Friday, March 11, 2011

緊急につき?

地震に関連して感じていること。

地震という緊急事態を受け、色々な方面で緊急的・臨時の対応がなされているが、自分にはこれらが本当に緊急だからといって許されることなのか今一つ確信が持てない。

ひとつは予算。
これまでダラダラやっていたという経緯を踏まえると今からでも急ぐ意義はあるのかもしれないが、地震があったからといって議論が不十分なままに予算計上を行うことは果たしてどれだけ正当なのだろうか。「地震のための費用が足りない→費用捻出のためにAは100億円、Bは300億円抑制することにしたがまだ足りない→将来世代には悪いが国債の追加発行にて1000億円をさらに計上」といった然るべき(と思われる)プロセスがおざなりにされ、なあなあのうちにポンと補正予算で追加予算が計上されてしまう懸念はないか。
自分は「地震復興を今年度の税収だけで実施せよ」という財政原理主義を唱えているわけではない。しかし、「先人が蓄積してくれた財産」「後進がこれから作り上げる価値」といったものをこのタイミングで使うことに対する熟慮は当然なされるべきで、おざなりにされていいことはないと思うのだ。仮に家が火事になったとして修復費用が必要になったとしても、先祖伝来の宝物を売却したり子供のブタさんの貯金箱を割ったりするときはそれなりの熟慮が求められるのではないかと感じずにはいられないのだ。先日の党首会談で、そういったことが話し合われていることを期待しているのだが。

もう一つは保険。
人道的に配慮の必要があるから生命保険約款の地震免責条項を例外的に適用しないという動きがみられるが、これは本当に適切なのだろうか。もちろん人道的であると思うし、そういった判断をすることができる保険各社の経営者は尊敬に値すると思う。しかし、その例外的措置の裏にあるリスクやデメリットに対する配慮がどれだけ深くなされているのかが自分には気になる。たとえば、例外的に地震免責条項を適用しないことで保険金支払いが増加するが、これにより保険会社の財政や収益は例外的に悪化する。相互会社たる一部の生命保険会社なら、あるいは篤志家の少数株主によって所有されている非公開株式会社保険会社なら、会社の所有者たる保険契約者や篤志家株主が望む限りにおいてこのような対応は何ら問題のない行為となろう。しかし、近年多くの保険会社は株式会社化しているが、その場合に今回のような例外的対応をすることは果たして株主に対する背任とはならないのだろうか。免責を適用せずレピュテーションを下げるデメリットと、免責を適用しないことで発生する追加的な費用を勘案した上での合理的な行動なのかもしれないが、自分には株式会社保険会社が本当にこういった「本件が株主に資する」という総合的判断を下して成されたものなのか疑問。それとも、地震免責特約は方便みたいなもので、株主と会社の間で、「実務上、地震免責は適用しない」という暗黙の合意があるので問題はないとか?自分が単にアメリカ型資本主義(???)に染まっているだけなのかもしれないが、どうせなら地震免責条項など無くしてしまった方がよいのではないのかと考えずにはいられない。。。

他にも色々あったような気がするが、2つ具体例を書いてみたら思いのほか長くなってしまい疲れてしまった。
共通する問題意識は、

- いくら緊急事態とはいえ
- 「緊急なのでやむを得ない」というだけが判断根拠だとすると、それは意思決定とは言えず思考停止に過ぎないのではないか。結果オーライで良い結果が出たとしても、それは仕事をしたと言えるのだろうか
- 非常に限られた時間の中で、可能な限りあらゆる可能性に考えを巡らせて、その上で合理的・時には超合理的に判断を下すのが経営者の仕事(=意思決定)というのではないだろうか

というもの。はっきり言ってかなり冷や水というか寒いことを言っているとは思うし「お前が言うな」なのかもしれないが。。。