Tuesday, August 3, 2010

仮説:3年で辞めそうな若者を日本企業は採用した方がいいのか否か

留学をすると、勤務先を辞めて私費留学をする友人にたくさん出会う。自分が行くAndersonでも、たしか日本人同級生の半分くらいは私費留学のはずだ。

これについて、先日とある先輩に「同級生に私費の人が云々」という話をしたところ、入社後3~7年という早い段階で会社を辞めることに対して、いくつかの側面からネガティブな意見を拝聴した:

①会社に育ててもらったという恩義が欠如しているのではないか
②早期退職するくらいなら、いっそその会社に入社しなければよかったのではないか。そうしたら、ほかの誰かがその会社に入ることができたはずだ
③長期間ひとつの会社にいないと、今の日本では責任ある仕事ができない可能性が高い
等々。

それに対して自分は、えも言えぬ反発心を感じたものの、クリアに反論することができそうになかったし
人間関係上反論することが適切であるとも思えなかったので「なるほど、そうかもしれないですね」といった
逃げを打ってしまった。

しかし、現実として自分の同級生が、自分の勤務先でもそれ以外でも続々と会社を辞めている事実を見ているので
どうも上記の批判をスムーズに受け入れることができずにおり、最近つらつらとそのあたりの問題について考えを巡らせている。

頭の整理ができたところで別途整理しようとは思うが、現時点での仮説はこんな感じ:

<現時点での日本>
・現時点ではまだ労働市場にはさほど流動性がない
・それゆえ、一つの会社でキャリアを熟練させるという価値観が、今なお割と支配的
・なので、企業は、「第一優先:転職志向の低さ、第二優先:能力・自社とのフィット等という選考基準で採用しても十分満足できるクオリティの人材調達ができる」
・それゆえ、採用される学生・新人社会人としても、主要アピールポイントは能力というよりもむしろ会社への忠誠度になる

<今後の日本>
・自国市場縮小と外需の相対的・絶対的拡大により、日本人労働者のニーズが相対的に低下。
各国でネイティブの採用が進展
・人材のグローバル化は、不可避的に人材政策のグローバル化を招く。
・筆者の知る限り、グローバル労働者市場(特に、いわゆる総合職的な、幹部候補生レベルでの市場)における
有望な若者には、ひとつの会社でキャリアを極めるという価値観は希薄。多くの人にとって、一つ目の会社は踏み台に過ぎない
・そうなると、「優秀だけど会社を数年で辞める気マンマンの若者」と「辞めそうにはないけどぱっとしない若者」のどちらを採用するかという状態に、日本企業の人事部が直面する状態が変化していく(あるいはもうすでに変化している)
・結局、多くの企業は、採用にあたっての優先順位を「辞めないだろうという心証」よりも能力や自社とのフィット感などに変えていかざるを得ないだろう。同
・あるいは、そんなことなく、日本だけグローバル労働市場の動きから独立して現状維持がなされる可能性もある。ただし、そういった場合の日本企業にはあまり期待はできない。

今は3年で辞めそうな若者がいまだ少数派なので彼らは批判の対象になっているが、
皆がそういった感じになれば、早くして辞めることへの抵抗も薄れていくのではないかと感じている。