Tuesday, May 22, 2012

住宅と税務

アメリカの不動産(おもに住宅)に関する税務の話のメモ

1. あなたは誰

・あなたが住宅の利用者の場合と、住宅投資家の場合と、住宅ディーラーの場合で、同じ不動産でも税務ルールは異なる
・利用者の場合、各種例外を無視して原則論だけ言うと、(1) 売却益も売却損も税務上無関係(課税も控除もされない)、(2) ローンの契約手数料および金利と固定資産税は控除可能 (3) 減価償却を認識することはできない
・ディーラーの場合、(1) 売却益はキャピタルゲインではなく一般所得税で課税される、(2) 減価償却を認識することはできない
・投資家の場合、色々あるので下記に続く

2. 投資家にとっての税務

・課税基礎(Tax Basis):建物は減価償却を認識できるが、土地は減価しないので、取得価額を概念上土地と建物に分ける必要がある。そのために、契約時点で両者を分別したり、鑑定士に計算してもらったりする。

・Adjusted Basis:課税基礎から、建物分の減価償却累計額を引いたもの。建物の減価償却は、税務上耐用年数27.5年で計算される。減価償却は月割りで計算される。取得や売却が月中に行われた場合、その月は半月(1/2か月)で計算する。

・売却時の課税:課税対象は(売却価額-Adjusted Basis)=(売却価額-取得価額)+(取得価額-Adjusted Basis)=キャピタルゲイン+減価償却累計額。キャピタルゲインについては、優遇税率15%が適用されるが、減価償却累計額についてはUnrecaptured Depreciationと呼ばれ、既に減価償却費計上時点で税務上の優遇を受けているのでここでは優遇されず、25%の税率が適用される。

(例)$400,000で買った住宅を、10年後に$600,000で売ったときの課税額は?なお、取得価額のうち$100,000が土地取得費用であったとする。

(解)
・建物の取得価額:$400K - $100K = $300K
・年間減価償却額:$300K / 27.5 = $10,909
・10年間での累計償却額:$10,909 x 10 = $109,091
・10年後の調整後課税ベース:$400,000 - $109,091 = $290,909

売却時
・キャピタルゲイン:$600K - $400K = $200K
・キャピタルゲインに対する課税:$200K x 15% = $30,000
・Unrecaptured Depreciation = 償却累計額 = $109,091
・Unrecaptured Depreciationに対する課税:$109,091 x 25% = $27,272
・合計課税額:$30,000 + $27,272 = $57,272
(トータルのもうけ=Realized gain = $200K + $109,091 = $309,091)


3.Passive Income:不労所得??

・アメリカ税法では、所得は給与所得等のActive Incomeと不動産投資収入のようなPassive Incomeに分類される
・一般的に、Active IncomeとPassive Lossを合算して相殺することはできない。たとえば、保有不動産からの純所得がマイナス$50,000で給与が$100,000であったとき、課税ベースは給与所得の$100,000. 不動産の損金$50,000で給与所得を控除することはできず、不動産で来年以降所得ができたときまで不動産での損金$50,000は控除に使うことができない。
・ただし、例外もあり、たとえばあなたが不動産経営にアクティブに関与しているとみなされれば、不動産の損金を他のActive Incomeと合算することが許される。不動産投資家、すなわちアクティブ投資家であるわれらが不動産の教授は、結婚したらなんとびっくり奥さんに多額の不動産関連累損があることがわかった。奥さんは不動産投資にアクティブに関与していなかったので損金を使えず困っていたが、アクティブ投資家である教授と結婚した結果、彼らの資産が合算され、無事に教授が奥さんの累損を使ってガツンと税金圧縮に成功したそうで。。


4. 不動産の「交換」:Section 1031 Exchange

・セクション1031の要件を満たすような形で不動産と不動産の交換を行った場合、課税ベースは新しい不動産の取得時点の価値ではなく、もともとの不動産のままキープできる

(例)
・トムは2000年に住宅を$100,000で購入した
・2005年時点で、減価償却を調整した課税ベースが$90,000だったとする
・2005年に、ジェリーと不動産の交換手続きを行った。
・ジェリーの不動産の市場価値は$150,000で、トムは自分の不動産に加えて現金を$30,000支払った

このとき
・交換とみなされなければ、新しく取得した不動産に関するトムの課税ベースは$150K。また、不動産を手放しても結局1ドルも受け取っていないが、Unrecaptured Depreciation分の$10Kは課税対象になる。
・交換とみなしてもらうと、トムの課税ベースはもともとの課税ベース+支払った現金=$90K+$30K=$120K。この場合は課税ベースがキャリーオーバーされるので取引によって課税は発生しない。


・この例のように、交換とみなすことで、課税ベースを抑えることができる可能性がある。