Entrepreneurial Financeのリーディングのメモ。何人かのベンチャーキャピタリストに対して、いくつか定型的な質問を行い、その回答を比較できるもの。
VCについてまったく肌感覚のない自分であるが、それなりにうなずくところも少なくない。
※カッコ内は自分の感想とかツッコミとか
Aさん
■ 商機の評価
○ 急成長しているマーケットが好ましい。なぜなら他社のキャッチアップが難しくなるから。
○ 競争力の源泉があると望ましい。eBayのようなネットワーク効果とか。
○ 特許は必須条件ではない。特許取得によるリスクもあるので。
○ 取得しようとしている特許について先行特許のないことを確認することは必要。
○ チームは、エンジニアの創業者・セールスを知る起業家の最低2人は欲しい。
○ CEO的素質と起業家的素質は異なる(ので、まだいらないということか?)
■ ビジネスモデルの評価
○ 評価軸は、既存市場での改善案 OR まったくの新市場
(既存市場でのニッチはスケーリングできないから対象外??)
○ タイミングも超重要。世に出るのが早すぎたゆえ失敗したところも、逆の事例も存在。
■ デューデリジェンスのポイント
○ 技術
○ 顧客。誰が既存/潜在的顧客か?彼らのWTPは?
○ 業界
○ チーム
■ 財務分析
○ 財務分析自体はさほど重要ではない
○ そこまでかっちりとはやらない。経験則に照らしてざっくりと検証する程度
○ 不確実性が大きいので予測を信じても仕方ない
○ 他方、経営陣が信頼できるかどうかの尺度としてプロジェクションのできの良さは見る
○ ビジネス要素に弱いからといって、ギークなエンジニア起業家を拒絶するとは限らない。
○ ソフトウェアであればCost to Dist.やCost to Sellがしっかり検証されているかは見る
○ ハードウェアであれば、流通チャネルや在庫の見積もりがしっかりしているかは見る
Bさん
■ 商機の評価
○ まずマーケット先にありき 。サイズ・成長性・競合・顧客などを総合的に見る。
○ マーケットさえ良ければ、それ以外のもの(含チーム)は入れ替えがきくというスタンス。
○ 素晴らしいマーケットを捕まえつつあるがチームがイマイチというのが良い。入れ替えれば価値が出せる。
○ それゆえ、有望なマーケットがどこか、ファーム全体で常に見ている。
○ 投資時点ですでにプロダクトができているかどうかは重要。
○ 人の入れ替えに耐えるような柔軟なチームが望ましい。
○ 有為な人材を容易に得られるのはシリコンバレーとボストンだけ。それ以外の地域の案件は躊躇。
■ ビジネスモデルの評価
○ 最低限、その事業のマージンおよび流通チャネルについては完全に考え抜かれている必要がある。
■ デューデリのポイント
○ 顧客がつきうるか否かが第一。技術が優れているからと言って即座に投資することはない。
○ 過去のポート企業に照会したりする。
○ 過去の謝絶案件を定期的にレビューする。謝絶したが成功した企業があれば反省したり。
■ 財務分析
○ 詳細なプロジェクションはどうせ当たらないが、Make senseするかは検証する
■ その他
○ リーダーあるいはリーダーになりうる企業に投資することがリスク軽減につながる。リーダーは
◆ より高いマージン
◆ 失敗に耐えうるクッションがより大きい
◆ おそらく業界で最初にIPOしてくれる
◆ 業界で最高の人材を雇うことができる。
○ リスクの高さを考えると、初期投資の7倍から10倍は期待する。5倍程度しか見込めないなら謝絶。
○ 常にExitの最優先候補はIPO。第三者への売却は有りうるが現実性低。
Cさん
■ 商機の評価
○ マーケット・技術・プロダクト等を一通り見るが、チームを特に重視
○ 我々がCEOを変えることもあるが、経験的に、その場合のリターンは低くなる
○ 既存のCEOでIPOまで行くことができそうな案件は、それゆえ有望
○ 優れたCEOがいれば、仮に技術が突き抜けていなくても投資する。
○ 逆に、他の全てが良くても、TechnologistすなわちギークなCEOには投資しない。
○ セクターを重視。良いセクターに投資できれば、我々が仮にボンクラでもリターンは出る。
○ ITセクターでは経験則が使える。例えば$50M売上を出せているなら$100M~$200Mは高確率で見込める等
○ マーケットはそれほど重視しない。ポテンシャルがあっても、マーケットが成長するかどうかは不確実。
○ 極端な話、マーケットの大きさがわからなくても投資する。
○ 特許はさほど。大企業がその気になればいずれにせよ特許は侵害される。
○ 今の時代、技術を守るのは特許ではなくスケーリングとブランディング。
■ ビジネスモデルの評価
○ 価格政策
○ 顧客獲得戦略:Sales force、チャネル、販売範囲
○ 技術
○ 財務:特に運転資金をちゃんと考慮できているか
■ デューデリ
○ チームと財務を見る。
○ 顧客はさほど重視していない。
■ 財務分析
○ チームが経営するに足るかどうかを確かめるために見る。
■ その他
○ IPOがベストだが、売却も現実的な選択肢として検討。
Dさん
■ 商機の評価
○ マーケットを重視。既存プロダクトを置き換えるものなのか、全く新規のものなのか。
○ B to Cは回避したい。というのは:
◆ マージンが薄い
◆ マーケティングコストが高くなる
◆ 消費者心理を読む必要が出てくる
◆ ただし、インターネットビジネスではこれらの障害が問題にならなくなることもあるので是是非非
○ 技術:他の技術に負ける可能性を検証。
○ タイミングは重要。
■ デューデリ
○ 投資時点で顧客がついている必要はない。
○ 関係者からコメントを取る
■ 財務分析
○ 費用からまず見る。損益分岐点は基本的だがつかえる。
○ 売上予測は信用せず、自分たちのモデルを使って売上予測を行う。出てくる数字は得てして過度に楽観的。
○ トップダウン式見積もりは好まない。極力具体的なボトムアップ式見積もりをする。