうる。
・細かい株数や、支配構造は別途。章も別だし、何より眠いので...