Wednesday, April 25, 2012

ネゴシエーション(5) BATNA

ネゴシエーションにあたり重要な概念のひとつとされるBATNA. Best Alternative to a Negotiated Agreementの略。これは「仮にその交渉を今打ち切ったとき、あなたが持っている最高の代替案は何か」というもの。自分は「じゃあいいやオプション」と理解している。すなわち、

相手:販売価格は100万円。それ以上は下げられない。

自分:じゃあいいよ、他社が90万円で売るって言ってくれているから、他社から買うよ



という、自分の「じゃあいいやオプション」以下がBATNA。

交渉におけるBATNAの使い方のポイントは以下のようなところ:

1:交渉結果はBATNAより悪くなりようがない。BATNAよりマシでないのであれば、「じゃあいいよ」と交渉をやめてしまえばいいのだから。上の例で言えば、自分が(ブラフではなく本当に)90万円で売ってくれる相手を既に見つけているのであれば、いまの交渉相手から90万円より1円より高い値段で同じものを買う必要性はまったくない。売り手が90万円以上の値段しか言ってこないのであれば、買い手である自分は「じゃあいいよ」と言って交渉をやめてしまえばいい。

2:なので、より良いBATNAを見つけておくことこそが、交渉を有利に進めることの鍵。
目の前の交渉相手のほかに90万円でものを売ってくれる人がいる状況と、目の前の交渉相手以外にはそのモノを売ってくれる人が見つかっていない状況では、交渉の有利さは全然異なってくる。90万円で売ってくれる人がみつかっているのであれば交渉結果は90万円より悪くなりえない(悪くなるなら帰ればいい)が、後者のような状況では「じゃあいいよ」と言えないので交渉が厳しくなる。

3:お互いにBATNAがあるので、交渉の落としどころは2つのBATNAの間のどこかになる。
買い手である自分にとってのBATNAが90万円で、売り手である相手のBATNAが70万円であるとき、結局のところ交渉は「70万円と90万円の間のどこを落としどころとするか」に集約される。ちなみに、この70万円と90万円の間の領域のことをZOPA(Zone of possible agreement)という。なので、ひとつの落としどころはZOPA幅20万円を両者で折半するような、すなわち80万円を落としどころとするような感じ。すなわち、予想される落としどころは、自分のBATNAと相手のBATNAの中間地点になることが多い。


ちなみに、これに関連して行われたネゴシエーション実習では、自分の相手が
「BATNAよりちょっとでも上ならいいってことだよね」と勘違いしていたようで、自分が相手のBATNAよりちょっと高い金額で買うとオファーしたら簡単にOKが出てしまった。自分としては、自分のBATNAが80で相手の予想BATNAが20であったので、落としどころは中間の50あたりを想定していたのだが、結局50よりずいぶん低い自分の最初のオファーを相手が飲んでくれてしまったので、クラス平均と比較してもかなりいい成績を貰うことができてしまった。