Tuesday, May 1, 2012

借金の算数

不動産の授業で、ローンに関して色々と論点が出てきて色々面白い。知っていたこと、今回知ったこと、あわせてメモ

■ アモチ償還(元利均等払)の計算

元本と利息を合算した毎回の支払額が一定となるような返済スケジュールのことを元利均等払いという。イメージとしては、

・毎回返済額は10万円
・最初の方は元本が大きいので、10万円のうち殆どは金利で、元本はあまり減らない
・最後の方は元本が大きく、金利が少ない

といったもの。この一定の支払額(元本と利息を合わせてDebt Serviceと言う)Xは以下の年金公式を使って求められる。

ローン元本A = X/(1+ローン利率r) + X/(1+r)^2 + ... + X/(1+r)^T
(Tは満期までの支払回数。返済が年に一回ならT=年数だし、毎月ならT=12×年数)

その辺の教科書を読めば年金公式は載っているが、自分としては、公式ではなく計算方法を理解した方がいいと思う:

A = X/(1+r) + X/(1+r)^2 + ... + X/(1+r)^T

A/(1+r) = X/(1+r)^2 + ... + X/(1+r)^(T+1) {Aを1+rで割ったもの}

上の式から下の式を引くと、

A (1- 1/(1+r)) = X {1/(1+r) - 1/(1+r)^(T+1)}

rA = X {1 - 1/(1+r)^T}

上記の式から、Xが計算できる。


ちなみにこの計算は、ExcelではPMT関数であっという間にできて、
X=PMT(利率、支払回数、元本)で計算できる。ただし、返済インターバルが年一回ではない場合、利率は返済期間における利率に調整しないとならない。


これにより均等償還額が決まるので、あとはそれを金利と元本に分解する。

・金利=前期の元本×利率

・元本償還分=均等償還額 -金利

計算が合っていれば、元本が満期のところできっちりゼロになるはず。


なお、社債は一般的にブレット型(期限一括返済)という方式で、満期になるまで元本は一切減らず満期に元本が一括返済される。このときの計算は簡単で、

・元本返済:最後に全部、それ以外はゼロ
・金利:常に元本×利率

となる。


■ DSCR (Debt service coverage ratio)

キャッシュフローがどのくらい元利償還額(Debt Service)をカバーしているかという指標。大雑把な定義は

キャッシュフロー / 元利償還額
というもの。

仮にサラリーマンのあなたが、毎月元利合わせて12万円返済する住宅ローンを組んでいるとする。
各種必要経費を引いたあとの給料の残りが15万円であった場合、あなたのDSCRは15/12 = 1.25となる。
金融機関が個人や企業などにローンを提供するときは、多くの場合、このDSCRが判断材料に使われる。すなわち、あなたの経費控除後月収が15万円で、銀行の許容DSCRが1.25であれば、銀行は元利払いが12万円となるようなローンはOKを出すが13万円となるようなローンはNGであるといった感じ。


■ Loan Constant (Mortgage Constant)

借金で一番メジャーな指標は金利 =利払い/元本 だが、実際には金利のみならず元本も返済しないとデフォルトということになってしまうことから、利払いの代わりに元本+金利を用いて計算するのがLoan Constant.具体的には

毎回の元利償還額 / ローンの最初の元本
で計算される。

なぜ毎期減少する元本ではなく、最初の元本で計算するのかというと、初期投資に対する収益性(キャップレートやROE)と対比できるようにするため。


■ Debt Yield

負債元本とキャッシュフローを比較するもので

キャッシュフロー / 負債の最初の元本
で計算される。

こいつとLoan Constantを比べることは、DSCRを計算することとほぼ同義と言える。

また、分母を負債のみならず負債+初期投資とすれば、それはキャップレート。
あるいは、分母を初期投資だけにすれば、それはROE(厳密にはROI)。