Wednesday, November 17, 2010

Soft organization management

ジャパントリップでの学びという話の続き。ジャパントリップは自分にとって、Soft organizationと再びガチンコで向き合うチャンスとなる。もしかすると人生最後の。

学生時代、1年生の後半から2年生にかけて、ゴルフサークルのマネジメントに携わった。学生のお遊びサークルとはいえ、それなりの苦労・苦悩・挫折等があった。その中でも抱いた一番大きい問題意識が「自由意志で集まっているゆるーい団体は、どうすればうまくマネジメントできるのか」。今、自分は、この問題に再びアタックする機会に恵まれていると思っている。

サークルは部活や企業よりも任意性が強い。そのため、イベントへの参加や運営へのコミット等、あらゆる活動において「これだけはやるべき」といった指針がその性質上存在しづらく、基本的にすべては各人の自由意志がベースになる。参加するもしないも各自の自由、どのくらい運営にコミットするかも各担当者の自由。
その点、「給料もらうからには働かないと」という強制的なシステムが存在するという意味で、会社とサークルは対照的だと思う。

学生の頃、短気・近視眼的・自己中心的であった自分は、こういった組織の本質を見誤り、いくつかの過ちを犯してしまった。他のメンバーや自分の後任に対して、自分と同レベルあるいは「as much as possible」のコミットを当然のように求めてしまったり、参加率が低いメンバーに不必要にプレッシャーをかけてみたり。肩書だけを根拠にいろんな人にいろんな形で批判・命令・要求等をしていた。結果として、本来なくても済んだかもしれない人材の離散や、後輩と目も合わせられなくなるほどの対立を招いてしまった。

-ついでに言うと、役員をやっていたこの時期は、ゴルフもいつまでたっても100が切れないし、彼女にもふられるし、なんというかロクなことのない時期であった。学校への足も遠のき、バイト→徹マンの繰り返しで、雀荘から深夜バイトをやってみないかと誘われたり。必修科目で不可を食らうなど、本当に終わっていた。なんか茶髪だったし。役員を引退したのちは、今の妻と付き合うようになったり、勉強にも(不可のおかげで)本腰を入れて臨むようになるなど、なんとかリカバーできた感じ)

そんなどん底の中で自分が経験的に獲得した教訓は、「インセンティブの尊重」。
このようなソフトな組織では、命令や圧力はむしろ逆効果で、自発的な行動を促すインセンティブの形成が重要だと思っている。批判・圧迫・命令ではなく、肯定・理解・尊重。
ひとたびインセンティブに火が付けば、何もせずとも、人は期待以上のコミットを自発的に行ってくれる。

この苦労を経てから始まった会社員生活は、ある意味とても楽だった。給料という、完璧ではないかもしれないがきわめて有効なインセンティブシステム。ヒエラルキーや部署や稟議という確立されたシステムによる責任・役割の分担。自分のあずかり知らぬところで確立されたシステムに従ってさえいれば仕事は滞りなく進む。インセンティブ?そんなの気にしなくたって皆決められた仕事をしてくれる。ほかの部署の人も、ほかの会社の人でさえ。

しかし、それでもなお思わずにはいられなかったのは、各人の最大限のパフォーマンス(⇔必要最低限のパフォーマンス)を発揮する/しないといった局面では、給料や職制といったハードなシステムではなくやっぱりインセンティブ形成が大事だった。自分が経験する限り、給料をもらっていても、部長の命令でも、何かその人のインセンティブの阻害要因となるようなものがあれば結局のところ人はベストパフォーマンスを発揮しないようだ(だらだら仕事する、サボる、抵抗する等々。人がそういうことをした場面も、自分がそういうことをした場面も経験)。

換言すると、会社のような責任・役割分担がシステマティックに整備されているような組織においてさえ、肝要なのはそういったシステムの外部に存在するインセンティブ設計なのだ。自分が学生時代に苦労した問題は、結局のところ「サークルという緩い組織特有の問題」ではなく「会社というハードな組織にも本質的に存在する問題」であるようだ。

学生時代の苦渋のおかげでそういった点に気づくことができたので(他の人はこんなにグダグダ考えずとも自然に理解しているのだろうけど、自分は学生時代のこの失敗を経てやっと理解できた)、またかつての上司がまさにインセンティブ設計の方法論について叩き込んでくれたこともあり、仕事においては関係者のインセンティブ設計に努めることで事態を改善するという経験をすることができた(と思い込んでいる)。キーワードは「肯定」とか「敵を知れ」とか「目標の共有」とかなんだけど、具体例はややためらわれるので書かないことにする。

それでもなお、インセンティブ設計に対する自分の能力は(元来のコミュニケーション不足のせいで)不十分だと思っている。また、社会人に復帰した際には、自分の役割は「システムに部下をおしこめること」ではなく「特定のプロジェクトに関して、上司部下関係者一同を巻き込み成功させること」だろうから、改めてこの問題と向き合っていく必要が生じるだろう。そういった意味において、このジャパントリップは、インセンティブ設計がハード組織よりもはるかに重要なソフト組織を経験する機会であり、是非組織運営という点において一皮むけるチャンスとしたいと思っている。

幸いなことに、Co-chairという肩書きを頂くこともできたし、また経験・能力・性格等あらゆる点において各メンバーが明らかに自分よりも優れた点を多く持っているため、彼らを見ているだけでもかなり学べそう。

とか何とか思っているので、本当は「外国人とのコミュニケーション」とか「西海岸ビジネス事情」とか「統計学とかファイナンスとか」を一丁目一番地にしなくてはいけないとわかってはいるんだけれども、ついついジャパントリップにのめりこんでしまいそう...