・今日はOdysseyなるオリエンテーション。体を使うことでリーダーシップについての重要な要素について体感するというもの。「体を使うことで体感」というあたりに子供だましの匂いを感じていたのだが、思いのほか刺激的で感心した。
・4つほどゲームをしたのだが、一番印象にのこったのは柱上り。流れはこんな感じ:
-まず取ってがついた高さ10mほどの柱をよじ登る
-上った最後に、柱の頂点(直径30cmほどの円形)にすくっと立つ
-その場で回転して、後方に垂れている空中ブランコにジャンプ
-チームメイトはその間ひたすら応援
・自分はどちらかというと運動オンチなので、たいへん苦労した。柱上りは簡単だが、最後の頂点での直立に非常に時間を食ってしまった。一瞬片足でバランスを取ることになるのでバランス感覚のみならず恐怖心の克服が求められるのだが、完全にびびってしまい頂点付近で2分ほどもじもじしてしまった。
・その時、自分の心は7割方折れていたが、そこでふとチームメイトが大声で自分の応援をしていることに気が付いた。そのとき体感したが、極限状態においては仲間の何気ない励ましが意外と効く。彼らの「You can do it!」「Almost done!」「So nice!」等の掛け声が、頂点付近で顔を引きつらせていた自分の意識と無意識の中間地点くらいにかなり強くヒットした。応援なんてセレモニーあるいは応援する側の自己満足と思っていた自分にとっては、しょうもない話だが結構目からうろこが取れる体験であった。
・もうひとつ印象深かったのは、最終的に頂点に直立した瞬間。しがみついている状態から直立するにあたり、絶対バランスを失うと思っていた。しかし、応援に押され「えーい、もうヤケだ」と一歩踏み出してみると、思いのほか簡単に立つことができた。直立できずモジモジしていた2分は何だったんだろう。こうやって文章に起こすと非常に子供だましみたいになってしまうのだが、直立できた瞬間、自分は学校で耳がタコになるほど言われている「Go out of your comfort zone」を体感することができた。具体的な教訓は、
-極限状態(今回は肉体的極限状態だけど、経営者だと、正解もないのに膨大な金額が動くような判断を下すような状態かしら)でComfort Zoneを出るのは心底大変。独力では下手をすると無理。
-そういうとき、仲間(部下、上司、取締役会等々)の存在が非常に助けになる。カエサルとかヒトラーでもない限り、ある程度継続的にしびれる判断を繰り返すためにはこうしたpeersの存在が不可欠。
-Comfort Zoneを超えるのは大変辛いが、ひとたび超えてしまってから振り返ると、思ったより辛くない。この原体験を持っていれば、「今はつらいが、勇気をもって踏み出してしまえば思ったほど辛くないはず」という経験則をもってリーダーシップを取っていくことができるのかも。最終的には、柱の頂点に立つまでの2分間のモジモジをカットできるようになるかもしれない。そうなれたとしたら、これはリーダーシップ的にかなりの改善だと思う。
・今回に限らず、MBAの授業で気に入っているのは「まずやらせてみて、勘所をつかませてから議論なり講義なりを始めることが多い」というところ。おかげで無味乾燥なフレームワークもある程度納得感をもちつつ理解できるし、記憶にも残る(気がする)。自分は将来教育者を目指しているわけではないが、社内研修等に導入余地があるような気がした。