3回目のネゴシエーションは、メーカーの営業部長と、スーパーの幹部が、新製品の取扱を巡り交渉するというもの。割引率、広告費の分担、棚の前列への陳列等7つの論点についてそれぞれ合意を形成するというゲーム。
「商品の陳列については自分はAだろうとBだろうとCだろうとあまり得点差はないが、相手はAだとものすごく加点がある...」という非対称性があり、うまく協調的になれれば、お互い譲るところは譲り、主張すべきところは主張することである程度win-winになれるというゲームであった。
ナパのホテルでやったこのネゴシエーション、残念ながら結果はクラス平均以下の得点となってしまった。
・「自分にとって重要な論点は主張し、そうでないところは妥協する」「複数の論点を結び付けてバーター取引する」等の基本的なアクションはできていたのだが、
・どうやら主張と妥協のバランスが悪かったようだ。見直してみると、ひとつ主張が通ったときに、嬉しさのあまり(?)2つくらいまとめて妥協してしまっているところがあり、そのためトータルで見ると妥協しすぎという形になっていた。
平均点に負けた悔しさのおかげで割と真剣に「どうして負けたのだ...」と反省したのだが、やはり色々と反省しうるとことはあって、
・できればそういうことは素面でやる
・自分は妥協しすぎ、情報出し過ぎにより損をする傾向がある。友人や家族に対して計算することなく接するときにはまだ許されるのかもしれないが、冷静に自分の利得を最大化すべきネゴシエーションにおいてはこの自分の傾向は致命的であり、常に意識し、抑制的であるべきである
・具体的には、自分の譲歩の度合いと、相手の譲歩の度合いが常にイーブンとなるよう、あるいは出し過ぎとならないよう、意識的に計算しないとならないだろう。
■ 複数論点を「つくる」
ところで教授によれば、この「論点が複数ある交渉」は、論点が一つしかない交渉と比較して合意形成がし易いという指摘があった。一つしか論点がないときはゼロサムゲームとなってしまいなかなかうまい落としどころが出てこないが、複数論点があれば「これは妥協するから、そこは俺の要求を呑んでくれ」というのがやりやすいのだ。
そんな話を聞いた丁度翌日の不動産の授業で、ゲストスピーカーとして来た人の話でまさにそんな話があった:
・ソノマで色々と不動産開発をやっていた顧客が、金策に窮してしまい、Ch11での再建を図ることになった
・が、債権者が複数いて利害が錯綜しており、下手するとCh7を申請して保有物件をたたき売る羽目になる。
・未開発の物件などもあり、現時点で叩き売るよりも開発してから売った方が明らかに良い地所とかもあるのに...
・そこで雇われたその人、債権者に話を聞いて回ると、多くの債権者が「回収金額の最大化」以外の関心をもっていることがわかった。「とにかく早く資金回収したい」とか「待っててもいいからたくさん回収したい」とか。
・そこでその人が仲介しつつ、Aさんには明日にでも資金を分配するが額面の50%、Bさんには支払いが遅くなるが残余額の全てを分配...というような感じで、全員が納得のいくような分配案の合意形成をすることができ、Ch7申請を回避できた
この話を聞いてピンときた。
「複数論点があるとネゴがやりやすい」と言う話はさらに一段階煮詰めて「ひとつしか論点がなさそうな状況でも、試行錯誤して複数の論点を作れ!!」という教訓にすることができるのだ。
・金額:多いか少ないか。
・支払時期:早いか遅いか
・支払方法:現金か掛け金か。一括か分割か。現物でもオッケーだったりしないか。
・その他諸々。
これは理屈というよりは実戦的なものであり、経験や勘が寄与するとことの大きいものであろう。相手がどのようなことにメリットを感じるか考えて、何か他のメリットを考えてあげて、それを与える代わりに自分の主張したい論点はきっちり主張させてもらうといった感じ。
これまであまり頭を整理したことがなく、「論点は少ない方がすっきりしてて良い」くらいに思っていたが、これからは意識的に論点をむしろ増やす方向でやってみることにしてみたい。
※ それにしても、履修から5週間ほどたつが、一向に夫婦喧嘩には勝てていない件。むしろ、変に習ったことを遣おうとすると「ちょこざいな屁理屈使っちゃってさぁ」とネゴシエーションテクニックを使ったことそれ自体を非難されたり。。ネゴシエーションすること自体がもたらすデメリット、ってそういや以前にブログにも書いたなぁ...