Saturday, November 26, 2011

MBA検定

■  今学期にEntrepreneurial Fiannceという授業を履修したおかげで、ビジネス全体においてファイナンスをどのように使うかという視点がかなりくっきりしたように感じている。

■   そのおかげで、マーケティングや戦略論などふわふわしていて捉えどころがなく一年生のコア科目のときには味わいきれなかった科目についても、なんとなくではあるがその使い方のようなものが見えてきているような気がする。おそらく多くのMBA学生にとっては自明のことなのだろうが、自分なりに頭の整理がついたので書き残してみる。

■   思うにMBAで習うことの理解度は、以下のように分類できよう。さながらMBA検定みたい:


レベル1:  ビジネスマンとして、ケースあるいは実際の仕事上の出来事について、興味を抱くことができる。そこに問題がある、ということを認識することができる。

レベル2:  ケースあるいは実際の出来事について、その話がなんの分野の話か理解することができる。問題意識だけは共有できる(が、分析できないので共感しておしまい)。
(ファイナンスの話なのか、マーケティングの話なのか等)。

レベル3:その話の大分類をぱっと理解できる。
(例:「これはファイナンスの話で、具体的には資金調達の話だな」「これはマーケティングの話で、顧客に関する話だな」)

レベル4:  MBA新卒レベル。その話を、自分の頭の中でインデックス化されているフレームワークに落とし込むことができる。問題意識を共有することができるだけではなく、ある程度分析もすることができる(が、答えを知らないので話を先に進められない。上司か顧客自身がソリューションにたどり着いてくれないと解決しない)。
(例:「これは資金調達の話で、具体的には負債と株式のどちらを選ぶかという話だな」「これは顧客に関する話、具体的にはCRMに関する論点だな」)

レベル5:ジュニアコンサルタント・ジュニアバンカーレベル。あるいはちゃんと勉強したMBAレベル。  その話を具体的なフレームワークと照らし合わせた上で、定石的なソリューションを2,3ぱっと思い浮かべることができる。問題を共有し、分析することができ、「とりあえずの議論のスタート地点」として定石たるソリューションを提示することができる(が、柔軟な調整まではできないので、問題を完全に解決することはできない)
(例:「負債か株式かという話では、定石としては、アレとコレを見て判断材料にするよな。さて今回のケースではどうだろう」「一般的にはCRMの打ち手としてはXとYとZがあるな。さて今回はどれが使えそうかな」)

レベル6: シニアコンサルタント、シニアバンカーレベル。 フレームワーク及び定石を念頭に置きつつ、既存知識の組み換え・組み合わせ・あるいはいくつかの閃きにより、今回のケースのためにアイディアをカスタマイズできる(ので、目の前にある程度わかりやすい形で問題を提示してもらえれば、それをおおむね解決することができる)。
(例: 「一般的には今回のようなケースでは負債発行が望ましいが、マーケット環境や経営者の嗜好を踏まえると、劣後債の方が良いのではないだろうか」「定石はメンバーズカードの作成だけど、顧客がメンバーズカードに飽き飽きしている状況を踏まえると、オンラインでコミュニケーションする方がいいかもしれない」)

レベル7:  経営者・アントレプレナーレベル。CFO,マーケター、CEO等として、提示された問題を解決するだけではなく、カオス的な現状のなかから自ら問題を発見あるいは定義することができる。ゼロの状態から財務戦略やマーケティング戦略等を立案・実行することができる。


■  自分についてみると、少なくともファイナンス系については、レベル5まではおおむね到達できていて、あとは卒業後の実務を通じてアドホックに顧客の問題を解決する経験を積み重ねることでレベル6までは到達できよう。レベル7まで行けるかどうかは、たぶん金融コンサル以外の世界に転身しないと難しそうな気がする。

■   他方、マーケティングやオペレーション・組織論の分野では、レベル3、せいぜいレベル4くらいにしか到達できていない気がする。自分はオペレーションコンサルタントになるわけではないのでレベル6にまでなる必要はあまりないが、履修したEntre. Finで感じている限り、ファイナンスの分野でレベル6になるためには他の分野もレベル5くらいにはなっておいた方がよさそうだ。「あーー、ここから先はマーケティングの話だね、俺はわからんから死んだふりしてよ」では足りないように思われる。マーケティング的問題や組織論的問題とファイナンス的問題の相互連関などを適切に把握して、マーケ的問題を解決することができる提携先を紹介したり、ファイナンス的問題を解決することで他分野に波及しうるインパクトを示唆したりすることができると望ましいだろう。単なる商業銀行の融資業務であればファイナンス一本勝負でいけるのかもしれないが(融資業務でも一本勝負じゃ無理だと思っているが)、よりチャレンジングな分野、たとえばPEやVCになると、経営全般に対する引き出しがないとかなりしんどいように思われる(授業にやってきたスピーカー達の話を聞く限り、投資業務といえ、勝負はファイナンス以外のところでつくような印象)。

■  というところまで整理できたのがようやく最近。そうすると、マーケティングや戦略論なども、「この話は顧客に関する問題を分析するためのフレームワークのひとつ」「この公式はフレームワークを使ったあとの定石的ソリューションの計算方法のひとつ」等、ひとつひとつのトピックに意義付けができるようになる。あるいは、自分のレベルではまだ難しいようなトピックについて、大胆にパスできるようになる。そういうわけで、今すきま時間にマーケティングの教科書を読んでいるのだが、一年生のときは文字の羅列にしか見えず嫌気があったのに今ではけっこうおもしろく読むことができる。そういう意味で、このEntre Fin.を取ってよかった。おかげで、他のMBAがもしかすると最初から到達していたレベルに、今更ながら追いつくことができた気がしている。