最近、自分の学校の合格者と学生のやり取りや、他人のブログなどで、「MBAに合格した!出国まで時間があるのだが、何をすればよいだろうか?」みたいな話がよく出てくる。これについては、色々なものが回答として挙げられるだろうと思う。
1. 特に私費の人であれば、外資系企業によるレセプションに顔を出しておくことは割と重要みたい
2. 経済や経営に不慣れな人であれば、関連分野について日本語での平易な本を買っておくのもいいかもしれないし
3. 英語をもう一段階鍛えておいても損はないし
4. 他校MBAの人とネットワークを作っておくと色々役立つし、
5. 留学を通じて何を得たいのか、Why MBA等について、建前ではなく本音レベルで再考してみると留学期間がより有意義になるかもしれないし。
自分は上記だと4だけやった。積極的にやったというよりは、友人に誘ってもらった会に顔を出したら思いがけず気の合う人々に出会った...という感じであったが、そのおかげで、ブログやFBを通じて自分の状況を相対化できたり、刺激をもらったりできたのでこれは良かったなぁと感じている。
それはそれとして、自分としては、「留学前に用意しておいた方がいいもの」として、「趣味」を挙げてみたい。
ゴルフでもテニスでも卓球でも、飲み会でもDJでも釣りでも料理でも旅行でも何でもいいと思うが、一定の深さ(のめり込み度合い) and / or 腕前があるものを持っておくとよいのではないかと思っている。
なぜ趣味があるといいのかについては、いくつか理由がある:
1. MBAで「役立つ」
無数のソーシャルイベント、スポーツイベント、エトセトラエトセトラ...こういったものを通じて友達と仲良くやっていこうと言うとき、趣味があることは確実に有利だ。ちょっとの言語面での不利は、ひとつの趣味で帳消しにできる可能性がある。
留学後に知り合いになったあるMBAの方は、留学当初は英語で苦労していたようだが、得意の趣味を生かすことで学内で自分の立場を確立し、今では生徒会の一員として活躍しているみたい。「俺が俺が」集団のMBAの中で生徒会の役員になるということはなかなかタイヘンなことであり、その役員就任という大仕事には少なからず趣味の部分が生かされたところがあるのではないかと勝手ながら推察している(まあ、メインファクターは人格の良さだろうけど。)
(※この「MBAをサバイブするのに使える」という発想は、趣味を冒涜しているようで本当は好きではない...でも、現実的に、趣味がMBAサバイバルに役立つのは間違いないので指摘してみた)
2. 留学生活は言うほど忙しいわけでもないが、学部1年生よりは時間は限られている
もちろん勉強とか就職活動とか色々あるわけだけど、やりようによってはMBAそれ自体はさほど時間を食わない。というか、場合によってはかなり時間を持て余す。特にあなたが社費で、金融あるいはコンサルタント出身だったりした日には、ほぼ確実に時間的余裕ができるはずだ。仮に独身だったらもっと。自分も、有り余る時間を有効活用すべく自由研究をしたりもう一つ授業を受けたりしたわけだが、残念ながらそれでも時間は余る。なぜならMBAは、統計やファイナンスを知らない人が就職活動をしながらでもギリギリ死なない程度のワークロードで設計されているからだ。
この有り余る時間を、「せっかくMBAに来たんだし、●●を覚えて帰ろうかな」(●●:各種スポーツ・趣味等)とちょっとだけかじるのもいいかもしれないが、色々な趣味をかじってはやめて...と食い散らかすには留学期間は短すぎる。米国に来てから打ちっぱなしを始めて、2,3回ラウンドをして、帰国したらもうゴルフクラブを握ることもない...とか、そういうのは人生の浪費以外の何と言えようか。
もし日本にいるうちに趣味が確立されていれば、あとはその趣味を思う存分当地で楽しむだけだ。1年2年あれば、必ず一定程度の上達は見込める。
3. MBAは、キャリアの基盤作りのみならず、人生の基盤作りでもある
MBAが終わると、多くの人はベンチャーや大手企業に入ったり戻ったりして、それなりのポジションで結構なハードワークに勤しむことになる。多くの場合相応の所得が得られるし、ほぼ確実に周辺には刺激になるような素晴らしい同僚がいることであろう。
だが、そんな恵まれたキャリアを歩むからこそ、MBA取得者はキャリア以外の人生についても意識的である必要があると自分は思う。というのは、上記のようなチャレンジングな環境でバリバリ働いていると、おそらく、仕事だけやっているだけでもかなり充足感のある人生を送ることができてしまうからだ。
毎朝早朝から深夜まで、交渉したり難しい計算したり世界を飛び回ったり。それらは素晴らしい経験であるが、人生の全てかというとやっぱりそうではない。「仕事が生きがい」でも勿論構わないのだが、そんな人でもいつかは仕事を中断したり引退する日が訪れる。一言でいうとライフワークバランスだが、仕事時間以外を有意義に過ごす「スキル」、職場以外の人と有意義な時間を過ごす「スキル」は(少なくとも自分にとっては)大変重要なものである。
もし激務にあってもそのようなバランスを何とか保ちたいのであれば、たまにぽっかり空いた日曜の午後とかそういった短い空き時間を有効に使うことができなければならない。そこで昼寝してインターネットしてではちょっとイタい。そんな日曜の昼下がり、「MBA時代にちょっとかじっただけのゴルフ」とかでは、おそらく全然楽しめないし、そもそもそんなことやりたいとは思えないだろう。
たとえば自分はゴルフとか音楽鑑賞とか(
卒業して激務生活を始める前までに、「かじる」レベルではなく「●●狂い」のレベルでの趣味を持っていないと、かなりの確率で卒業後の人生がキャリア一辺倒の人生となってしまう。さらに悪いことに、なまじ多忙なので、それでも一見問題なく人生は回ってしまう。働いてさえいれば、給料は増えて、うまい飯やうまい酒が飲めて。でもそれだけでは多分足らないと思う。忙しくなる前にこそ、楽しむ「スキル」を得ておいた方が良いと思うのだ。
4. 趣味の無いやつ、趣味の浅い奴はつまらない
最後は完全に自分の偏見。。別に自分と同じ趣味である必要は全くないのだが、何かしら熱狂的な情熱あるいは優れた腕前がある人は、少なくとも自分はとても魅力的に感じる。人間くさくていいし、人間的深みを感じる。
他方、そもそも無趣味な人とか、趣味が浅すぎて趣味があるのかないのかわからない人とかは(換言すると「休日に家で何やってるのか想像つかない人」)、個人的偏見だがあまり人間的魅力を感じられない。忙しい忙しいとか言ってだらだらと深夜まで宿題をやることで毎日「時間潰し」をして、長い休みには漫然と観光地に旅行に行って、暇になったら子供と遊んだりとか。宿題も旅行も子供との遊びも大変重要で充実したものであるのは間違いないが、時間潰しの手段としてそういったものを使うのは、イージーだが時間の無駄だ。ちゃっちゃと済ませて、情熱を持つ何かに時間をあてるべきだし、それができないようなパッションの薄い人に人間的魅力が備わるはずがない(「べき」というのはあくまで主観的なものであって、一般的規範的な意味で使っているわけではない)。
(まとめ)
趣味と言う言葉が狭すぎるなら、何らかのこだわり・情熱と言ってもいいかもしれない。そういうものは、
(1)MBAを乗り切るのに役立つし
(2)MBAの1~2年間を有意義に使うためには重要だし
(3)MBA後の人生をバランスよく生きるためには、仕事が忙しければ忙しいほど事前に趣味を確立させておくことは重要だし
(4)少なくとも自分に言わせれば、趣味に情熱を注げないような人が魅力的たりうるとは思えない。
なので、「留学して、忙しい最初の学期が終わったらぽちぽち●●を始めよう...」なんてのんきなこと言ってないで、既存の趣味を深めたり、新しい趣味にとっかかりを作っておくのはもはや必要不可欠なのではないかと思うのだ。。。
※ ただし、これは日本人MBA学生の9割の「普通の人」を対象としたもの。1割程度いると思われる天才系の方におかれては、趣味などに現を抜かすことなく何か大きな目標達成に邁進するのがいいのではないかと勝手ながら思っている。世界の最先端で何かを成し遂げようとしている人に対して「たまには息抜いて遊ぼうぜ」などと言うのはかなりムリだ。
ただ、9割の普通の人にとっては、趣味のある留学生活の方がたぶんいいんじゃないかなぁ、と言う話。もしあなたが1割の天才と自認しているのであれば、すいませんが無視して下さい...といった感じだろうか。