(なお、自分のような「受けようかやめようかどうしようかなぁ」と言う人が最初は少なからずいるので、いわゆる交渉の実習は3週目から。いまのところは、簡単なオークションやゲームを通じて色々学んでいるところ)
○ 理論値? So What?
この授業、35%が交渉実習、35%が統計クイズ実習、残りがその他(レポート、参加点等)で決まる。で、初回にはシンプルなオークションというクイズ実習があった。
Q. とある財(価値100ということを皆が知っている)について、1から100の整数のいずれかを入札せよ。参加者のうち最高値を入札した人が勝者でその財を受け取るので、取り分は
勝者:100-x
敗者:ゼロ
となる、というゲーム。ライバルが一人しかいないとき、あなたは何点ビッドしますか?
簡単なオークション理論のフレームワークに従うと、「合理的な理論値」は以下のように計算される:
・仮定:相手のビッドは確率分布で1から100までの一様分布と仮定する。
・このとき、自分がXにビッドしたとき、自分が勝つ確率はXパーセント。
・また、このときの自分の利得(Surplus)は100-X。
なので、利得の期待値はX(100-X)となる。
最大化問題の一階の必要条件は、左の式をXについて微分したものがゼロになることなので
100-2X=0という式が立ち、X=50が「最適値」となる。
このクイズ、自分は当初99とか100とか入れようとしたのだが、最終的にはこのフレームワークに従い50を入札した。
だが、これは結果的にかなりサイテーな戦略であると評価されてしまったのだ。
授業に出てわかったが、教授は、各生徒のスコア(素点)を大体で言うと以下のように計算していた:
素点(X)=(Xより小さい金額を入札している人数)x(100-X)
その上で、素点について分布を計算し、平均点の人はゼロ点、プラス1σの人は1点、マイナス1σの人はマイナス1点..という風に最終得点(z-score)が計算されていた。
自分の場合、50より小さい入札をした人が殆どいなかったため素点の最初の因数が殆どゼロとなってしまったようで、かなり低いzスコアを貰ってしまった。
あるいは、ゲーム理論に基づき99を入札した人(相手がXを出したらYを出し..という先手読みのようなことを繰り返した先にあるナッシュ均衡は99)もやはり駄目だった。99だとほぼ全員に勝つので一つ目の因数は大きくなるのだが、二つ目の因数が1と小さいので、「平均と比べてどうか」というzスコア方式においてはマイナスのグループに入っている。
つまり、オークション理論も、ゲーム理論も、理論値は実戦の場においてはイマイチであったのだ
(もちろん、教授がどうやって素点を採点するかヨクワカランという問題もあるのだが)。
で、勝者すなわちプラスのzスコアを貰った人は、75近辺の数字をビッドしていた人であった。教授によると、これは経験則レベルである程度はっきりと説明できるそうだ。すなわち、
・たとえば一様分布を前提としたオークション理論を使うと、理論値は50となる。
・しかし、ここで立ち止まらず、もう一回同じことをするとどうなるか。すなわち、皆が50以上出すことが自明なのだから、50から100の一様分布でもう一度同じ期待値最大化問題を解くとどうなるか。この解は75となる。
・人間の傾向として、この手の計算を1回でやめてしまう人が多い傾向があるので、「もう一回」同じ計算をやるだけで勝てる可能性が大きく高まる。この例では、50でやめずに75でストップすれば一番勝てる。
・他方、やり過ぎて極限値すなわち99まで行ってしまうとこれまた勝てない。理論はさておき、「1,2回だけ同じことをやる」という戦略が、えてして実戦では最適戦略となることが多い。
具体例が長くなってしまったが、自分の理解によれば、ポイントは以下の通り:
・この手のゲームやオークションでは、「相手がどんな戦略をとるであろうか」という読みが非常に大事。
・基本戦略は、「相手がとるであろう戦略を所与として、それに対する最適な対応」になる。たとえば、ジャンケンで相手がグーを出すと予想するのであれば最適戦略はパー。
・で、1回か2回だけ先の先を読んでやるのが経験則上いちばん勝てる。相手がグーを出すという仮定から始めると、そのときの自分はパー→それを相手が読むと相手はチョキを出す→であれば自分はグー、といった具合。この先読み回数がゼロだと得てして負けるし、「nが無限大のときの理論値」も得てして負ける。
先を読むけど、読み過ぎちゃだめ。なかなか難しい。。