■ 月曜日はいちばん重たいEntrepreneruail Financeの日。例のごとく朝から授業開始直前までミーティングで論点を詰めて、授業で揉まれて。
■ 今回は規制緩和により業績が悪化した企業のケースと、予想外の成長を止めないために劣後債か株式の発行を検討する企業のケース。
□ 前者は、その当時その会社で幹部をしていた人がゲストスピーカーとして参加。というか教授もその会社の経営に参画していたそうで、2人で学生のコメントに対して色々とコメントをくれた。
□ 二人とも、全体的に「わかっちゃいたが、業況が悪化するのを停めることはできなかった」というトーンで、その後に「危機時のマネジメント」みたいな話をされたものの「お前が言うな」感がぬぐいきれず。学生の「こうすれば良かったのでは」に対して2人が「We did, but it didn't work」という回答を繰り返すのを聞くことで、
(1)「資産の切り売りをすべき」とか「資本構成の再編を図るべき」といった一般論レベルの 概念自体は時代を超えて通用するが
(2)それを実務レベルで形に落とす段階ではもう一段の困難がある
ということを認識させられた。方向性が間違っていないことが感じられたという点ではややほっとしたが、方向性だけでは飯が食えないという冷徹な事実を突き付けられたような思いの方が大きい。
□ MBAで一般論レベルの論点を網羅できることはメリットだが、それは当然ながらゴールではない。実務を通じ、星の数ほどわいてくるであろう個別具体的な論点にひとつひとつもがきながらなんとか仕事の一つ一つをやっつけていくことでしか、MBAでの学びを使えるレベルにまで昇華させることはできないのだ。
□ また、やや針小棒大な感じがするが、彼らのような失敗した人たちがそこでゲームオーバーとならずきっちり再起してここでゲストスピーカーとして起こったことをフランクに共有してくれているという事実それ自体もかなり深いものがある。さらに味わい深いことに、教授はともかく、そのゲストスピーカー氏は、そのケースの企業が倒産した後はしばらくの間かなり転職等で苦労をしたとのこと。失敗した人が再起できる土壌があるとはいえ、そういった人がただちに次のステップにするっと進んでいるわけではないのだ。そのあたり、なかなか色々考えさせられた。
■ このように、ゲストと話すことで理屈と実務の間にある壁のようなものを意識することができるのがこの授業のひとつのメリット。そして、もう一つのメリットは「大枠をぱっと掴むことができるようになること」。
□ この授業では、細かいバリュエーションの手法等はかなり省略される一方で、状況を迅速にかつ直感的に理解するためのBack-of-the-envelope Calculation(ざっくり計算)が重視されている。ホワイトボードでちゃちゃっとできるレベルの簡単な四則演算レベルの計算で、意思決定に必要なだいたいの相場観が得られるような計算。元手を2倍にするための72ルールとか、負債のキャパシティを推測するための同業他社データの見方とか。今日の2つ目のケースでは、ROEと株主資本コストを見比べることで株価が割安か割高かぱっと判断する手法を学んだ。
□ 個人的に「細かい論点はMBAというよりは現場で汗をかきながら学ぶ方が効率的。学校では、もう一段抽象的な、汎用性の高いコンセプトを習得したい」という思いがあったので、この授業の「大枠をつかむためのツール」重視、細かい計算はそこそこというスタンスはかなりフィット感がある。
□ この授業で毎回教わるそういった「ざっくり計算」は自身の相場観のようなものを形成するにあたり非常に有益である。おかげで、財務諸表データがどんどんVividに見えるようになってくる。よく「まず大枠をつかみ、それから初めて細かい計算に移るべし」みたいな話があり、自分も留学前に担当した新人研修ではそのような主旨のことを後背にやったような気がするが、大枠をつかむのも結構奥が深いということ・自分もまだまだ全然大枠をつかみ切れていなかったことをこの授業のおかげで痛感できている。