これまでに2回行ったネゴシエーション実習の模様を、反省のため記録
1. 土地買収交渉
(ルール)
・買い手である自分は、22番地の土地を80フラン/㎡で購入した
・隣の21番地は中途半端な広さで、21番地単体で住宅建築は法律上できない。農業用に使うか、あるいは22番地の所有者である自分に売るかしかない状況。
・自分としては、せっかくなので21番地を購入して、でっかい家を建てたい
(事前分析)
・まずは自分のBATNAを検討。21番地が住宅建築できないイケてない立地である以上、22番地の取引価格である80FF/㎡を超えることはありえないはずと考え、BATNAを80FF/㎡と設定。
・次に相手のBATNAを予想。「きっと、農業用に買いたい」というオファーが出ていて、その人のオファー価格がBATNAであるのだろうと推測。その推定オファー価格を30FF/㎡と予想。
・そうすると、交渉は、30FF/㎡と80FF/㎡の間のどこか一点を選ぶという話に集約される。公平性の観点から見て、その中間点である55FF/㎡が落としどころであると考えつつ、「まずは30FF/㎡あたりからオファーして、徐々に妥協していこう」という作戦をもって臨んだ。
(いざ実戦)
・ということでまず30FF/㎡を提案。
・もうちょっとだけ上がらないかと言われたので、なんとなく「じゃあ40FFで最終ビッドだ、それ以上は譲れん」と無駄に強気に出てみたところ、相手もあっさりOKが出て交渉終了。
・終わった後聞いてみたら、ほんとに農業用として別途オファーが出ていたが、そのオファー価格は15FF/㎡であった。すなわち、落としどころは15FF/㎡と90FF/㎡の中間、52.5FF/㎡であったので、合意価格の40FF/㎡は悪くない。
・相手に聞いてみたら、相手の友人は、「農業用のオファーである15FFを超えていればそれでオッケーだと思っていた」とのことで、ぶっちゃけ自分が最初に出した30FFでも満足していたとのこと。すなわち彼は、BATNAのことを「最低限のポイント」ではなく「ここを超えていれば文句なし」と言う感じに勘違いしていたということだ。
(結果)
・クラス平均は75FF/㎡。なので、自分の40FFという購入価格は平均以上で、わりといいスコアとなった
(毎回平均±σいくつと言う形でスコアが出る)
・てか、なんで、買い手のBATNA周辺までクラス平均価格が行ってしまったのだろう。なんだか知らんけどラッキー
・自分の30という最初の提示額がアンカリング効果を発揮したということになろうか。相手はルールを周知してれば80とか逆提示することもできたはずだった。
2. 保険金示談
(ルール)
・自分は工場での事故被害者の元下請け従業員。一回裁判を起こしたがうまくいかなかったので、そのときの弁護士を訴えている。
・裁判すると、一定の確率で相手の過失が認められて、その場合にだけ賠償金をもらうことができる。また、その賠償金もいくつかのケースによって貰える金額が変化する。
・そういった裁判をするか、代わりに示談でいくらかの金銭をもらうかという状況で、先方と示談。
(事前準備)
・Decision Treeを作れとのことなので、「陪審員が自分に好意的な場合」とか「相手に過失が認められた場合」とか色々な要素を一つのツリーにまとめた
・その上で、各種パラメータを適当に置き、裁判したらもらえるだろう金額について大雑把に相場観を形成
・計算の結果、最高1,000、最悪300くらいの利得が予想されたので、「とりあえず1,200という要求で始めることでアンカリング効果を狙いつつ、最終的には600くらいを落としどころとしたい」というイメージで臨んだ。
(いざ実戦)
・まず両者にて、お互いのDecision Treeに致命的な欠陥がないか、おおむね同じものを見て交渉しているか確認。
・その後自分から1,200を提示したら、なんと相手がそれを聞きつつも無視して「私からは120を提示する」とやられた。アンカリング効果を狙ったが、これはいいカウンターだ。 うまくいけば1,200近辺での交渉に論点を限定できた(アンカリング)が、うまくいかず。
・その後は、お互い「裁判したときの賠償金」が仮定しだいで大きくぶれることを知っている、すなわち正解なんてないということを知っているので、単純に数字の言い合いになった。1,200→120→1,000→300→・・・。
・で、なんとなく590で決着。
(結果)
・クラス平均は650だったので、自分が得た賠償金590は平均からわずかにマイナス。
・振り返ると、我々の交渉で鍵となったのは、最初に適当に提示したオファー額と、そこからの妥協の刻み幅くらいのもので、賠償金の真の価値とかは完全に論点の外であった。
・企業買収の交渉なども、下手するとこうなってしまいそうだなぁと思う。企業価値など仮定や前提次第でなんとでも変わるから、結局は企業の真の価値を両者で探り出すというより、お互いがエイヤーで言ったイニシャルオファーの間のどこか程よいポイントを模索するという感じ。